文具で楽しいひととき
■ 「ペーパーワールド・チャイナ2013レポート」  ■□□□


 


□昨年の上海出張は、
 尖閣問題の
 まっただ中というタイミングだった。

 上海行きの飛行機の搭乗口には、
 これは飛行機というよりかは
 バスの停留所ではないかというくらいの人数しかいなかった。

 私も含めてそのほとんどの人たちは
 一様に沈んだ表情だった。

 うって変わって今回は、
 上海行き搭乗口にはたくさんの人でにぎわっていた。

 あぁ、今回の上海出張は
 安心して過ごせそうだと思っていた。


 上海浦東空港から上海の町中へは
 リニヤモーターカーでわずか8分少々で、
 それこそ一気にたどり着ける。

 ちなみに、
 タクシーを使えば、同じ距離を40〜50分はゆうにかかってしまう。

 リニアモーターカー到着駅から
 私の宿泊するホテルまではタクシーで向かう。

 すでに何度も使っているルートなので、
 勝手知ったるという感じで
 スーツケースを転がしながら
 スタスタとタクシー乗り場へと向かった。

 ところが、
 駅周辺が再開発の工事をしていて、
 あるべき場所にタクシー乗り場がない。

 タクシー乗り場が変わってしまったようだ。

 案内看板(ちゃんとした正式なもの)を頼りに、
 新たに作られたタクシー乗り場へと向かった。

 たしかに、
 そこにはちゃんとしたタクシー乗り場はあるが、
 なにやら様子がいつもと違う。

 運転手の人達が
 みんな外に出てたむろをしているのだ。

 いつもなら係りの人がいて、
 タクシーを取りまとめてくれている。

 我々乗客一人一人に、どこに行くかを尋ね、
 大体これぐらいの料金だとメモに書き込み、
 その紙を手渡しタクシーに誘導してくれる。

 たぶんこれは、
 タクシー運転手が変に遠回りなどして
 料金を不正に跳ね上げないようにという歯止めのためなのだろう。

 しかし、今回はその係の人の姿がない。

 タクシーに近づくと、
 たむろしていた運転手の人たちが
 一斉に私に近寄ってきて料金交渉を仕掛けてきた。

 行き先のホテルの名前を書いたメモを見せると、
 「130元だ!」、「いやいや俺は100元いい」といったことを言ってくる。

 ちなみにいつもなら、25元くらいでいける距離だ。

 これはたまらない。

 冗談じゃないという風に首を振りその場をあとにした。

 しかしながら、
 どこに行っても同じような交渉が繰り返されるばかり。

 これではらちがあかない。

 「メーターで払う」と英語で言うがなかなか通じない。

 仕方なく一番安い値段を言ってきた
 運転手のタクシーに乗ることにした。

 当初は幸先がいいと思ったが、
 キレイさっぱりそれを帳消しにすることになってしまった。

 こんな感じで今年の上海出張は、
 少々ギクシャクとした感じでスタートしていった。


 翌日この話をプレス仲間のインドの方にした。

 やはり彼も同じ目にあったらしい。

 ただ、彼はそうした交渉を全てはねのけ、
 メーター料金しか支払わない!と言い放って
 逆にそれを押し通したという。

 「我々インド人はね、そうした交渉にはのらないのさ」と
 彼はきっぱり私に言い切った。

 さすがインド人はすごい。

 私たち日本人もこうした交渉力を
 もっとしっかり身につけなければならないと
 つくづく思った。


□展示会初日の朝、
 いつものようにホテルから
 プレス専用のバスに乗り込み展示会場へと向かった。

 いつもなら20分くらいで着くところなのに、
 展示会場に近づくにつれ車のスピードはだんだんと遅くなっていく。

 交通渋滞の激しさが増しているのだ。

 ちょうど朝の通勤ラッシュタイムということもあるし、
 今回はペーパーワールド・チャイナ以外に
 空調関係の展示会、そして「インテリアライフスタイルショー」と
 2つの展示会も同時に開催されているという事情も重なったようだ。

 予定より20分ほど遅れて展示会場に着いた。

 今回のペーパーワールド・チャイナの出展社は、
 11か国から421社。

 使用している展示ホールは2館と
 昨年と比べても数字的に見ればそれほどの違いはない。


 


 しかし、
 会場に一歩足を踏み入れた時に体で感じる第一印象は、
 何かいつもと違うものだった。


 


 雰囲気的に盛り上がっているのを感じた。

 言葉では説明しにくいがあくまでも印象として、
 たしかにそういうものがあった。

 早速いつものようにホール1の右角に立ち、
 そこから順番に見ていくことにした。


 


■ デザインアイテムだけを集めた卸商

 展示会取材の時は、
 全身を目のようにして
 ブースとブースの間をゆっくりと歩いていく。


 


 通路からわずかに見えてくるブースの様子だけで、
 「ここは普通だな」であるとか
 「ここちょっと面白そうだ」ということが不思議と分かってくる。

 会場を歩き始めて100歩も行かないくらいところで、
 私の全身の目が激しく反応するところがあった。

 そこには色々なジャンルのデザインアイテムが
 まるでライフスタイルショップのように並べられていた。


 


 吸い込まれるように、そのブースに入っていった。

 社名は「優集品」という。

 通訳の姚(よう)さんに頼んで取材の申し込みをしてもらった。

 対応してくれた女性の方は快く取材を OK してくれた。

 彼らは業種としては卸商だという。

 扱っている商品は、
 文具、食器、インテリア用品など多岐にわたっている。

 ただ一本筋が通っていて
 デザイン性に優れたものだけを集めている。

 なるほど、
 たとえば文具コーナーでは
 ライツのカラフルなファイルから
 香港のデザイン手帳を DAYCRAFT 、
 カナダのペーパーブランクスなどが並んでいた。




 

 


 その中のひとつ「 n design 」のノートに目がとまった。





 かなり厚めの合皮カバーは
 がま口財布の留め具のようにねじって開ける。


 


 背には少し切り込みが入っていて、
 そこに付属のペンがピタリとセットできるようにもなっていた。


 

 


 香港のデザインブランドだという。

 担当者によると、
 「優集品」は70%が海外のデザインアイテム。

 今回のブースには出展されていなかったが、
 日本のミドリの商品も取り扱っているという。

 残りの30%が中国で
 主に若手を中心とした中国デザイナーのアイテムをセレクトしているそうだ。


 
        【 中国の若手デザイナーによる陶器 】


 彼らはこうした商品を
 中国の百貨店やネットショップに卸している。

 メインのユーザーは25から40才ぐらいの働いている人たち。

 こうしたデザインに特化した卸商があるということは、
 中国ユーザーの間でデザインへの関心度が
 どんどんと高まっている証しなのだろう。


  


 実際、
 ここに2〜3年くらいから
 こうしたデザインアイテムが売れ始めているという。

 これまでのペーパーワールドチャイナとは
 ちょっと違うタイプのブースだった。

 先程、
 今回はなんとなく違う盛り上がりがあると肌で感じていたのは、
 たぶんこういうことだったのかもしれない。


■ ペンとノートが一心同体


 初めに取材したブースがいいところだと、
 今回の取材全てが上手くいくようなそんな気分になってくる。

 気を良くして同じ通路を歩いていて
 やはり面白いものを見つけた。

 小さめなリングノートに
 ゴルフのスコアを付ける時に使うような
 薄っぺらいペンがペタンと貼り付いている。


 


 このペンはノートにどうやってくっついてるんだろうと、
 色々といじってみた。

 押したり引っ張りしてもペンはびくともしない。

 試しにペンをスライドさせたら外れた。


  


 でも、
 それは外れたというよりかは、
 壊してしまったという感じがして一瞬不安がよぎった。

 恐る恐るまわりを見ると、
 後で担当の方が
 「そうだそうだ、それでいいんだ」とばかりに大きく頷いた。

 そうか、これはこうしてスライドをして外すのが正しかったのだ。


 


 あらためてよくよく見ると
 このスライドで外すペンは、
 表紙のロックも兼ねていた。

 なかなかよくできているではないか。

 ペンはボールペンになっている。

 薄さこそゴルフペンのようだが、
 幅は結構あって中央がひょうたんのように
 凹んでいるせいか握りごちはまずまずだった。


 


 このスライドロック方式の取付け方は、
 特許を取得しているという。

 このブース、
 寧波合合文具礼品有限公司は、
  PP 、PU、PVC 、紙など様々な素材を使ったノートを作っている。


 


「寧波(にんぼう)」は中国の中でも
 文具製造会社が集中しているエリアだ。


■ 発泡 PP のタブレットケース

 発砲 PP とは、
 PP 素材の中をソリッドにするのではなく、
 気泡状のものを設けて作られたものだ。

 厚みや頑丈さは、
 従来のPPとほぼ同じだが、
 軽量化できるのが最大の特徴。

 これまではファイルなどでよく使われてきたが、
 今回iPad などのタブレットケースが登場していた。


 


 ブースの方いわく、
 発砲 PP を使ったタブレットケースは初めてだという。

 iPad をセットした状態のものを
 手にさせてもらったが、たしかに軽い。


 


 ケース単体では160g だという。

 ケースのフタは
 iPad の中に使われているマグネットを利用して開け閉めを行う。

 タブレットは7カ所を留め具で固定されているだけ。


 


 これだけで iPadがちゃんとホールドできるのかと聞くと、
 どうだ!とばかりにフタだけを手にして
 iPadをブラブラと下げて見せてくれた。


 


 こういう風にしても iPadが外れてしまうことはないという。

 もちろん
 広げたフタを折り返せばスタンドにもなる。


 


 ケースのメインボディや留め具はとても硬くて頑丈だが、
 フタを開けたり閉じたりする折り目の可動部分だけは
 柔らかく仕上げられていてスムーズに開閉できる。

 この部分は、20万回の開閉テストをクリアしているそうだ。



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