■ 「今年も収穫いっぱい ペーパーワールド2008 レポート」
■ 原点の鉛筆にさらに磨きをかけたステッドラー
大手のドイツメーカーの出展が少なかった中、
ひときわ大きなブースで存在感を誇示していたステッドラー。
今回の新作は大きく3つ。
まずひとつ目は、鉛筆メーカーならではのもので、
これは新作というよりも新技術ということになるのだろう。
それは「ABS」というものだ。
「ABS」と聞くと、我々は車の「アンチ ロック ブレーキシステム」というのが思い浮かぶ。
しかし、今回のものは「アンチ ブレーク システム」、
つまり鉛筆の芯が折れにくい機構である。
鉛筆の芯が折れる時というのは、芯の先端ではなく、
木の軸と芯のちょうど境目であることが多い。
その点に着目して、芯のまわりを樹脂ベースで特殊な素材で覆い尽くしている。
削った状態を見るとよくわかるのだが、芯と木の間には白い部分がはっきりと見える。
この機構により、芯の折れを同社これまでのものと比べ、その強度が30%も増しているのだそうだ。
今回、この「ABS」は、芯が比較的柔らかい色鉛筆でまずは採用されるという。
ステッドラーと言えば、もちろん鉛筆メーカーとして有名だ。
だが、以前に万年筆を作っていた時代もあった。
今回は、学童用であるが、ノリスシリーズの万年筆が発表されていた。
レッドの三角軸のキャップにノリス鉛筆カラーというポップなデザイン。
書き方ペンらしくグリップには指を正しく添えられる凹みがある。
当然、大人が使っても書きやすい。
あわせて、昨今ヨーロッパで書き方ペンのもうひとつの主流になっているローラーボールタイプもあった。
ペン先とインクタンクが一体化したカートリッジを使う。
このノリスシリーズには、さらに太軸のシャープペンもあった。
芯の太さは1.3mm。基本はこれも子供用だろうが、
大人のブレスト、アイデアスケッチペンとしても使えそうだ。
なお、これら新製品の日本での発売は未定だという。
■ 海外初進出となる能率手帳
日本でお馴染みの能率手帳がペーパーワールドに初出展していた。
今回の出展の目的は、
能率手帳を海外に輸出するということではなく、
その一歩手前の、今後海外に本格進出していくマーケット調査のためだと言う。
能率手帳と言えば、日本初のビジネス手帳だ。
同社はそもそも文具メーカーではなく、経営コンサルタント会社である。
人材育成のために作り出された手帳というその生い立ちは、
海外のバイヤーに大変新鮮に映っていたそうだ。
その背景もさることながら、海外バイヤーは一様に
その作り込みの良さに、おおいに関心を示していたという。
しっかりとした製本やコピー用紙よりも薄いのに筆記特性に優れた紙質などなど。
ブースには、そうした作り込みのこだわりを解説したコーナーがあった。
その中で、日本人である私も思わずフムフムと感心してしまったのが、
中の紙を裁断する工程だった。
手帳の中の紙は、
手帳の大きさになる前は、もともとその何倍もある大きさになっている。
その紙には、裁断すべきところに、0.2mmというそれはそれは細い線が引かれている。
その0.2mmのちょうど真ん中にピタリとくるように裁断する訳だ。
0.2mmという細さもさることながら、
作業をさらに困難なものにしているのは、
能率手帳の紙が、コピー用紙よりも薄いということ。
紙を重ねた状態で裁断しようとすると、紙にしわが寄ってしまうのだそうだ。
実際に裁断されたものは、
確かに0.2mmの線の真ん中を切ったことを示す線の色が
その裁断面にしっかりと残されている。
こうした細かなこだわりが
ページをめくった時にどのページの線もピタリと合っているという
クオリティを生んでいるのだ。
また、定番の能率手帳の他、
このペーパーワールドのための特別展示として、
日本の伝統的な織物「有職(ゆうそく)織物」で表紙を飾った能率手帳があった。
有職織物とは、平安時代から続く公家の方々のための着物。
今も天皇家で使われているという。
今回の手帳の表紙は京都の老舗俵屋十八代の喜多川俵二氏によるもの。
「用の美」を追求してつくられた柄は、着物から手帳になってもとても馴染んでいる。
今回のものは、あくまでも参考出品ということで販売の予定はない。
気になって、その値段をお聞きしてみると、
小さいタイプで20万円から、大きいタイプだと50万円からだという。
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