文具で楽しいひととき
ISOT2012
国際 文具・紙製品展レポート
今年もやってきた ISOT 。
初期の頃は9月に開催されていたが、ここ数年は、ずっとは7月上旬の開催。いずれの時期も暑い季節だ。そのため、「ISOT」=「暑い」という図式が私の中には20年来すっかりとすり込まれている。今回は、そのすりこみがさらにもう一段階、更新されたというくらいの暑さだった。これまでは一応上着を着ていたが、今回はさすがに半袖でのりこんだ。
さて毎回、ISOT会場ではこのブースを見ておこうというところがいくつもある。これまではその一つひとつをピンポイントで回っていた。あちらのブースに行ったら今度はこちらという具合にジグザグに。今回は作戦をちょっと変えてみた。
ISOT 会場の右端からスタートして一本目の通路を見終わったら、隣の二本目という具合にクネクネ作戦で回ってみることにした。終わってみれば、夕方の17時前には全てを見終えることが出来た。以前のピンポイント作戦では、ちょうど飛び石で回るというようなイメージだったが、
どうやらそれよりも、クネクネ作戦の方が無駄な動きがないようで早く回れ、しかも移動距離も短くすんで、心なしか足の疲れも幾分少なかった。
そんなクネクネと会場を見て回った中で気になった文具を写真とともにご紹介していきたいと思う。
■ 新作ノートに注目が集まっていたデザインフィル
デザインフィルと言えば、毎回ブースに趣向をこらしている。
今回は「森」を表現した空間が作られていた。フカフカとした人工芝が全面に敷きつめられ、いたるところに白い木が立っている。そもそもデザインフィルは、みどり商会という社名でスタートしている。戦後間もない焼け野原の中でも雑草が元気よく生えているのを見て、その力強い生命力のように前を向いて歩んでいこうと”みどり”と名付けられた歴史がある。
その緑の芽が育って木になり、さらに森になったというイメージが今回の「デザインフィル フォレスト」。そのブースの入口のところに、まずこれを見て欲しい!と誇らしげに展示されていたのが「 Dainel(デネル)」というノートだ。
私もこれには目を奪われた。その鮮やかさは、派手というのとはちょっと違い、上品さというものがあった。表紙を触ってみるとフサフサとしていてちょうどベルベットのような優しさがある。この「Dainel」は、「ワールド マイスターズ プロダクト」というシリーズのひとつ。
世界と日本の素材や技を融合させるというコンセプトだ。「 Dainel 」の表紙にはフランス製の素材が使われている。もともとは化粧品パッケージなどで使われている人工のスウェード調のレザーペーパー。ちなみに、「Dinel」とは、フランス語で「スウェード」という意味。人工とは言え、かなり高級なものだという。この素材はほどほどに柔らかくページもめくりやすい。表紙を開くと、一番初めには扉ページがある。
「Dainel」のロゴ、そしてノートのインデックスを書き込めスペースだ。さすがに表紙のフサフサしたところにはタイトルが書けないので、この扉に書くことになる。中の紙は書き味にこだわった日本製のMD(ミドリダイアリー) 用紙のクリーム。罫線の色は、ブルーブラックを少しばかり薄めにしたもので、クリームのMD 用紙によく似合っている。
このスウェード調の表紙なら革の手帳と一緒に持っても似合いそうだ。ノートが紙の表紙だと、革の手帳と一緒に持った時にややアンバランスになってしまう。本物のスウェードではないものの、「 Dainel 」の上質なカバーなら革手帳ともしっくりとなじむ。
「ワールド マイスターズ プロダクト」として、もう一つノートが発表されていた。「 Santina(サンティナ)」というものだ。
こちらはオランダ製の素材を表紙にまとっている。手にすると先ほどのフサフサとはうって変わって、ラバーのようなマットな質感。そのカバーもさることながら、注目は小口の部分。
カバーの色に合わせて、小口がキレイに塗り上げられている。あまりにきっちりと塗られているので、ノートというよりも一つの塊のようだ。この小口の1ヶ所だけ商品名の「 Santina 」というロゴがある。
ちなみに、このフォントは、オランダのスキポール空港の案内看板に使われているフォントだという。この小口のロゴは 速乾性に優れたインクを使用しており、インクが一枚一枚の紙のエッジ部分だけにとどまってくれる。たしかに紙をペラペラめくっても、筆記紙面側にはその小口の色が一切及んでいない。
こちらも MD 用紙(ホワイト)を使用している。先程の「 Dainel 」の横罫線に対して「 Santina 」は、5mm 方眼紙面になっている。
そして、こちらが「付せん紙 3D」。
3Dといっても飛び出してくるというものではない。これまで付箋は平面のものだったが、これは立体になっている。使い方は中央にメッセージを書き込み、クルッと丸めてスリット同士を差し込んで固定する。
底面が貼ってはがせる粘着面になっていて、机の上などに固定できるようになる。担当の方によると、たとえば結婚式の席に添えるメッセージなどの使用シーンをイメージしているという。
また、ラッピングしたギフトのリボン代わりにする、というのもいいかもしれない。立体的ということでひと味違うメッセージになる。フィルムタイプとは組み立て方はちょっと違うが紙タイプもある。
発売から51周年を迎えるダイヤメモ。そのプレミアム版が発表されていた。
シックなブラウンに「Diamond memo」のロゴがゴールドプリントされ、リングまでゴールド仕様になっている。このブラウンの表紙に合わせて、中の紙は MD 用紙のクリームを使用。
5行ごとに太線というダイヤメモ十八番のフォーマットは残しつつ、ブラウンの罫線にし、紙面もプレミアム感タップリ。
そして、これは「ペンホルダーバンド」。
ノートや手帳に取りつけるノートバンドでありながら、ペンホルダーにもなるというものだ。こうした商品はこれまで他社も含めていろいろなものが出されている。そうした中でこれは素材使いがちょっとユニーク。クニャクニャとしたシリコンで出来ている。全体は同じシリコンで作られているのだが、実はノートバンドと、ホルダー部分で微妙にその硬さが違っている。
ノートバンドのところは、まさにこれが正しいシリコンといった感じでクニャクニャとやわらかい。一方、ペンホルダーのところは、ちょっと硬め。
一体成形品でありながら、それぞれで硬さが違っている。ペンの付け外しも結構快適に行えた。
今回の文具大賞ではデザイン部門 優秀賞に選ばれていた「インデックスクリップ」。クリップとは言え、これは素材が紙。この紙は、ファイバー紙製で、並み外れた強度を持っている。
溶接のマスクや剣道の胴などにも使われている特殊素材。なので、紙なのにしっかりと留められる。あまりに頑丈な紙なので、作る時がちょっと大変で、金属を切る型を用いなくてはならないほどだという。アヒルやイルカといった見た目にはかわいい姿だが、力強さを内に秘めている。
次ページにつづく >>