■ 「繊細さも併せ持ったキングサイズ」
セーラー万年筆 プロフェッショナルギア 銀万年筆 キング・オブ・ペン(KOPモデル) 63,000円
□私はセーラー社の万年筆を初めて持ったのが、
プロフェッショナルギアだった。
数年前、雑誌「ラピタ」の万年筆特集で、
国産万年筆32本を一気に試し書きさせていただくという機会に恵まれ、
色々と思う存分書かせていただいた。
そうした中で、当時私の手にピタリとくる一本がプロギアだった。
これはあくまでも私の主観でしかないのだが。
というのもその中には、
漆塗りのものなど高額で魅力的なものはいくらでもあった。
そんな中プロフェッショナルギアが、
なぜか私の手にピンとくるものがあったのだ。
その企画では32本もの万年筆試し書きするだけでなく
それぞれに合う紙との相性をレポートするというもので、
それこそ朝から深夜遅くまでひたすら
書き続けるというものだった。
続けざまにたくさんの万年筆を書いてので、
私の手は少々疲れていたのかもしれない。
そうした時に、
ふと手にしたプロフェッショナルギアのペン先のタッチのやわらかさが
私の疲れた手と心を癒してくれたのをとてもよく覚えている。
と言うわけで、私の中でとても印象に残った万年筆であった。
以来、プロフェッショナルギアのレギュラーサイズ
そして、スリムミニまで手に入れて、
プロフェッショナルギア三昧な日々を送ることになった。
そして、ついこの間セーラーの方から
こんどプロフェッショナルギアのキングサイズが発売されたというお知らせがあり、
一つ試させていただくことになった。
□セーラーには、すでに「キング」と呼ばれる万年筆がある。
「キングプロフィット」だ。
王様のように大きな存在の万年筆である。
そして、
今回のものにも「キング」という名がつけられている。
ひとつの国には、王様は一人だけであるものだが、
こうして2つの王様がいてもいいのだろうかと、
個人的にはやや気になる。
なお、この商品名には「KOP」とあるが、
これは、お察しのとおり「キング・オブ・ペン」の略。
「プロフェッショナルギア」もそだが、
同社の商品名は比較的長いものが多い。
そこで、さらに長くなってはいけないと、
頭文字にしたのだそうだ。
□さて、
まずはプロギア キングサイズ(以下、プロギア キングと呼ぶ)
の大きさから見てみよう。
プロギアのスリムミニ、レギュラーサイズ、
そしてこのキングサイズを並べて比較してみた。
【 左から スリムミニ、レギュラー、キング 】
すると子供の成長記録をいっぺんに見ているような、
きれいな階段のようになっている。
まさに「プロギア三兄弟」といった感じだ。
いや、待てよ。
これは「三兄弟」というのとはちょっと違うかもしれない。
キングは長男というよりかは、むしろお父さんと言うべきではないだろか。
なぜ、そう思ったかと言うと
プロギア キングだけボディ中央のリングが
ひときわ太く立派に仕立て上げられているからだ。
改めてそういう目でこれら3本を見てみると、
長男、次男を従えている
風格漂う家長である父といった重々しい印象がある。
□そのプロギア キングを手にしてみる。
ムム、思っていてよりも、これは重みがある。
といっても重すぎるという程ではない。
そもそもプロギアのレギュラーサイズは
その大きさの割には軽い印象があったので、
私の手がそのプロギアモードになっていたのだろう。
そんな私の手には、ややズシリときた。
しかし、これくらいの大きさの他の万年筆なら、
取り立てて重いという感じではない。
あくまでもレギュラーサイズに比べて、ということである。
□キャップを3回転弱程回し、キャップをそぉっと外し、
ペン先とご対面。
一言、
これは大きい。
おそらく、キングプロフィットと同じペン先サイズのようだ。
ペン先の「1911」と「イカリ」のマークがいつもよりも、
大きくはっきりと拝むことができる。
プロギアのレギュラーサイズのシルバーモデルは
ペン先のベースがシルバーで1ヶ所だけゴールドというコンビになっていたが、
このプロギア キングの銀万年筆はすべてシルバー仕様。
【 左から スリムミニ、レギュラー、キング 】
これはこれで奥ゆかしくて私は好きだ。
ちなみに、このプロギア キングには
「金万年筆」というタイプもある。
こちらはペン先をはじめクリップなどのすべての金属部分が
24金メッキ仕上げになっている。
□キャップを尻軸に「カプリ」と差し込み、
筆記体勢に入らせていただく。
ここで気づいたのだが、
ボディの軸径がたっぷりとふくよかであるのを強く感じた。
プロギアのレギュラーもよくよく見てみると、
軸の幅がふっくらとふくよかになっている。
プロギア キングの方がそのふくよかさが一層強調されている。
比較的大きめな私の手でも男性が手にしても、
これは太めだとしっかりと感じられた。
このグリップは車で言えば、ハンドルに相当する部分。
つまり、万年筆を操るコントール装置である。
先ほどの大きなペン先を操るのに相応しい太さといったと言える。
□さぁ、いよいよ書いてみる。
今回はロディアを取り出し、その上にペン先をそっと添えて、書いてみる。
あのプロギア独特のソフトなタッチは、
しっかりと健在。というかより大きく健在。
やや力を入れて書くとペン先の細くなっている先端だけが
おおらかにしなる。
このタッチのやわらかさ、
例えていうなら、「真綿」のような印象。
これがセーラーがこだわっている21金ペン先のなせるワザなのだろう。
このやわらかさをより深く味わうには、
ペン先を置く紙が何十枚かの束になっている方がいい。
つまり、メモパッドであれ、ノートであれ残りのページがタップリとある状態。
ペン先そして、紙のクッションが仲良く手を結び、
「幸せなやわらかさ」を作り出してくれる。
ということで、
この万年筆はあんまり筆圧をかけるべきものではなさそうだ。
ボディの中程を優しい気持ちで持って包み込み、
そしてペンの重みだけを頼りにペン先を走らせる。
プロギア キングの程よい重みがうまく働き的確に文字を書くことができる。
こうして軽い筆圧で書いてもペン先のしなやかさは、もちろん堪能できる。
ゆったりとした心もちで書くことができる万年筆だ。
□今回、試させていただいたペン先は中字。
このボディの大きさにしてはやや細すぎるようにも、
当初感じていた。
しかし、以前にご紹介した太軸ボディでやや細めのペン先を操るというスタイルを
深く実感できる組あわせであった。
以前、キングプロフィット エアロを書かせていただいたことがあった。
先程もご紹介したようにこれは同じ大きなペン先を持ったものだ。
キング プロフィットの方は幾ら書いても、
大きな万年筆という印象はぬぐえなかった。
一方、このプロギア キングは、はじめこそ大きいとは思うものの
次第次第にその大きさはあまり気にならなくなっていた。
これは一体どうしてだろう。
きっとボディの上下がフラットになっていることが一つ影響しているのかもしれない。
実際には大きいのだが、書いていると段々それを感じなくなってくる。
■ 記事作成後記
*今回、この原稿をプロギア キングで書いてみました。
その中で、筆跡の中央が、ごくまれにかすれることが見られました。
特に、私は原稿を書く時にすごく早く書くもので、
その関係かもしれません。
この現象をよくよく分析してみますと、私の場合、
「か」や「ら」など、左上から右下にペン先を大急ぎで走らせた時にわずかに見られました。
しかし、そう頻発するものでもないので、気になるものでもありません。
なお、この件についてセーラー万年筆社の方にお聞きしてみました。
その方によりますと、
筆圧を強めに、そして早書きするということが重なった場合、
ごくまれにかすれが出る場合があるとのことでした。
また、今回の大きなペン先、そして21金ということで
通常以上に気持ちよくしなります。
それに伴い、ペン先に「開き」が生じることにもなり、
それによって、カスレが出てくることもあるそうです。
柔らかくしなるこのペン先ならではの味と
とらえてもよいかもしれませんね。
私は、上記原稿をプロギア キングを手にしてすぐに書き始めましたので
私の手がまだプロギア キングに慣れていなかったせいもあったと思います。
その後手にした時は、私の手はこのペンを快適的に書くモードを学習してくれたようで、
カスレは見られなくなりました。
つまり、優しい筆圧で持って書くと
この万年筆の魅力が最大限に引き出されるということですね。
(2009年5月19日作成)
■セーラー万年筆 プロフェッショナルギア キング(限定品)はこちらで手に入ります。
□ 関連リンク
■ 「国産万年筆を味わう」 セーラー万年筆 プロフェッショナルギア
■ 「サブ万年筆を持つ」 セーラー万年筆 プロフェショナルギア スリムミニ万年筆
■ 「今でも新品で手に入る、懐かしいたたずまいの万年筆」 パーカー45
■ 「美しい細字を書きたい。」 パイロット カスタム743 フォルカン
■ 「反りのあるペン先」 パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆
■ 「飲みっぷりのいい万年筆」 パイロット カスタム823 プランジャー
■ 「漆を堪能できる万年筆」 中屋万年筆 輪島漆塗り シガーモデル ロングサイズ
■ 「段のあるペン先」 ナミキ ファルコン 万年筆
■ 「校正専用として買った万年筆」 パイロット カスタム742 万年筆
■ 「日本語の美しさを味わえる万年筆」 セーラー万年筆 プロフィット21梨地 長刀研ぎ
■ 「自分だけの万年筆をあつらえる」 ペリカン スーベレーンM800 by フルハルター
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■ 「勝負万年筆」 モンブラン マイスターシュテュック 146
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