文具で楽しいひととき
ラミー
ラミー2000 ペンシル
ラミー2000というと、おそらく真っ先に思い浮かぶのは4色ボールペンで、そして、その次にくるのが万年筆がはないだろうか。私の勝手な想像だが。。。ラミー2000には、ペンシル(シャープペン)タイプもあるのだが、どうしても地味な存在になっているような気がする。これは、なにもラミー2000に限った話ではない。
ペンブランドのカタログを見回してもボールペンの写真が大きく取り上げられていて、その下に小さな文字で「ペンシルタイプもあります。」と、申し訳程度の添えられていることもある。そうした記載があるのは、まだいい方で、そもそもペンシルをラインナップしていないというケースもある。
というように、ちょっといいペンのジャンルの中では、ペンシルは、ややマイナーな存在であるようだ。
そんなこともあってか、このラミー2000のペンシルも、その存在こそカタログなどで十分知っていたのだが、それほど私の意識の中心にあるものではなかった。そんな中、俄然私の中でこのラミー2000ペンシルが燦然と輝きだしたひとつのきっかけがある。
それは、数年前ドクター ラミー氏にインタビューをさせていただいた時だった。インタビューも終盤にさしかかったところで、前々からぜひ聞いてみたいと思ったことを尋ねてみた。
■ ドクターラミー お気に入りのペン
「ドクター ラミーがこれまで手がけてこられたペンの中でご自身が一番お好きなペンはどれですか?」ドクター ラミーは3つ上げさせて欲しいと前置きした上で、筆頭にあげたのが、このラミー2000ペンシルだった。
ラミー2000はドクター ラミーが、お父さんから会社を引き継ぎ、自分が初めて手がけペンということもあるので、ラミー2000をあげられたのは、ある意味納得できた。しかし、万年筆やボールペンではなく、あえてペンシルを選ばれたことに興味がわき、その訳をお聞きしてみた。
■ クリエイティブな発想を生み出すペン
「私は、普段使っているペンはペンシル(シャープペン)です。ペンシルの方が自分のクリエイティブな部分をどんどんと出してくれ発想をどんどんふくらましてくれます。メモやアイデアをはじめにペンシルで書き、最後には万年筆で清書します。ですので、ペンシルは私にとって欠かせないペンなのです。」
そう言って、ドクター ラミーはスーツの胸ポケットから35年以上使い続けているというラミー2000ペンシルを取り出した。ひと目で使い込まれているのがわかる素敵な一本だった。私は、こういう話に滅法弱い。しばらくして、ペンショップでこのペンシルを買った。ショーケースの中では、同シリーズの万年筆や4色ボールペンよりも在庫数はちょっと多めだった。
基本的なデザインは、ラミー2000の流れをしっかりとくんだものになっている。私はてっきり4色ボールペンと同じ太さかと思っていたが、実際に握り比べてみると、わずかシャープペンの方が細身になっていた。とくに、それが顕著なのは、ペン先側。シャープペンのほうがスラッとしている。
■ ピタリと重なり合うノックボタン
外観上の最大の違いは、ノックボタン。これが大変に押し甲斐のあるスタイルをしている。
ノックボタンが、まるでキノコの傘のようになっていて、その外側の輪郭は、ボディラインの延長線を描くようにつながっている。そして、ノックボタンを押し込むと、ボディにピタッとフィットするように重なりあう。
ノックを押す前、そして押した時の両方における美しさというものが考えられている。一方、その反対側の芯を出すパイプの部分にもこだわりが見られる。
■ 美しいペン先
ペン先に行くに従いボディラインがだんだんと細くなっていくのだが、最後のパイプになるとき、ガクンといきなり細くなるのではなく、あくまでもこれまでのボディラインの流れを崩すことなく、自然につながっている。
特に、ノックボタンを2回ほど押し込んで、芯を出すと、そのボディラインは見事に完結する。先ほどのノックボタンからこのペン先に至るラインの美しさといったら「お見事!」と盛大に拍手をお送りしたくなるほど。ラミー2000シリーズの中でも、ボディラインの美しさという点においてはこのペンシルが一番ではないかと個人的には思う。
ラミー2000は、バネ式クリップが採用されていることは、よくいろんな本でも紹介されているとおりだ。しかし、「お前は、その実物を見たのか!」と言われると、体を小さくして、「ありません。」と答えるしかない。
このペンシルのクリップの根もとに目を移すと、うっすらとつなぎ目のようなものが見える。これはひょっとすると、と思い、ネジってみると、ボディが外れていく。そして、あの有名な無垢のクリップが露わとなってポロンと外れる。
そのクリップの根もとには、確かにバネがしっかりと埋め込まれていた。
バネ式クリップというものを、身をもって確認することができた。なお、この分解はオススメできない。と言うのも、クルクルとボディをねじる時にクリップがボディにこすれる形になるのでボディにキズを付けてしまう可能性が大いにあるからだ。
冒頭でも触れたが、一般にシャープペンはボールペンや万年筆の影にかくれて一応私も仲間に入れてもらっていますという扱いが多い。
このラミー2000のシャープペンは、ボールペンの共用の部品を使って作られたというよりもノックボタンにせよ、ボディラインにせよこのペンのために考えて作られたことがひしひしと感じられる。「シャープペンもあります。」ではなく、「シャープペンがあります。」と言える一本だと思う。
*追記
私は、0.7mmをノート筆記用、0.5mmを手帳用に愛用していまる。
そして、専用の詰め替え消しゴムも常備している。
*ラミー2000 ペンシル 0.5mm
最近はもっぱらラミー2000 0.7mm ペンシルをノート筆記用に愛用しています。
*参考サイト
ドクター・ラミー氏 インタビュー記事(オールアバウト)
*関連コラム
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