■ 「反りのあるペン先」 パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆 31,500円
□次に買いたい万年筆は? と聞かれれば、
私は迷うことなく、すぐさま数本の万年筆がアタマに鮮明に浮かぶ。
この手の引き出しだけは、自分でも感心してしまうほど多く、
しかも、ビシッと整理されている。
机の引き出しもこうだといいのですけどね。
そうした万年筆ではあるが、
私はそれらを次々に買うということをあえてしない。
そもそも、財力が物欲に追いつかないという根本的な問題はさておき、
万年筆を買うという一大イベントには、それに相応しい理由というものが
必要だと思っているから。
ここ最近の理由を挙げれば、
「40歳になったという記念に1本」
「大きな仕事が無事成功裏に終わった後に1本」
というそれなりの理由もあるが、
中には、「春が来たので一本。」なんていうのもあったりする。
つまりは、
万年筆を買うということを自分の中で正当化したいということなんですね。
折しも、先日
知人の文具店がリニューアルオープンした。
それを記念して、そのショップで万年筆を1本新調してみることにした。
□そして今回手に入れたのが、このパイロットカスタム743。
以前ご紹介した742よりもやや大きめなボディ、そしてペン先を備えている。
パイロットでは、F(細字)、M(中字)、B(太字)などの一般的なペン先の他、
特殊なものもラインナップされている。
ペン先の両端を半円状にカットした「フォルカン」やペン先を下に向けた「ポスティング」など、
個性的なものが多い。
色々なペン先がある中で、
今回の743には「ウェーバリー」というペン先を選んでみることにした。
□ペン先を見てみると、
肉眼でもしっかりと確認できるくらいに
ペン先が上にしなっている。
そのしなり具合があまり大げさでなく、実に自然で見ていて気持ちいい。
美しいとさえ思ってしまう。
本来まっすぐであるべきものがしなっているのに何故美しいと思うのか。
考えてみれば、まっすぐのものは、どちらかと言えば「正しい」と感じ、
緩やかな曲線をたたえたものを「美しい」と感じることが多いような気がする。
そういえば、インダストリアルデザイナーのルイジ・コラーニ氏は、
自然界には、直線は存在せず、全てが曲線だと言っている。
もともと自然界に存在するそうした曲線を見ると
人は落ち着くのかも知れない。
□さて、
こうした上を向いたペン先と言えば、
セーラー万年筆に「ふでDEまんねん」というものがある。
これは、その名前のように筆のような筆跡が書けるものだ。
今回のウェーバリーは、そうした特殊な文字ではなく、
ごくごく普通の線が書ける。
では何故、このようにペンをそらせているのだろうか。
これについて、パイロット社に問い合わせてみた。
それによると、
筆記時のペン先角度を問わずに、どのような方にも対応できるようにするためとのことだった。
実際に、色々な角度で書いてみた。
ボールペンを書くときのようにペン先を立てた時、
そして一般的な角度、さらには思いっきり寝かせると言う具合に。
それぞれの角度でも、ペン先が紙に進んでいくタッチは確かにそれほど変わらない。
さらに言えば、どの角度でも筆跡の太さにも、それほどの差は見られなかった。
なるほど、こういうことだったのか。
それから、これは個人的に感じたことだが
このペン先はどの方向に走らせてスムーズに進んでいくような印象があった。
左から右、上から下であれば、
一般のペン先でも全く問題はない。
しかし、下から上のようなペン先にとってはちょっとつらい
逆書きのような時でも、
この反りのあるペン先ならスムーズに走ってくれる。
ちょうど、先端が上を向いているスキーの板と、
思っていただければわかりやすいかも知れない。
□このウェーバリーの字幅にはM(中字)の一種類しか用意されていない。
書き味としては、このしなったペン先により
弾力のある柔らかな書き味楽しめる。
柔らかいとは言っても、ペン先のしなりをたっぷりと味わえるというタイプのペン先では
ないようだ。
と言うのも、ペン先はあらかじめしなっているので、
その分だけしなりの許容範囲と言うか、「しなりしろ」と言うべきか、
そうしたものがやや狭いからだろう。
そうした柔らかさよりも、むしろこのペン先ならではの味わいとして
感じたのが、
さぁ、これから書くぞ、と紙の上にペン先を置いたときの
タッチの優しさ。
ペン先が紙にあたるときの衝撃を弓なりのペン先が
ほどよく吸収してくれているように感じる。
優しい気分で書き始められる万年筆だと思う。
(2008年6月24日作成)
■ 私はこのパイロットカスタム743 ウェーバリーをアサヒヤ紙文具店さんで買いました。
■ アサヒヤ紙文具店さんの こちらのページでは、ウェーバリーで書いている動画をみることができます。
■ アサヒヤ紙文具店さんでは、プランジャー式カスタム823のウェーバリータイプも販売しています。
こちらのお店では、試し書き用のウェーバリーが用意されています。
特に店長の萩原さんが個人的にお使いのものは、とても書き味が良いです。
その書き味にイチコロになってしまいました。
私は、萩原さんにウェーバリーのペン先を私の好みの書き味に
微調整を施してもらいました。
ショップの地図 (文具で楽しいひととき モバイルサイト)
<関連リンク>
□ アサヒヤ紙文具店 リニューアル店舗のレポート記事(オールアバウト)
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