文具で楽しいひととき
■ 「台湾文具の旅 2014 レポート」      ■■


■ 「世界でもっとも美しい書店」にも選ばれたVVG something


 


 せっかく台湾に来たので
 手帳総選挙の合間を縫って地元のショップ巡りも楽しんできた。

 台湾に行ったら
 まずここを訪れようと決めていたのが
 「VVG something」。

 「VVG」とはvery very good という意味。

 まさに、とってもとっても素敵なショップだった。

 基本は本屋さん、
 ただ店構えは全くそんなそぶりがしない。

 まるでアンティーク雑貨店のよう。

 このショップのことは
 編集者から教えてもらっていた。

 というのも、
 ここには私の本「文具の流儀」が置いてあるのだ。

 「世界で最も美しい書店 20店」にも選ばれているショップに
 本を置いていただけるなんて
 実に光栄なことだ。

 店内に入ると
 奥に繋がる長いテーブルがあり
 その上に本が平積みされている。

 料理の本、デザインの本など
 ジャンルごとに山が出来ていた。


 

 


 一見雑然としているが、
 見えない糸でピーンとつながっているかのようで
 しっかりとした統一感があった。

 その本を並べたテーブルの両側の壁側には
 ステーショナリー、食器、ドアノブやフックなどの
 金具類などがある。

 新品なのか、はたしてアンティークなのか
 わからないが、それがまた面白い。


 


 事務所のドアにちょうど良さそうな
 メタル製のナンバーと、
 マニラフォルダーをとめておくと素敵そうな
 洗濯ばさみを買った。


 


 会計をする時に
 思い切って「文具の流儀」のお礼をお伝えしてみた。

 「え!これ、あなたが書いた本なの?!」と
 とても喜んでくれた。


 


 この本は、どこから仕入れたんですか?と聞いてみた。

 というのも
 この本は台湾語に翻訳されている訳ではなく
 日本語のままで販売されていた。

 スタッフの方によると
 台湾の出版社から仕入れたとのことだった。

 たしかに、
 私の本以外にも日本語の本が結構並んでいた。

 本にサインをして欲しいと頼まれ、
 喜んで!と
 鞄から万年筆を出して書かせていただいた。


 


 VVG somethingのお店のある一角には
 同じ系列のカフェ、レストラン、ソーイング用品などを集めたショップなどが
 軒を連ねていた。


 


 地下鉄MRT「忠孝敦化」駅から徒歩で5分ほどの
 路地に入ったところにひっそりとある。


■ Plain STATIONERY & HOMEWARE


 


 地下鉄MRTの台電大楼駅の一番出口を出て
 180度クルリと向きを変え
 大きな交差点を右折して渡って、最初の路地を右に入る。


 

 


 以下写真の小さな緑色の看板が見えたら左折。


 


 すると、虹色の旗が右手に見えてくる。


 


 ちなみに
 この虹色の旗は
 セクシャル・マイノリティの象徴とも言われているそうだ。

 その旗に挟まれるようにあるのが
 「Plain STATIONERY & HOMEWARE」。


 


 「文具病」という文具ブログで
 20,000名を超えるフォロワーを持つ、
 Tiger Shenさんが2014年にオープンしたショップだ。

 数年前に日本の文具イベントでお会いして以来
 仲良くさせて頂いている。

 通常は14:00からのオープンのところを
 特別に午前中から開けていただき
 貸し切り状態で店内を堪能させていただいた。

 古きよきアメリカを感じさせる
 ショップのサインが出迎えてくれる。


 


 このサインを見ただけで
 このショップには何かがある!と
 思わせるものがある。

 視線を左に向けると、
 右手でペンを持った突き出し看板もあった。


 


 裏側から見てみると 
 ちゃんと反対側も描かれていた。


 


 近くには台湾大学があり、
 学生もお店の常連さんだという。

 学生の間では、
 この看板のペン先を触ると
 テストがうまくいくという噂が広まり、
 1年足らずで、すでにペンの塗装がはげ、
 錆びはじめていた。

 地元の人たちに
 すっかりと愛されているようだ。

 店内に入る前に
 もうひとつ目にとまったものがあった。

 ボールペンがディスプレイされた
 なにやら不思議なメタル製の箱。


 


 Shenさんによると
 これはアメリカのアンティークの
 ボールペン自動販売機だという。

 ちなみに、
 これは非売品。

 
□店内に足を踏み入れると
 決して広くはない空間だが、
 そこにはShenさんの目で選び抜かれた
 ステーショナリーを中心とする様々なアイテムが
 静かに、それでいて活き活きと並んでいた。


 

 

 

 


 ショップのコンセプトは、
 使いやすい文具だけを集めるというもの。

 Shenさん自身、派手なものは好きではない。

 何年経っても流行に左右されず
 ずっと使い続けられるものだけをセレクトしている。

 そのコンセプトを代表するアイテムとして
 プラチナ万年筆の「プレスマン」、
 ぺんてるの「ケリー」をShenさんはあげた。


 


 まさに2本とも時代に流されず
 今も愛され続けているペンだ。

 アメリカやヨーロッパのものもあるが、
 かなりの割合で日本文具が占めていた。

 おそらく店内の半分くらいは
 私も知っているものなのだが、
 不思議と新鮮な印象を受けた。

 たぶんそれは
 ディスプレイの工夫のせいなのだろう。

 店内には
 メーカーから支給される什器はひとつもなく、
 ウッド製の棚などで構成されている。

 たとえば、
 鉛筆が美しく収まった木製の
 ディスプレイケースがあった。


 


 内側が小分けされているが、
 その寸法が新品の鉛筆ピッタリになっていた。

 そのあまりのピッタリ加減に不思議に思い、
 聞いてみると、
 これはShenさんによる手作りだという。

 これ以外にも
 カランダッシュのフタ付きボックス、
 そしてギザギザに加工されたペントレーなども
 Shenさんの手作りディスプレイだ。


 

 


 全体に感じる統一感は
 こうした細部にわたるこだわりのためだったのだ。

 先ほどメーカー什器はないと言ったが、
 厳密には少しだけある。

 それは、はるか昔のアンティーク什器だ。

 たとえば、
 アメリカの鉛筆ブランド「ヴィーナス」の木製什器。


 


 これはイーベイで落札したものだという。

 硬度別に収納スペースが
 細かく分けられている。

 その硬度の中で
 見慣れない「t4」、「t3」、「t2」、「t1」というものがあった。


 


 これはトレーシングペーパーに
 書き込むためのものだそうだ。
 (残念ながら、鉛筆も含めてこちらも非売品)


□ガラスショーケースには、
 見かけたことがない淡いブルーの
 カランダッシュ849ボールペンがあった。


 


 これは、台湾限定タイプだという。

 Shenさんによると、
 台湾の野党のカラーはグリーン、
 そして与党はブルー。

 その中間的な淡いブルーを表しているのだという。


□Shenさんは、かねてより
 こうした自分でセレクトしたショップを
 持ちたいと考えていた。

 ただ、いきなりショップを開店したところで
 きっと失敗してしまうだろうという思いがあった。 

 そこでまず、
 ブログで情報発信を行い、
 その上でショップをオープンさせる計画を立てた。

 そして、
 2009年に「文具病」をスタートさせた。

 その当時
 台湾でも文具を好きな人たちは、
 すでにたくさんいた。
 
 しかし、
 ほとんどの人たちはキャラクターなどの
 いわゆるカワイイ系のものばかりに注目していた。

 文具は見た目だけでなく、
 中身が重要だと
 Shenさんは以前から感じていた。

 そうした文具の中身を
 じっくりと紹介しようと「文具病」で
 ひとつひとつの文具を取り上げていった。

 スタートしたばかりの頃は
 読者の反応はほとんどなかったという。
 
 それでも更新を続けていくと
 少しずつShenさんの文具に対する考えに
 共感してくれる人たちが増えていき、
 20,000万名を超えるフォロワーを持つまでになっていった。

 そして、
 満を持してショップをオープンさせた。

 Shenさんの文具に対する
 熱く真摯な思いがつめ込まれたショップ、
 台北に行く機会があったら、
 ぜひ立ち寄ってみてほしい。

 いつも見慣れた日本文具が
 違う表情で店頭に並んでいるのを
 見ることができるはずだ。


□私が買ったものは、
 パイロットのまっ白なボールペン、
 「PALOMINO」の鉛筆 2B、
 そしてBICYCLEのロボット柄のトランプ。


 

 


 包装紙にもShenさんの楽しい工夫がある。


 


 溶けはじめている氷の上にいるシロクマの隣では
 鉛筆が新しい氷を描いている。

 もうひとつは、
 原発を消している消しゴムの絵。


 
   Shenさん、そしてショップを担当している奥様と共に


■ 素朴な紙製品が集まった「品墨良行」


 


 Shenさんのオススメショップを
 いくつか案内して頂いた。

 その一つが永康街エリアにある「品墨良行」。


 


 店内には
 オリジナルのノートや手帳、メモなどが
 所狭しと並んでいた。


 

 


 少々ザラザラとした風合いの素朴な紙が使われている。

 地下には、
 「紙的工作室」となっており、
 ここでは自分の好きな紙を選んで
 中綴じのノートを作ることができる。


 


 中央には作業スペースがあり
 作業は各自が行うことになっているという。

 壁という壁には様々な紙が収まっていた。

 紙好きには楽園のような空間だ。


□このショップで私が買ったのは、横長のメモ。


 


 表面がザラザラとしていて
 裏面はツルツルしていた。

 罫線などないシンプルな無地紙面なので
 ミニ一筆箋にいいかもと購入した。

 万年筆の書き味はどうだろうと思っていると
 スタッフの方が試し書き用紙を差し出してくれた。

 にじみ、裏抜けはなく良好だった。


□もうひとつは
 装丁する前の様なまるはだかのノート。


 


 表紙もなく、ただただ本文紙だけで出来ている。

 糸かがり綴じ製本もそのまま
 目で見て、直接手にふれることもできるむき出し状態。


 


 表紙がない分、見開き性がすこぶるいい。



■取材後記


□金石堂のイベント会場に併設されたカフェ。

 一角のテーブルが日本手帖の会 台湾支部状態になっていた。

 例の一件から立ち直って
 すっかり元気を取り戻した間辺事務局長。


  


 今回の台湾でのイベントをとりまとめていただいたチェンさん。

 チェンさんも台湾で手帳を何冊も出されている。


   


□地下鉄MRTの券売機。

 20台湾ドルで、かなりのエリアまで行ける。

 お金を入れるとキップではなく、
 プラスチック製のコイン(トークン)が出てくる。
 これを改札でタッチして、出るときに回収される。


  


□間辺事務局長と金石堂の楊社長。


 


□Tiger Shenさんご夫妻と共にランチ。

 前菜は、ガラスケースに入っていて
 店員さんにコレとコレくださいとお願いするシステム。


  


□町中でよく見かけるオレンジの自転車。

 この自転車は、30分間無料で使える。

 町中には専用のスタンドが結構あった。


 


□台湾ショップ巡りをご一緒いただいた
 日本手帖の会 西日本支部の北川さん。(スターフルーツを撮影中)


 


□品墨良行のショップカードは、型抜きになっていた。


 


□華山文化園というアートギャラリーのエリアにあったショップ VVG thinking。
 VVG somethingよりもかなり大きな売り場だった。


 


 VVG thinkingで見かけたボディがコンクリートで作られたペン。
 台湾のデザイナーによるものだという。

 見た目どうりの少々ザラザラとした
 握り心地だった。


  


□みんなで食事に行く途中に地下鉄車内で記念撮影。。

 ちなみに
 台湾の地下鉄車内では飲食が禁止されている。

 そのせいか、
 車内がとてもキレイだった。


 


□台湾名物の夜市に連れていって頂いた。
 いろんな食事がその場で作られ、売られている。

 いろんな食事のにおいが渾然一体となっていた。
 懐かしいゲームもあったり。。


  

  


 現地の大学生通訳の方々に連れて行っていただいた
 若者に人気のスイーツショップ。

 右側のスイーツは豆腐が入っていた。

 杏仁豆腐ではなく、後味がしっかり豆腐だったのがユニークだった。


  


□台北には、和民や白木屋など日本の居酒屋も結構あった。
 滞在中の2次会はいつもこうした居酒屋さんだった。

 深夜になると、絶好調になる間辺事務局長。


 


 (2015年1月20日作成)

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 ■ 日本手帖の会

 ■ 金石堂

 ■ VVG

 ■ Tiger Shenさんの Plain Stationery & Homeware

 ■ 品墨良行


* 関連コラム

 ■ 「ペーパーワールド2013レポート」

 ■ 「ペーパーワールド・チャイナ2013 レポート!」




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