文具で楽しいひととき
三菱鉛筆
局用鉛筆
1ダースと言えば、鉛筆というくらい私にとっては馴染み深い。そもそも、1ダースは12本(個)を意味するというのも、鉛筆で覚えたものだった。今回は、私が久しぶりに1ダースで鉛筆を買うことにした三菱鉛筆の「局用鉛筆」を取り上げます。
■ 局用という鉛筆
この局用鉛筆セットは三菱鉛筆さんと銀座伊東屋さんによる復刻版である。箱の表紙に三菱鉛筆の金色の刻印の他に控えめにITOYA 100th.とエンボス状に印されている。どうやら、銀座伊東屋100周年の限定販売のようだ。
まず、注目したいのがパッケージ。こげ茶の紙箱に先ほどの金色の三菱鉛筆の文字がレトロな雰囲気を醸し出している。当時の豪華さを表わしているようで大変面白い。箱を開けてみると、これまた懐かしい感じの演出が凝らされている。ご丁寧に帯紙で鉛筆が包まれている。箱から鉛筆を取り出してみると、鉛筆がヒモでしっかりと結ばれている。当時はこうのような感じで売られていたのだろうか?鉛筆が高価なものとして位置づけられていた古きよき時代を彷彿とさせる。
そもそも、この「局用鉛筆」という商品名はあまり聞きなれないものだ。三菱鉛筆社の解説によれば、明治20年に眞崎仁六氏によって創設された三菱鉛筆が、幾多の研鑽の末に国産の鉛筆としては初めて、日本政府に採用された鉛筆とある。つまり、局用鉛筆とはお役所向けの鉛筆ということになる。
■ 三菱鉛筆謹製
ちなみに、三菱鉛筆社は財閥系の三菱グループとは別会社である。三菱鉛筆は眞崎家の家紋である三鱗(うろこ)から生まれた三菱マークを1903年に商標登録をしていて、これは三菱グループより10年も早いとのことだ。
この日本政府に採用されたということが、当時としては大変すごいことだったのだろう。その証拠に鉛筆の軸にはこうある。「三菱鉛筆株式会社謹製」謹製。つまり「謹んで製造しました」ということだ。
鉛筆の軸には、もう1つ気になる標記がある。旧漢字なので、ここでは標記できないが、第1号とある。これは芯の濃さを表わしている。ここでいう、第1号は3Bを意味している。今回の復刻版には第2号(B)と第3号(2H)も用意されている。
こうして見てくると、パッケージから鉛筆の軸の標記まで全てが漢字で統一されている。当時としては当たり前のことだろうが、こうして、今見てみると、意外とかっこいい。以前は、日本語の文字はデザイン面から見て、あまりさまにならないなあ、と思っていたけれど、これを見て、日本の文字もなかなかいいものだなあと見直してしまった。
この「局用鉛筆」あくまでも復刻版なので、木軸や芯は今のものを使っているので、実用面では全く問題はない。軸は黒で、今の鉛筆にはない、独特の存在感を放っている。丸軸を握ってみると、通常の鉛筆よりいくぶん太めな感じがする。
書き味はさすが老舗鉛筆メーカーだけあって、上々な仕上がりとなっている。3Bというやわらかめの芯なので、とても滑らかな書き味が楽しめる。私は、この局用鉛筆にお気に入りのファーバーカステルのUFOパーフェクトペンシルのキャップを付けて使っている。
黒軸に刻印されてる銀色の文字とキャップの銀がマッチしてなかなかお似合いだと思う。こういう、鉛筆の新旧の組み合わせもいいものだ。
最近はちょっと昔のレトロなデザインがもてはやされているが、この局用鉛筆は永い歴史と日本政府初採用という輝かしい功績がが息づいている本格派。だからといって、コレクション用として飾っておくのではなく使って初めて価値があると私は思っている。日本の鉛筆の原点の1つであるこの鉛筆を再び手に出来る喜びをかみしめながら使いたいものだ。
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