■ その63 「鉛筆を愉しもう」
□この春、小学校に入学する息子のために
家族で文房具を買いに出かけた。
行く道すがら、「お父さんがいいのを選んであげるからね。」
なんていいながら、まるで自分の文具を買うみたいに小躍りして
地元のちょっと大きな文具屋さんに向かった。
お店に到着して、早速買い物をスタートした。
筆箱、はさみ、定規、色鉛筆、消しゴム、そして鉛筆。
特に鉛筆には個人的に深い思い入れがあるので、
私なりに色々と検討して、 「これがいいよ」とトンボさんのMONOの鉛筆(2B)を
自信をもって勧めてみた。
でも、見むきもされず、 息子は「これにする!」といって持ってきたのが
レジェンズとかいうマンガが描かれた鉛筆だった。
いやいや、こっち方がシンプルでかっこいいよ、と説得を試みたが
息子はどうしてもマンガがいいと言い張る。
挙句のはては、「そんなにそれがいいなら、お父さんが買えばいいじゃん。」と、、、
誠に、ごもっともな意見。
そうさせていただくことにした。
またまた、鉛筆が増えてしまった。
□ということで、今回は鉛筆のお話。
いつもは、1つの商品にスポットライトをあてて紹介していますが、
今回は、鉛筆という筆記具の魅力に迫ってみたいと思います。
□最近、つくづく鉛筆のよさというものを再認識してます。
鉛筆のよさは、なにより万能な筆記具であること。
鉛筆メーカーの方によると、賞味期限といおうか、どれくらい使えるかといえば、
芯があれば、ほぼ半永久的に使えるという。
ボールペンなどはあまり長期間放っておくと、インクが固まってしまうこともある。
以前、伊東屋さんのイートンペンシルでも書きましたが、
私は車に常備しておく筆記具は試行錯誤の結果、鉛筆に落ち着いた。
夏の暑さや冬の寒さにもほとんど影響を受けずに、いつでもさっと筆記できるのは
鉛筆が一番信頼性が高いと思っている。
さらに、鉛筆で書いた絵や文字についても保存性がとてもよい。
実際、美術館などで何世紀も前の画家が描いた鉛筆のデッサンが
今もしっかり残っている。
また、仮に1本の鉛筆で線をずーっと書いた場合、
なんと約50kmも書けてしまう。
50kmと言われてもイメージしにくいかもしれないが、
ちなみに油性のボールペンが約1.5kmだから、その長さは桁外れだ。
まさに、いろんな意味で長持ちな筆記具といえるだろう。
□こうした、実用上のメリットだけでなく、使う愉しさというものも
鉛筆には、ちゃんと備わっている。
日本で鉛筆を購入すると、削るという作業から行う必要がある。
余談だが、ヨーロッパでは、あらかじめ削られた鉛筆が売られている。
私は、この鉛筆を削るという一見、面倒くさい、しかも手の汚れる作業が
とても好きだ。
コンパクトなDUXの鉛筆削りやアーミーナイフを使って削ることが多い。
レバーをくるくる回すいわゆる鉛筆削りよりも、きれいには削れないけど
私だけの鉛筆に仕上がった感じがして、楽しい。
鉛筆によって、削り具合が固かったり、一方やわらかったりと
1本1本の鉛筆の個性が手に伝わってくる。
まるで、鉛筆と対話をしているような気になってしまう。
万年筆で言えば、インクを入れるひと時のように、
ぜひ、こうした小休止を愉しみたいものだ。
木の香りを愉しみながら、次にどんなことを書こうかな
なんて想いをめぐらせながらキリキリと削る。
□鉛筆は使い続けて、そのたび削っていけば当然軸が短くなる。
短くなると、愛着が増す一方で握りにくくなってしまう。
そんなときに、便利なのが補助軸。
またの名をエクステンダーとも言う。
海外にはいいものがあって、鉛筆と同じ木軸でできたものがある。
わずか6cmの鉛筆につけてみた。
鉛筆単体では筆記ができない長さだが、
補助軸にさせば、まだまだ十分筆記ができる。
ものを使い切るということが少なくなった昨今、
こうして、ものを大事にするというのは、なんとも気分がいい。
□ちょっと大きな文具屋さんや画材屋さんをのぞけば、
鉛筆ってこんなに種類があったのか、と驚くくらいたくさんの種類がある。
しかも芯の濃さも豊富に揃っている。
高くても1本数百円なので、いろいろと買って試しても
金銭的な痛手はほとんどない。
大人になった今、自分にぴったりとくる鉛筆を選んで、
もう一度鉛筆をたしなんでみるものいいものですよ。
(2005年2月8日作成)
□ これまでご紹介した鉛筆関連のコラム
■ 「鉛筆を最後まで慈しむ道具」 鉛筆補助軸いろいろ
■ 「老舗文具屋さんのシンプル鉛筆」 伊東屋 イートンペンシル
■ 「大人の鉛筆削り」 DUX社 鉛筆削り
■ 「ちょっと変わった2刀流 鉛筆削り」 KUM社 ロングポイント鉛筆削り
■ 「サバイバルから鉛筆削りまで 」 ウェンガー ソルジャー
■ 「やっぱり鉛筆。」 ファーバーカステル UFOパーフェクトペンシル
■ 「三角形軸の鉛筆」 ファーバーカステル GRIP 2001、ステッドラー Mars エルゴソフト
■ 「ありそうでなかった組み合わせ」 トンボ鉛筆 黒赤鉛筆 木物語
■ 「レトロなエンピツ」 三菱鉛筆 局用鉛筆