文具で楽しいひととき
おそらく、男性の方ならきっと共感して頂けると思うが、男性が使える一筆箋というのが意外と少ない。一筆箋売り場に足を運ぶと華やかな柄や模様がちりばめられているものばかり。そうした女子コーナーで男が一人品定めをするというのはなんとも居心地が悪いものがある。
だから、いち早く決めてその場を立ち去るかあるいは、「え~と、どれって言ってたっけ。。。」などとつぶやきながら妻に頼まれて私はここで選んでいるという雰囲気を醸し出さなければならない。
いずれにせよ落ち着いて選んでいられない。男性だって一筆箋を使いたいのに選択肢が狭すぎる。
そもそも男は筆無精と思われているからだろうか。たしかにそれも一理あるかもしれない。私もれっきとした筆無精だ。だからこそ簡単に書ける一筆箋の存在はとても助かる。
もし「メンズ一筆箋」というカテゴリーができてそうした売り場があれば、私以外にも喜ぶ男性は多いと思うのだけど。。。そうした女性中心の一筆箋の中をかき分けて探しだし現在、私が使っているものがいくつかある。それぞれで使う万年筆も違うのであわせてご紹介してみたいと思う。
■ ユルリク NOTEPAD Section
表紙を見ればおわかりのとおりベースになっているのはツバメノート。紙面は窓枠のように囲われその中に5mm方眼がおとなしく敷きつめられている。この紙面の印刷は、活版印刷だという。
私がこの一筆箋にあわせているのがパイロット レグノ89Sという万年筆。ペン先はF(細字)だ。
私はこの一筆箋に向かうときこの5mm方眼の1マスの高さを意識しながら書いていく。1マスに一文字ずつ書くということはせず、あくまでも高さを意識するだけ。このレグノの細字だと5mm方眼の高さにちょうどよい。文字がつぶれてしまうということもなくバランスよく書いていける。
いつも原稿書きではBなど太字を手にするが、こと一筆箋については細字を使うことが多い。B5サイズを1/3にしたくらいの限られた紙面に自分のメッセージをきちっと収めていくにはなんとなく細字の方がしっくりとくるような気がする。それと細字の方が印象的にも控えめ感じになる。(気がする・・・)
そうそう、私はこうした市販の一筆箋の右上にオリジナルでこしらえたエンボスを一枚一枚手作業で入れている。ちょっとだけ特別感が演出できる。
■ ユルリク NOTEPAD Plain
先ほどのものと同じシリーズで、こちらは窓枠の中が真っ白。
しかも、その枠が落ち着いたブルー。この一筆箋にはパイロット カスタム743のフォルカンを使っている。
字幅としては細字に属するくらいだろうか。ペン先の両側が急激なダイエットでもしたかのようにげっそりとえぐれている。
これにより書いたときにペン先のしなりがたっぷりと味わえる。基本は細い文字が書いてけるが、少々力を入れると字幅がやや太くもなる。つまり、細いながらも表情豊かな筆跡を生み出すことができる。それと、書いてきて気付いたことなのだが、私が入れているパイロットの純正ブルーインクと一筆箋の窓枠に使われているブルーの相性がとてもいい。
いずれも少し落ち着いたブルーで収まりがとてもよい。
■ ユルリク NOTEPAD Ruled
同じシリーズで今度は横罫線。この罫線がちょっと独特な黄色をしている。
さて、これにはどの万年筆をあわせたらいいか悩んでしまった。フォルカンを使いたいところだったが、ブルーインクで書くと、目がチカチカとしてしまう。そこで、これにはグレーインクをあわせることにした。セーラー万年筆 キングプロフィット(中字)にナガサワ文具センター オリジナルの長田ブルーを入れている。
ブルーとは言っているが、限りなく黒に近いグレー。鉄のグレーをイメージしたそうだ。
これで書くとチカチカはグッと抑えられる。
■ TS(MDS) 言の葉(ことのは)
実は、「メンズ一筆箋」を探しはじめて最初に使うようになったのがこの一筆箋。紙面は、1cmほどのゆったりとした方眼。
そのゆったり加減が半端ではなく一本一本の線が所々はかなく途切れ水面をおもわせるようにユラユラとしている。私は、この一筆箋を使うようになって自分の文字が好きになれた。以前は、自分のきたない文字を見るたびもっと上手に書ければいいのに、と不満ばかり感じていた。
しかし、このユラユラ罫線に書いたところ自分の文字も、これはこれでなかなかいいじゃないかと思えるようになった。私のきたない文字をユラユラとした線が優しく包み込んでくれているように感じられた。
ゆらぎがちな私の文字とユラユラ方眼が妙にマッチしたからなのだろう。この一筆箋にはペリカンのM800 B(太字)を使っている。
もちろん、フォルカンの細字でもいいが、これには私自身が控えめモードというよりも
自分の文字に少々自信が持てるので、調子にのって力強いBにしている。
こうした字幅選びは理屈というよりもただただ感覚的なものによるところが多かったりする。
■ 満寿屋 原稿用紙 ハガキサイズ
400字詰め原稿用紙のハーフサイズを古風な飾りでデザインしたものだ。ハガキサイズとコンパクトなので一筆箋としても便利に使える。
原稿用紙なので、本来は縦書きをするのだろうけど、私は根っからの横書き派なので、ここに書く時も横書きにしている。
これにはパイロット レグノ89Sの細字。フォルカンと同じ細字系だがレグノの方が少しばかり細く書いていける点がちょうどよい。やはりこれもマスの縦だけを意識して書くと文字が気持ちよく収まる。
一枚を書き上げるととても繊細なものに見えてくる。本来、自分の内面には繊細さがあるのかも・・・と勘違いをしてしまいそうなくらいの出来になる。
■ 自作エアメール一筆箋
エアメールとは、半透明で薄く、ふわりとした紙を使った便せん。
私はこれを1/3にカットして一筆箋として使っている。ここにはフォルカンで書いていくことが多い。
軽やかな半透明の紙に細く優しいフォルカンの筆跡がよくあう。いまにも自分で書いた文字がフワリと浮き上がってきそうな気がする。ちょうど「千と千尋の物語」のあのシーンのように。
■ 中村文具店 オリジナル「イツピツセン」
これはとってもユニークな一筆箋。1冊の中に色々な方眼紙やら原稿用紙などが綴じ込まれている。
これにもフォルカンをあわせている。
この半透明の方眼紙は万年筆のインクの乾きに少々時間がかかるという点があった。
■ ライフ 一筆箋 吸い取り紙付き
これは表紙に一目惚れして買ってしまった。もちろん、中の一筆箋もちゃんとしたメンズ仕様だ。紙面はいたってシンプルな白地に淡いグレーの横罫線。
これにはこの万年筆をあわせようという1本がしぼり切れていない。というのも太字、中字、細字の全てを受けとめてくれる懐の深さみたいなものがある。罫線と罫線の幅はゆったりとしているので太字でもって少々大きな文字を書いてもOK。一方、細字系でもバランスをくずさない。試しにフォルカンで書いてみた。
ゆったりとした罫線の中で伸びやかに書いていける。
正式なビジネスシーンはもちろんのこと、カジュアルシーンでも使える万能タイプ。「メンズ一筆箋」を手始めにひとつ、という方にはオススメだと思う。こんな感じで私は「メンズ一筆箋」を選んで使っている。ご紹介してきたようにひとくちに一筆箋と言っても色々な罫線がある。
この一筆箋にはこの万年筆を使う、などとやっているといつもあまり出番がない万年筆を手にする機会にもなったりして楽しいものがある。
■ 記事作成後記
満寿屋 ハガキサイズ原稿用紙とエアメール一筆箋の専用ケースを作ってみました。作り方は簡単でA4クリアファイルにそれぞれを入れてサイズにあわせてハサミでジョキジョキと切っていくだけ。増殖しがちなA4クリアファイルが有効活用できます。。。
□ ユルリクの各種NOTEPADはこちらで販売されています。
□ 満寿屋 原稿用紙 ハガキサイズ
□ ライフ一筆箋 吸取紙付き
□ パイロット 万年筆 レグノ89S 細字
□ パイロット カスタム743 フォルカン
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