■ 思わず触りたくなる手帳
展示会を取材する時に私がいつも心がけているのは
「全身を目にする」ということ。
なにも、
鬼太郎の目玉親父になるとか、
360度、常にキョロキョロするという訳ではない。
全身に意識を集中して展示会場を回るということだ。
あとは自分の肌感覚に任せる。
こうすると不思議と面白い商品を見つけることができる。
考えてみると、
これは私がいつも文具店を見る時にもやってることだ。
そんな感じで展示会場の通路を歩いていると
ある手帳が目にとまった。
これを見た途端思わず近寄って
手にとってその表紙を触ってしまった。
ベースとしては MOLESKINE のような手帳。
ただ大きく違うのは、
表紙に立体感溢れるデザインが施されているところ。
切り絵のように貼り付けられているその部分を触ってみると、
フエルトのような、それでいて少しベルベットのような
フワフワとした感触がある。
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私がその表紙を気持ち良さそうに撫でていると、
担当の人が「こうしてごらん」と、
ノートのそのフエルトみたいなところを
爪でゴシゴシと擦り始めた。
いやそれはまずいでしょうと
心配をしたが全く問題はなかった。
聞けば、この立体的なデザインは
表紙に貼り付けているのではなく、
表紙を作る時に
一緒に加工しているのだという。
手触り、そして見た目も楽しめる手帳だ。
■ 合成皮革の進化
通路を歩いていると様々な看板を目にする。
日本の展示会などでは
ブースの正面に普通に社名の看板などを掲げているが、
アピール精神旺盛の中国では、それに飽き足らず
正面の看板に加え、
通路を歩いている私たちの目にもすぐ見えるように
ブースから突き出した様な看板もあちらこちらで見かける。
そういえば横浜中華街を歩いていると、
こういう突き出し看板のオンパレードだ。
これは中国の伝統なのだろうか。
そんな突き出し看板の中で気になる言葉があった。
そこには、「変色PU革」とあった。
「PU」とは、
確か「ポリウレタン」という
しなやかさに富んだ合成皮革のことだ。
ブースに入ってみると色とりどりのPUのサンプルがあった。
通訳の方を介して、
変色とはどういう意味かと聞いてみると、
160°~170°の熱を与えるとPUの表面が変色するのだという。
見せてもらうと確かに色が変わっている。
ちょうど革に焼き印を入れたような感じだ。
手にした印象としては、全くもって革っぽさに溢れている。
裏返すと、布のような繊維があり、
それを見てこれは本革ではないのだと我に返る。
この技術は4~5年前から
イタリアで使われるようになったものだという。
この会社では、
こうした変色PUを手帳メーカーなどに加工して納めている。
■ お国柄が現れるノート罫線
ペーパーワールド・チャイナでは、
中国のメーカーの出展が多い。
その中には、中国市場向けに文具を作っているところと、
一方、中国市場よりもく、
海外輸出に重きを置いているところもある。
ここは、後者のノートメーカー。
カラフルなデザインの表紙を見ていると、
ブースの人が、
うちの売りは、表紙よりも中の紙ですと、
説明してくれた。
なるほど、表紙をめくってみると、
様々な罫線のものがあった。
そのひとつ、
横罫線が細かく引かれたものはフランス語用。
フランスをはじめ、フランス語を使うアフリカなどにも輸出しているという。
その中に
あまり見慣れない罫線があった。
基本は横罫線だが、赤と青が交互に引かれている。
これは、フィリピン用だそうだ。
この他、ヨーロッパ用の5mm方眼や中国語用の横罫線などもあった。
書く文字が違えば、それにあわせてノートの罫線も違ってくる。
当たり前といえば当たり前だが、
ノート紙面から世界が見えてくるようで面白かった。
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