文具で楽しいひととき
岡村製作所
コンテッサ
今年の春、小学校に入学する息子の椅子を買いに家の近くの家具屋さんに行った時のこと。気になる椅子を見つけた。といっても息子の椅子ではなく、私用の椅子。座ってみたり、色々といじっていたらいい鴨見つけた、と言わんばかりに店員さんがニコニコしながらこっちに近づいてきた。
説明を聞けば、私の大好きなジウジアーロのデザインだと言う。直感的にいいと思っていたのに加え、憧れのジウジアーロデザインということがわかってこの椅子への想いは頂点に達してしまった。そんな中、息子に「今日は僕の椅子を買いに来たんでしょ!」と言われ、思いっきり後ろ髪を引かれつつ、その場を後にすることになった。。。
コンテッサとの劇的な出会いはこんな感じで始まったのだった。それ以降も、私はまるでクリスマス前の浮かれた子供の様に、「今、欲しいものはジウジアーロデザインの椅子」と、ことあるごとに妻にアピールしていた。こうして妻の潜在意識に植えつけていく作業を着々と進めていった。それから、半年くらい過ぎただろうか。ちょっとしたお祝い事があって、なんと妻がプレゼントをしてくれることになった。まさに、天にも昇る気持ちだった。
今回は、私が最近手に入れることができたコンテッサをお届けします。ジウジアーロ氏をご存知ない方のために、簡単にご紹介しておくと、イタリア出身のインダストリアルデザイナーである。代表作としては、アルファロメオ ジュリアスプリントGT、いすゞ117クーペやフィアットパンダなど数々の今も語りづかれている車がある。
車以外にもニコンF3のカメラやセイコーの腕時計などもあり、幅広いジャンルで活躍をされている。見るものの感性に直接訴えかけてくるデザインは、時を経ても色あせることはなく、逆に輝きが増してくるようにさえ感じる。この椅子のデザインの中で、私がもっとも引かれたのはメインフレームのフォルムだ。
■ 美しい後姿
背もたれから、座面につながるそのラインはまるで人間の骨のようにグラマラスな曲線を描いている。私は、このラインにいちころになってしまった。ジウジアーロのデザインの車は正面から見ても格好いいのだが、実は、右斜め後ろから眺めたデザインもまたいい。
このコンテッサにもその流れは脈々と流れているようでうしろから眺めると、先ほどの骨を思わせるメインフレームがとても強調されている。椅子の構造材であるメインフレームをあえてむき出しにしながらも逆にそれをデザインのポイントにしてしまっている。
椅子というものは、正面から見ることよりも後ろから見るほうが多いので、こうしたデザインアプローチはさすがと言わざるを得ない。
私は、背もたれと座面にはメッシュ素材を選んだ。メッシュでありながら座ってみると、意外にも固めな感じがした。これくらい固めな感じの方が、長く座っても疲れないようだ。座面はメッシュ素材だけだが、80kg近い私の体重をなんなく受け止めてくれる。とてもしっかりとしたメッシュ素材が使われている。
一方、背もたれの方は、メッシュの裏側におむすびのような小さなクッションがある。深く寄りかかったり、リクライニングした時に、しっかりと腰を受けとてめてくれる。しかも、このおむすびは、上下に調整可能なので、ジャストフィットの座り心地に設定できる。
■ 肘掛けで操作
操作面でも、うれしいこだわりがある。座わると、手は、当然肘掛けにくる。その肘掛の裏側には、レバーがついている。
肘掛けに手を掛けながら、操作ができるのだ。左のレバーでは、リクライニングの調整ができる。カチッと1回押すと、リクライニングが固定される。もう一度、押せば、ロックが解除される。
リクライニングしながら、カチッと押せばその位置で背もたれが固定できたりする。もう一方の右側のレバーは、座面の高さ調整のためだ。頻繁に使うこうした操作を、座ったままの状態でスマートにこなせる訳だ。カチッ、 カチッとレバーを操作するアクションは、アルファロメオに搭載されているハンドルの裏側に付いているセレスピードと言われるギアーレバーを彷彿とさせる。まことに、心にくい演出だ。
椅子に座るという時は、本を読んだり、原稿を書いたりと、何かをするために座るものだが、このコンテッサは何もしなくてもコンテッサに座るということだけで確かな満足感が得られる。そんな想いを抱かせてくれる素敵な椅子だと思う。
■ 使い続けて10年目(追記 2015年12月8日)
私が酷使したせいなのか、アームレストがこすれてひび割れてきてしまいました。。
オカムラ コンテッサ
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