文具で楽しいひととき
オート
ROOK 万年筆
先々月、とある仕事で大阪に行った。
会社勤めしていた頃は、月に1~2回くらいの頻度で、よく大阪出張をしていたものだが、今回は久しぶりの大阪となる。梅田の駅前には大きなヨドバシカメラが出来ていたりと、変わった面もあったが、その向かいの当時よく通っていた飲食店街はその頃と同じだったのがうれしかった。
ちょうど昼時だったので、たくさんのビジネスパーソンが忙しそうにお昼ご飯を食べていて、そこに当時の自分をいるような気がした。
さて、今回の大阪出張では、幾つものステーショナリーショップを見て回ることが出来た。数えてみたら全部で12店。その中でとても印象的だったのが「NEUE(ノイエ)」というショップ。阪急メンズ館の5階に入っていた。
一言でいうと、一つひとつの商品がゆったりと並べられているおしゃれなステーショナリーショップという感じ。(全然一言になっていない。)メンズ館に入っているということもあり、男ごころをくすぐるものが、並んでいた。
海外のデザインステーショナリーから日本のメーカーのあまり見かけないものなど、なかなか新鮮みのあるセレクトになっていた。中には、コンサイスというメーカーのメタボを測定するスケールというのもあり、これには、私の男ごころが大いにくすぐられた。
初めて知るショップだったが、改めて調べてみると、大阪だけでなく、神戸、そして、東京の二子玉川にもショップを構えていた。今回、大阪のショップで、私が買ったのがオートの万年筆。
オートが万年筆を出していることは知っていたが、これは正直始めて見るものだった。そのコンパクトさ、そしてデザイン性を見て、『ひょっとしたら、あれに使うのにちょうどよいかも・・・」、と期待をさせるものだった。
■ ショートサイズ万年筆
商品名は「ROOK(ルーク)」。ボディはすこぶる短い。
例えるなら私の人差し指のつけ根から指先くらいまで、といったところ。私の指を見たことのない方がほとんどだと思うが、万年筆にしてはかなり短め。ラミーピコよりほんの数ミリ長い程度。
ボディはアルミ製のようで、とても軽量感がある。このボディ、短い中にもなかなか特徴的なフォルムをしている。
ボディラインは、端から緩やかな山を描いている。ボディの中央までで、ひと山。そして、さらにもうひと山あるその緩やかな山の頂点には、グリーンのアクセントラインが1本ずつあり、ボディ全体がシンメトリ(左右対称)になっている。
そのグリーンのラインのところは、ボディより一段ガクン下がったような形になっている。つまり、別パーツになっていて、ここはキャップとボディの境目になっているようだ。両方のつなぎ目を順番に引っ張ってみると、尻軸の方がプスッという音とともに外れた。
このキャップを外すのは、つかむ部分が少々短いということもあり、ちょっとしたコツと力を要する。
中からは、ボディとほぼ同じ長さのペン先ユニットが出てくる。この短いままでも何とか握ることはできる。
しかし、このペンでは、キャップを尻軸にセットすることを想定しているようだ。こうすると、一挙に14cm ほどのレギュラーサイズに様変わりする。
ペン先はスチール製。Germanyとあるので、たぶんシュミット製ではないだろうか。
小さなスチール製ペン先ということもあって、予想していたとおりのやや硬質な書き味。
ペン先に表記はないがFあたりの細字のようだ。
■ ジェットエース用万年筆に
さて、私はかねてより、こうしたショートサイズの万年筆を探し求めていた。それは何のためかというと、私が今、肌見放さず持ち歩いているモバイル手帳にセットする万年筆にである。
このモバイル手帳、正式な商品名はダイゴーのジェットエース (A 1155)といってもともとは鉛筆がセットされている。
しかし、鉛筆の筆跡がどうしても薄いため馴染めず、ある時期から伊東屋さんのオリジナル手帳用ボールペンをさして使っていた。
ボールペンにしたことで、筆跡も濃くなり、読みやすくなってこれで十分満足だったはずなのだが、いつしかもっと快適に書きたい、できるなら万年筆で書きたいという想いがふつふつと沸き起こってきた。ただ、このモバイル手帳は、手のひらサイズと、とても小さく、しかも、ペンを収納する筒状のスペースもいたって狭い。
一般の万年筆では、到底このスペースに入れることは出来ない。そんな時に見つけたのがこの万年筆だった。モバイル手帳の横に並べてみると、長さはピッタリ。問題は筒のスペースにセットする方法である。
オートの万年筆をその筒スペースに差し込んでみたが、やはり入り込む余地は全くない。そこで、クリップをこの筒に挟んでみた。
一応とめることは出来た。しかし、万年筆がおんぶされたように頭一つだけ飛び出してしまう。この頭ひとつ出た状態をピタリと収めるためには、モバイル手帳の方にいささか手を加えなくてはならない。具体的には、手帳の背に切り込みを少しばかり入れる必要がある。
■ ピタリとセットするためのカスタマイズ
万年筆のクリップの幅を計ってみると、2.5mm ほどだったので、切り込みもそれに合わせて入れてみる。
そこに再びクリップを差し込んで見ると、今度は手帳とピッタリと息を合わせるように収まった。
これで携帯するときの問題は、どうにかクリアできた。次にメモを書き込んでみよう。先程セットしたクリップを再び外して、さらにキャップを外して、ペンの尻軸にキャップをセットして書いてみる。
これではあまりにも工程が多すぎる。メモを書き込むという行動そのものよりも、その前段階の万年筆を取り出して、筆記体勢に入るまでの工程の方が多くなってしまう。これではメモ取るという敷居が高くなってしまい、全然ダメだ。メモを書くという行為が面倒くさくなると、そもそもメモを取らなくなってしまう。
これは今まで私が痛いほど経験してきたことだ。この方法は却下。では、キャップを手帳にセットしたまま、ペンだけ引き抜いてみれば、いいのではないだろうか。
■ キャップは残して引き抜く
これはうまくいきそうだ。ただ、ペン先を引き抜く時にかなり力がいる。しかもキャップが固定されたままだとなおさらだ。しかし、これは慣れの問題として解決可能かもしれない。短いボディのままの筆記とはなるが、メモはそもそも長時間書くわけではないので、これは良しとしよう。どうやらこのやり方がベストのようだ。
万年筆であれば、ペン先を上向きにしても、構造上問題もない。
ご存知のように一般のボールペンは、ペン先を上に向けて書いていると、インクがペン先に行かなくなり、逆に、空気を取り込んで書けなくなるということも起こりえる。これまでは、できるだけ上向きにならないように注意していたが、万年筆ならばより安心だ。そうは言っても万年筆であっても、長く上向き筆記をしていると、だんだんインクはかすれてくる。
■ しおりもつける
携帯方法に続いて、メモをとるときの問題点も無事クリアして、私は、ほっと一安心して熱いお茶を沸かし、それを落ち着いてすすっていると、またもや別な問題が発覚した。いったんお茶を脇にどかす。次の問題は、しおりである。これまでのボールペンには、しおりをくくり付けていた。
これによりすぐに新しいページを広げ、すぐに書き始めることが出来た。今回の万年筆セットスタイルでは、引き抜いて書く方の万年筆にしおりをつけることは出来そうにない。ただサッとページを開くということは、モバイルメモにおいては、是非とも取り入れたい点だ。そこでキャップのクリップに紐をくくりつけることにした。
ペンを引き抜く、そして、しおりを引っ張ってページを開くという具合にひと工程は増えてしまうが、これが現状で考えうるベストな方策のように感じる。
今、半月ほどこのスタイルで、モバイルメモライフを送っているが、まずまずの使い心地。
何よりメモにも万年筆が使えるというのは、心地よいものがある。伊東屋手帳ボールペン スタイルと併行してモバイル手帳+万年筆スタイルというのも楽しんでみようと思う。
■ 記事作成後記
この万年筆は、カートリッジ式となっています。
今回のモバイル手帳+万年筆スタイルで、まもなく一冊を使い切ろうとしています。しばらく使っていくと、切り込みを入れたところが段々と傷んできました。
一冊を使い切るのには、ギリギリ持ちこたえてくれそうですが、何か、補強案を考えなくてはいけないようです。
* 最後にいつものご注意を
今回ご紹介しました色々なカスタマイズは、あくまでも私の勝手な方法をご紹介しただけで、この方法を推奨するものではありません。きっと、ほとんどの方は右から左に受け流し、実際には行ったりしないとは思いますが、万が一行う場合は、あくまでも自己責任でお願いいたします。
オート ROOK 万年筆 1,000円+Tax
オート ルーク 万年筆は、こちらで販売されています。
NEUE(ノイエ)
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