■ その79 「水性ボールペンの魅力を存分に味わえる」 ラミー スイフト 9,000円+Tax
□水性ボールペンは、読んで字のごとく水性インクを使ったボールペンである。
その魅力は、油性ボールペンにはない滑らかな書き味にある。
まるで、万年筆のようにサラサラとした書き味を愉しむことができる。
万年筆は、ペン先を常に一定の向きにしておかないと書くことができないが、
水性ボールペンはペン先がボールなので自由に向きを変えて書くことができる。
さしずめ、「全方位万年筆」と言えるかも知れない。
そうした水性ボールペンの特性を活かしたと思われるペン、
それが、ラミー スイフトだ。
□まず、外観から見てみると、男心をくすぐる配慮があちこちに
見え隠れしている。
ボディ全体は落ち着いたつや消しの黒で覆われている。
決して高級なペンではないが、ラミーらしい上質さを漂わせている。
手にすると軽すぎず、適度な重量感があり、、
金属製のペンであることが直感的にわかる。
グリップには、握りやすさを出すために
ボディに穴を開けるという手法がとられている。
見た目の精悍さと握りやすさを両立したデザインだ。
ちょっと見ただけでは、なかなか気づかないが、
黒づくめのボディの中で、胴軸部分だけ特に厚塗りされているようだ。
ペン先パーツと比べてみると、胴軸の表面にはかすかなムラがある。
何かを隠すための厚塗りではなく、これは、握った時の程よいグリップが
得られるためだと思われる。
私のスイフトは結構使い込んでいるので、ところどころボディの黒塗りから
銀色の下地が見えてきている。
塗装がはげてしまうというのは、あんまりいいものではないが、
スウィフトの場合、それがかえっていい風合いとなっている。
ちょっと例えが良くないかもしれないが
まるで、使い込んで下地が見えはじめている年季の入ったピストルのようだ。
□水性ボールペンというと、キャップ式が多い中、
スウィフトはキャップのないノック式が採用されている。
書きたいときにさっと片手で起動できるのは、やはり便利だ。
そのノックボタンに目を移すと、見慣れない光景が飛び込んでくる。
それは、ノックボタンが明らかに中心よりもずれていることだ。
そのずれたノックボタンを押し込んでみると、
ペン先が現われるその動きに合わせてクリップが沈みこんでいく。
沈み込んだクリップは、ボディからほとんどはみ出ることなく、
ほぼフラットになってしまう。
まるで、からくり忍者屋敷のように見事な沈みこみを見せてくれる。
私は、そのクリップの浮き沈みに魅了され、
購入当初は、用もないのにカシャカシャ動かして楽しんでいた。
確かにクリップと言うものは、ポケットにさしたりとペンを携帯するときには必要で、
書くときには必要がなくなる。
筆記体勢の時だけクリップが沈み込む、このからくりは、
誠に理にかなった動きと言える。
実は、ここにこそ
水性ボールペンの魅力を味わうための秘密が隠されていたのだ。
□冒頭でも紹介したように、
水性ボールペンは全方位でかけるという特性がある。
全方位で書くためには、握っているペンをクルクルと手元で回しながら
ペン先のベストポジションを決めることになる。
スウィフトはクリップが沈み込んで、フラットになってくれるので、
なんの障害もなく、クルクルと回せるのだ。
このスウィフトにはM66と呼ばれる滑らかな書き味に定評のある
水性ボールペン リフィルが採用されている。
クリップが沈み込むことで、
手元の自由が開放されたその書き心地は
銀盤を自由に舞うフィギュアスケートとでも言ったらいいだろうか。
解き放たれた感じがとても心地よい。
沈むクリップは、たんに見ていて楽しいということだけなく
水性ボールペンの全方位筆記という特性を活かすためだったのだと
私は解釈している。
□何かを気にしながら、物事を行うと、
ついつい気が散ってしまうものだが、
このスイフトなら筆記体勢に入って、なにも邪魔するものがないので、
滑らかな水性ボールペンの書き味を心ゆくまで堪能することができる。
1本のペンの良さを最大限に活かすために、考え抜かれた素敵なペンだと思う。
(2005年6月7日作成)
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