文具で楽しいひととき
ペーパーワールド チャイナ
2013 展示会レポート
■ またもやデザインステーショナリー卸商
先程「優集品」で、いよいよ中国もデザインアイテムの卸商が出てきたのかと思っていたら、もう1社同じようなブースが出展していた。
今回のペーパーワールドでは、「優品区( Elite )」という新設コーナーが設けられていた。ここには高品質、デザイン性の高いステーショナリーだけが集められている。このブースもそのコーナーの中にあった。ブースには、彼らのオリジナルブランド「de plus」というレザーアイテムを中心に、海外の10ブランドのデザインステーショナリーが展示されていた。
彼らの商品の卸先もやはり中国の百貨店が中心。それに加えて彼らは、オフィスユーザー、つまり企業にもこうしたデザインステーショナリーを納めているという。企業と言っても弁護士事務所など限られたところだという。取り扱いブランドの顔ぶれを見ると、3L や PLUSFILE、tarifold など、オフィスステーショナリーが多かった。
中でも注目したのが、我らが日本を代表するデザイナー、秋田道夫氏のオリジナルブランドだ。
シルバー(ステンレス製)の輝きが美しいデスクアクセサリーの数々がディスプレイされていた。
中国というと銀色よりも金色の方が好まれるという印象を持っていった。しかし、最近のデザインにこだわる中国ユーザーの中には伝統的な金色よりもシックな銀色を好む層も増えているのだという。中国デザイン市場もどんどん成熟してきているようだ。
■ トピックノート
日本では「ライフスタイルノート」というカテゴリーがある。たとえば、旅行や料理、映画といった自分の好きなテーマについて色々なことを書きこむためのノートだ。これも基本的に同じカテゴリーなのだと思う。香港のGOLDEN HOUSEが展開しているブランド「HAND SCRIPT」。
「HAND SCRIPT」とは「手書き」という意味。ブースには、たとえば「Fit Plan」、「XXXS」というタイトルが付いている手帳があった。
タイトルからもわかるように、これらはダイエット管理のためのものだ。「Fit Plan」の紙面には、EXERCISEやFOODといった記入欄があり、一番下にその日の体重を記入できるようになっている。
「XXXS」というタイトル、なんともウィットに富んでいていい。
これはつまり、今のサイズよりももっと小さくスリムなものを身に付けられるようにということなのだろう。こちらの紙面は朝食、昼食、夕食、そしてどんな運動をしたかが書き込め、やはり最後にはその日の体重を記入する欄がある。
それから「a la mode」というタイトルの手帳もあった。
これは女性の服選びのための手帳だという。多くの女性は、毎日会社になにを着ていくかを悩んでいる。この手帳を使うとそのその管理が楽しくできるようになる。紙面には、女性の体のアウトラインだけのイラストがあり、そこに実際にその日に何を着ていったかを自分で描き込んでいく。
色を塗ったりしたらイメージが湧いてきっと面白い紙面に仕上がることだろう。
「慢生活記事本」とは怠惰な生活と思いきや、そうではなく「スローライフのための手帳」という意味だという。
冒頭のページに記入例のようなものがある。それが、まるでビジュアル本のようだった。
写真と共に簡単な日記のようなものが書かれている。これをお手本に自分のスローライフを綴っていく。
彼らは、こうした「ライフスタイルノート」を「トピックノート」と呼んでいた。今やデジタル時代で、手で書く機会はめっきり少なくなっている。手書きには、その時の感情を残すというデジタルではなかなかできない特徴がある。そうした手書きをもっと楽しんでもらいたいということで、こうした「トピックノート」を企画したという。
ただ手書きして欲しいというのではなく、ダイエットや洋服などの具体的なトピックを与え、場合によってはこういう風に書くといいという呼び水(記入例)まで用意して、書くことを楽しんでもらえる仕掛けを作っている。
こうしたトピックノートの他にもう一つ注目したのが「Freestyle Planner」という手帳だ。
表紙の帯にその特徴がよく表れていた。年号がデジタル表示になっている。
「2013」や「2014」など自由に年号を書き込める。中のスケジュール紙面もまさしくフリースタイル。まず、マンスリーカレンダーページがある。
右上にやはりデジタル表示があり、そこに年と月を自分で書き入れる。
カレンダーページそのものも自由に作ることができる。はじめに曜日を書き入れていく訳だが、その曜日もたとえば毎週水曜日がたくさんの予定があるので、水曜日だけを少し幅を広めにであるとか、金曜日はあまり予定が入らないので細めにといった具合にフレキシブルに変えられる。
もちろん、日曜日始まり月曜日始まりだって自由に選ぶことができる。さすがに曜日と日付は全て自分で書き入れなくてはならないが、完全なる自分好みのフォーマットを作れるのはうれしい。ウィークリーページは、一応見開き1週間になっているが、何もこれを1週間分として使わなくてもいい。
予定のある日だけにしてもいいのだ。デジタル表示の日付、そして曜日は、M、Tu、W、Th、F、Sa、Suという表記に○印を付けるだけ。忙しい現代人にもっと自由に過ごして欲しいという想いでこのフリープランナーをデザインしたという。
なかなか面白いスタイルのダイアリーだ日本の代理店はまだないという。
■ 卸コーナーの「COLIPU」
今回のペーパーワールド・チャイナでは、「COLIPU」というコーナーがおよそ40社のブースで展開されていた。
「COLIPU」と書いて、「クリップ」と発音するそうだ。これまでのペーパーワールドチャイナでは、漢馬(馬は王片)という中国の有力文具卸によるコーナーがあった。実はこの「COLIPU」は、その「漢馬」コーナーと同じものだという。
中国の文具卸「漢馬」が一年ほど前に日本のアスクルと合弁企業「COLIPU」を立ち上げたのだ。運良く、漢馬の前社長であり、「COLIPU」の常務副総経理のAlbert Yang氏に直接お話をお伺いすることができた。
「COLIPU」の業態は、これまでの文具卸に加え、アスクルが加わったことで小売りも付け加えられることになった。今回のペーパーワールドチャイナ「COLIPU」コーナーでは、そのうちの文具卸としてのビジネス活動を引き続き行っているという。
パイロットやコクヨ、カール事務器、三菱鉛筆といった日本の大手メーカーをはじめ、中国の文具メーカーがブースを構えていた。ブースにはそれぞれのメーカー担当者とともに「COLIPU」の担当者もいて、来場するバイヤーからの注文を受けるなどしていた。
Yang氏に「COLIPU」の卸業務の中で他社と差別化している特徴についてお聞きしてみた。
大きく分けて3つあるという。一つ目は「商品の集合力」。中国のみならず世界中から高品質の文具を集め、取り扱いをしている。二つ目は「サービス力」。このサービス力には二つの面があるという。
一つには、今述べた良い商品だけを集めるという点、すなわち偽物がないということだそうだ。
そして、もう一つの面が物流。今では、中国の他の卸もやり始めているが「ドア トゥ ドア」のデリバリーを徹底している。三つ目は「サポート力」。単に良い商品を卸すというだけでなく、様々なサポートを行っている。たとえば、客先の小売店が新たな店舗をオープンするとなれば、商品だけでなく、店づくりに必要なあらゆるサービスも提供するという。
あるいは、世界の文具市場の変化についてレクチャーを行うこともあるそうだ。「COLIPU」の現在の得意先小売店は、経済発展が著しい中国東方地区を中心に3,000社に及ぶ。Yang氏も強調していたように「COLIPU」は商品を卸すだけでなく様々なサービス面にも力を入れている。
こうした「サービスの価値」をしっかりと認めてくれるところということで、おのずと得意先の小売店は、各地域を代表的する大手で占められているという。同時に取り扱いメーカーも大手が中心になっているそうだ。
そもそも、アスクルと組むことにしたのは、なぜかを聞いてみた。漢馬では、中国の文具市場を変革させたいとかねてより考えていた。しかし、中国の文具市場は大変複雑で難しい面があった。そこで日本で成功しているアスクルのモデルを取り入れ応用したいと考えたのだという。
また一方で、「COLIPU」は中国に57,000店もの直営ショップを持つM&Gの子会社にもなっている。
【ペーパーワールド・チャイナでも大きなブースを構えていたM&G社】
M&Gはショップだけでなくオリジナルの文具の製造も手がけている。今や自らの専門分野である卸業だけでなく、小売、そしてメーカー機能もグループ全体で持つまでになっている。
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