文具で楽しいひととき

■ その91 「ボディの中央が絞られたペン」 ヴァルドマン セトラ 水性ボールペン 14,700円
                                            


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


□だれしも、おいしそうな料理を見ると、食欲が駆り立てられるものだ。

 ペンにおいても、ペンショップなどでショーケースの中に並んでいるのを
 眺めていると、「これは、書いてみたい」と思えるペンがある。

 どうして、そう思うかは、それはもう、なんとなくとか、直感としか言いようがない。

 そんな、見ているだけで書いてみたくなる食欲ならぬ「筆欲」がそそられるペン、
 ヴァルドマンのセトラを取り上げてみたい。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


□この特徴はなんといっても、ボディの中央がキュッと絞られたデザインだ。
 
 自分のボディも、こんなにスリムならと思ってしまう
 なんとも、うらやましいスタイルをしている。

 そのボディには、スターリングシルバーが使われていることを示す
 「925」という刻印がクリップの横に奥ゆかしく刻みこまれている。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール

 
 この925は、純銀の含有率が92.5%であることを意味している。
 では、何故100%ではなく、92.5%かと言うと、
 100%の純銀では、柔らかすぎて、ペンなどの工業製品には
 向かないというこだそうだ。

 さすが、スターリングシルバーというだけあって、ステンレスにはない
 白っぽい独特な暖かみのある輝きを呈している。

 手にとって、しばらく書き続けていると手の体温がしだいにペンへと伝わっていき
 ほんわかとしたペンのぬくもりが今度は手にもどってくる。


□スターリングシルバーをまとったボディ全面には、
 格子状のカットが美しく刻まれている。
 ストライプ状の模様はよく見かけるが、こうした格子模様は
 珍しいように思う。

 スリムになったボディにこの格子状のカットが実にマッチしていて美しい。
 
 もともと、ヴァルドマンというブランドは貴金属作りが盛んな
 ドイツのシュヴァルツヴァルドという地方で創業し、
 貴金属細工のクラフトマンの技術を活かしたペン作りを行ってきた。
 なので、こうした彫金は、まさに得意とするところなのだろう。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


 その格子模様は、ボディの両端から中央に行くに従い、
 だんだんと小さくなっている。

 同じ大きさの格子を散りばめるのではなく、あえてこうした手法をとることで、
 ボディのスリムさが一段と強調されているように感じる。

 この格子模様は見た目ほどゴツゴツした感触はなく、
 手にすると滑らかな握り心地になっている。

 キュッと絞られたボディは、ペンの両端が大きく膨らんでいる分、重みも両端にある。
 ペン先側がいくぶん重くなっている、いわゆる低重心が書きやすいと思っていたが
 これはこれで、意外と書きやすいことに気づいた。

 それはどういうことかと言うと、
 ペン先側の重みと尻軸側の重みがほぼ同じくらいになっていて
 筆記をするときに、尻軸側の適度な重みが、まるで振り子のようになって
 ペン先を思いのほか軽快に操ることができるという訳だ。

 きっと、ボディの中央が絞られていることで、
 より振り子の原理が得られやすくなっているのだと思う。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


□ツイスト式のボディをクルリと回転させると、ペン先からは水性ボールペンが出てくる。

 水性ボールペンはペン先を出しっぱなしにしてしまうと
 インクがかすれてしまうことがあるので、キャップ式が多いのだが、
 このセトラはキャップなしになっている。

 きっと、ふつうのリフィルではないだろうと思い、調べてみると、
 そのリフィルには
 「one year cap off time」と書いてあった。
 1年間はキャップなしでも、書けるということなのだろう。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


 確かに、ペン先を出しっぱなしにしておいても
 書き始めから、かすれることなくスムーズにインクが出てきた。


  ヴァルドマン Waldmann セトラ 水性ボールペン ローラーボール


 このリフィルは、パーカータイプと言われる一般的なリフィルの形状が
 採用されている。このタイプを採用しているペンはパーカー以外にも
 大変多いので、ちょっと邪道かもしれないが
 他のペンに入れて使ってみるといったリフィル単体で楽しむことも
 出来そうだ。



□筆欲をそそられ、このセトラを思う存分書いているのだが、
 食欲のように、もうお腹がいっぱいとはならず、
 際限なく書き続けていたくなるのであった。



(2005年10月11日作成)


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