■ 「 一万円万年筆の魅力 」 プラチナ萬年筆 #3776 編 10,500円
□前々回のコラムでお届けした
「1万円 万年筆の魅力」を探るの第2弾。
一人で盛り上がっております。。
今回は、プラチナ萬年筆の#3776。
もちろん価格は10,500円也。
文具店の万年筆売り場に行くと
ガラスショーケースの中で、
この#3776のいろいろな字幅のタイプが
「小さく前ならえ!」をして並んでいる。
その姿は、私も何度も目にしたことはあったが、
こうして手に入れたのは
今回がはじめて。
もっと言ってしまうと、
お恥ずかしい話だが、
プラチナ萬年筆の金ペンの万年筆を買うのは今回がはじめて。
中屋万年筆のものは1本買ったことはあるけど、
プラチナさんとしては初めてということになる。
さてさて、
今回の#3776 万年筆は、
どんなコアな魅力を持っているのだろうか。
そこのところを
ひとつじっくりと味わってみようと思う。
□まずは、ボディから。
ボディ全体は、まっすぐにスッと伸びたラインが印象的。
私は書くためだけに生まれた万年筆です!という感じで。
逆に言うと取り立てて際立った飾りなどなく、
実直さというのがボディ全体からひしひし伝わってくる。
その中で唯一、
クリップの根元の部分だけがわずかにスリムになっている。
ボディの長さを
パイロットカスタム74と比べてみると、
#3776の方が5mm ほど短い。
ボディの軸径はほぼ同じなのだが、
こうして2本を並べてみると
ペンの全長が5mm と短い分
#3776の方が相対的に太軸な印象がある。
そうそう、
この#3776には、「バランス」という名前が付けられている。
中屋万年筆の方にお聞きしたところによると、
ボディの両端が丸く仕上げられているものを
俗に「バランス型」と呼び、
それに対して、両端がスパッとカットされてフラットになっているのを
「ベスト型」というのだとか。
□ペン先は14金のたっぷりとした大きさだ。
これを買う時にお聞きしてびっくりしたのが
私が以前購入した中屋万年筆のシガーモデルのペン先と
この#3776は同じ物が使われているという。
厳密には、
ペン先の刻印が違っているが、
ペン先そのものは同じものだという。
ちなみに、中屋万年筆のシガーモデルは、47,250円だった。
シガーモデルは漆塗りボディということもあるので、
単純に比較はできないが、
#3776はお買い得であると思う。
キャップを外して尻軸にさし込んでみると
結構深々と入っていく。
この状態で再びカスタマ74と比べると、
こんどは、その差は1cm。
# 3776は、よりショートサイズになる。
□この#3776のコアとなる本質的な良さは、
このペン先ということになるのではないだろうか。
メーカーとしては、
この上質なペン先を味わってもらうために
ボディは極力シンプルにしたのだろう。
そう考えると、
先ほど、私は
この#3776のボディのことを飾り気がないなどと
表現してしまったが、
今あらためて見てみると、
その実直な姿が一本筋が通ったものに感じられる。
「なんだ、そういうことだったのか、
それならそうと、もっと早く言ってくれたらいいのに、」と
思ってしまう。
そういうそぶりを見せないところが
また実直な感じで、好感が持てる。
このシンプルなボディは、とても軽快で
ペン先をコントロールする上では
むしろ扱いやすい。
名前にもあったようにバランスのよさというのがとても感じられる。
試しに同じペン先を持つ中屋のシガータイプと比べてみた。
ちなみに、
中屋のシガータイプは、ライターモデルと言い、
キャップを尻軸にささなずに書くタイプ。
長さは、すこしだけ中屋万年筆の方が短いくらい。
なるほど中屋万年筆の時のバランスのよさを
この#3776でも感じることが出来るようになっていたのだ。
□では、次に書き味を。
タップリとした大きさのペン先は適度なしなりが味わえる。
やわらかすぎず少し筆圧を強めた時だけ気持ちよくしなるという感じ。
今回も普通に気持ち良いという印象が手に残った。
この#3776で原稿を書いていて
フト気づいたのだが、
こうして文字を書くときは、ペン先だけをじっと見つめてという状態となる。
ひとたび
筆記体勢に入ってさえしまえば、
実直なボディは目に入らなくなってしまう。
先ほども言いましたが
私はこの実直なボディ嫌いじゃないですけどね。
【 私が手に入れたものは「太字」です。 】
□私は、この#3776には
プラチナのカートリッジインクを現在使っている。
このカートリッジがすぐれもの。
未使用の状態だと
カートリッジのふたの部分にステンレスボールがある。
これを万年筆ユニットにさすと
ボールがインクタンクの中に入っていく仕組み。
取説によると、
このボールがあることでボールがインクタンクの中を転がって
インクの送り出しがスムーズになるという。
それから、
これはインクの残量を確認するのにも最適。
ボディを振ると、
インクが満タンの状態だと音がしない。
それがだんだんとインクが減っていくと
「カランコロン」と音がしてくる。
ほとんどインクがなくなるとその音がより際立つ。
いちいちボディを分解しなくても、
振るだけでおおよそのインクの残量が分かってしまう。
□上質なペン先を使いながらも
価格を1万円に抑えられている今回の#3776。
ペン先という本質的な部分が、
より際だって感じることができた。
あれもこれもではなく、
「研ぎすまされ感」というものが
タップリと味わえる万年筆である。
これこそ、1万円 万年筆の魅力だと思う。
(2010年5月18日作成)
■ プラチナ萬年筆#3776万年筆はこちらで手に入ります。
□ 関連リンク
■ 「1万円 万年筆の魅力」 パイロットカスタム74編
■ 「漆を堪能できる万年筆」 中屋万年筆 輪島漆塗り シガーモデル ロングサイズ
■ 「ノート筆記用にあつらえた万年筆」 ペリカン スーベレーンM400 by フルハルター
■ 「美しい細字を書きたい。」 パイロット カスタム743 フォルカン
■ 「反りのあるペン先」 パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆
■ 「国産万年筆を味わう」 セーラー万年筆 プロフェッショナルギア