■ 「ペーパーワールド チャイナ 2008 レポート」 (3/5ページ)
■ シルクを使ったステーショナリー
□昼時にブースを回っていると、
中国系ブースからは、いいにおいが漂ってくる。
というのも、多くのブースでは
スタッフの人たちがお弁当を食べているためだ。
遠慮気味というそぶりは全くなく、
むしろこれは、我々にとって大変重要な仕事の一つです、といった感じで
堂々と食べている。
一方、中国系来場者の側も、そうしたことを特に気にすることなく、
食事をしている人の横や後ろを平気で通りながら商品を見て
質問などしている。
私もそれにならって、中華料理の香りを感じながら取材活動を行っていた。
そうした中で見つけたのが
この「杭州立博文化芸木品有限公司」だった。
この会社が得意としているのが、シルクの加工技術。
壁には掛け軸スタイルのカレンダーなどがあり、
メイン商品としてシルクカバーのノートや手帳が色々と並んでいた。
シルクロードというように、中国とシルクは深い関わりがある。
同社では、その伝統的なシルク加工技術をさらに進めて、
たとえば、写真的なものなど様々のものを織ることができる
技術をもっている。
そうした技術で作り上げられたシルクのノートカバーは、
中国の伝統的な模様から、
現代風のものまであり、なかなか見応えがある。
そもそも、シルクという素材のよい点はどんなところがあるのか、
おたずねしてみた。
まず、長く使い続けることができることがあるのだと言う。
何千年も前のシルクの織物が発掘されることがあるそうだが、
そうしたときにも、シルクはあまり傷むことがなく、
当時の模様がしっかりと残っているという。
また、冬暖かく、夏涼しいという特性もある。
これは手帳カバーとして1年を通して使う場合には、最適と言える。
そして、展示されている手帳を手にして
私もとても感たのだが、
実に軽いということもある。
レザー製のカバーとはまた違う趣のものとして、
シルクはなかなか可能性に富んだ素材のようだ。
■ ヨーロッパテイストのデザインノート
□インドネシアに本拠を置く世界規模の製紙会社グループ
アジア パルプ アンド ペーパー (APP)。
そのグループ会社は世界各国にあり、
今回のペーパーワールド チャイナでも何社も出展していた。
その一つが、このYalong Paper Products(Kunshan)。
ヨーロッパ市場で展開をはじめている新ブランド
「INSIPIRA」を中心に展示していた。
商品ラインナップは大きく分けて、高級ラインと鮮やかなデザインラインの2種類。
高級ラインの方は、
布製のハードカバーになっており、
中の紙もより高級のものが使われている。
ブラックとグレーのシックな表紙。
表紙についている札のようなものは、
実際にノートとして使うときに、活用できるようになっている。
やや柔らかいプラスチックのような素材になっており、
簡単に表紙から、取り外せる。
これをノートのしおりとして使え、
さらに、裏面には、目盛りも付いているので、
定規としても使うことができる。
□もう一方のカラフルタイプは表紙が厚紙になっており、
先ほどのしおりは付いていない。
説明をしてくれた担当の方は、
日本市場ではこちらの鮮やかなタイプよりも
先ほどの高級タイプのほうがいいとしきりに勧めてくれた。
しかし、かならずしもそうでもないと思う。
高級タイプももちろんいいが、
気軽に使いたい人たちには、むしろこちらのデザインタイプの方が
好まれるのではないだろうか。
特に日本の若い人たちから支持を得そうな気がする。
最近の日本では、上質な紙に慣れているユーザーが多いので、
あとは紙質が合うかということになると思う。
残念ながら、この時は試し書きをすることは出来なかった。
■ ヨーロッパ、そして日本のメーカーも認めている
独自の技術をもったファイルメーカー
□ペーパーワールド・チャイナには、
たくさんのファイルメーカーが出展していた。
しかし、その多くはどこかで見たことのあるように私の目には映った。
今回はファイルでは、ご紹介できるものはないかな、と
ほぼあきらめかけていたところで
出会ったのが、このブースだった。
「格羚塑膠有限公司(GREENTH INDUSTRIAL)」という会社。
ブースが会場の後ろの方にあったので、
油断をすると見過ごしかねない位置にあった。
この会社ではPP素材のファイルを製造している。
PPファイルということだけであれば、
別段珍しくもない。
しかし、ここのファイルは背表紙に大きな特長がある。
一般的にファイルの背表紙というものは、
そのほとんどが平らになっているものだ。
ラックなどから取り出しやすくするために、
背の下に穴を開けるなどしたものも多い。
しかし、これはどうだろう。
穴の代わりに、手に握りやすいような形に
背表紙がグリップ状に絞り込まれているのだ。
その私の驚きを察して、
担当者が駆け寄ってきてくれた。
彼は中国人なのだが、
実に日本語が達者だった。
それもそのはず、
よくよく聞いてみると、
すでに日本市場に入り込んでいるとのことだった。
その社名は、日本の誰もが知っている社名ばかりだった。
日本語がうまいのも、うなずける話だ。
取引先は、日本だけでなく、
ヨーロッパの大手メーカーにまで及んでいた。
□この特殊な形状をしたファイルを手に、
彼は流ちょうな日本でこう説明してくれた。
このファイルの素材は、
「PP発泡」というもの。
普通のPPではなく、「発泡」をしているのだそうだ。
なぜ、ビールでもないのに
わざわざ発泡させる必要があるのだろうか。
そこには、同社の深い深いこだわりが隠されていた。
PPを発泡させることで、中に気泡ができる。
つまり、素材の量を減らすことができる。
要は、製造コストを抑えられる訳だ。
同時に、使い手にとっては、
軽量になるというメリットもある。
しかし、気になるのは、
中に気泡があるということは、
強度的が弱くなってしまわないか、というこである。
その点を聞くと、
待ってましたとばかりに、大きな笑みを浮かべて答えてくれた。
確かに気泡が増えれば増えるほど
強度が弱くなるはずである。
しかし、同社が独自に作り出した技術を使うことで
発泡をしても強度は問題がない。
むしろ、発泡の度合いをあげるほど
強度は高まっていくと説明してくれた。
実際にファイルを手に持ってみると、
弱々しさはなく、いつものファイルとなんら変わらない。
しかも、確かにとても軽い。
また、
PPという素材は、これまで平面以外の特殊な形に成形するのは
一般に難しいとされてきた。
しかし、この会社では、それも問題なく出来てしまうのだという。
その技術をもってして、
先ほどの絞ったような形状をつくりだしてきた訳だ。
その代表例として、
二つのファイルをみせてくれた。
ふつうファイルの背表紙に丸みを持たせるには、
縦にスリットを入れて、折れ曲がりやすいようにしなくてはならなかった。
しかし、同社では
スリットなしに百科辞典のようなやさしい丸みを作り出している。
こうした特殊な技術だけなく、
PP素材には68%のリサイクル素材を使うなど
環境への配慮も行われている。
そもそも、原料が少なくてすむ「PP発泡」は
すでに環境への配慮がなされているとも言える。
中国の技術力をまざまざと見せつけられた思いがした。
今回の中国系出展社の中で、
最も見応えのある製品だった。
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