文具で楽しいひととき
■ 「万年筆の極細楽園」  パイロット カスタム743 EF(極細) 30,000円+Tax


 


□私が日頃よく使っている万年筆は
 太字系ばかり。

 その中に一つだけEF(極細)がある。

 それは原稿校正用の万年筆。


 


 パイロット カスタム742で、
 買ってからこのかた赤インクしか入れたことがない。


 


 もうかれこれ7年の付き合いになる。

 この極細万年筆の書き味が
 近頃とてもよくなってきた。

 当初はカリカリとしていたものが
 カリカリ加減が影を潜め、
 紙の上で滑らかに走っていく。

 たとえるなら
 つま先でスケートしているよう。

 以前、校正は
 イヤーな仕事のひとつだったが、
 今ではこの万年筆の書き味が楽しめるので
 進んで取り組む仕事になった。

 なにもこの「極細楽園」を
 赤インクの校正の時だけにしておくのは
 全くもってもったいない。

 青インクの時でも
 楽しんでみたい。

 そう思うようになった。

 そこで、
 普段使いできるちょっといい極細万年筆を
 買うことに決めた。

 善は急げとATMで念のため3万円少々を引き出し、
 それを握りしめ地元横浜の伊東屋さんへと向かった。

 
□これまで万年筆を買うときは
 予めどのモデルにするかは
 心に決めていた。

 しかし、
 今回はモデルは全く決まっておらず、
 ただただEF(極細)というスペックだけ。

 店に着き、店員さんに
 「国産万年筆の極細が欲しいのですが」と
 用件を簡潔にキッパリとお伝えした。

 このとき
 私からはあえてメーカー名やモデル名は
 なにも言わなかった。

 すると、店員さんも
 私のメラメラと燃えるEFへの熱い想いを
 感じ取ってくれたのか、
 「色々とお出ししてみますね」と
 次々にEF万年筆を試し書きができるように
 テキパキと準備をしてくれた。

 出していただいたのは、
 パイロット カスタム74、742、743、
 セーラー万年筆 プロフィットスタンダード、プロフィット21、
 プラチナ万年筆 #3776 センチュリー。

 自分の名前と住所をひたすら書き続け
 書き味の定点観測を行った。


 


 私の手によると
 この中で気になったのは
 パイロットのカスタム74と743の2本だという。

 校正用万年筆で愛用している
 742をあえてはずしたのは、
 私の手によると、こういうことらしい。

 校正はひたすら書き続けるよりも
 文字を読み、間違いがあった時だけ
 書き込んでいく。

 求められるのは、
 必要な時にさっと書き出す「瞬発力」。

 そのため少々硬めの742のペン先の方が
 この用途にはいいという。

 しかし、
 今回は校正ではなく、
 原稿を書いたり、一筆箋に書いたりと
 ある程度の文章を書くという用途。

 求められるのは、
 自然に流れるような書き味。

 ほんの少しだけやわらかさがあった方がいい。

 あまりにやわらかすぎるのは
 心地よすぎて自然に書いていける自信がない。

 そうしたバランスの点で
 74と743がちょうどよかったという。


□74は742よりもペン先が小さいが、
 書いた印象がとてもよかった。

 実は、この時私が書いていた74は
 店頭で長らく試し書き専用万年筆として
 使われ続けてきたものだという。

 そのためだろうか、
 ペン先の角がほどよくこなれていて
 すこぶる書きやすいものだった。

 この試し書き用の74 EFを
 買いたいといったらOKですか?と
 念のため店員さんにお聞きすると、
 ペン先はそのままにボディだけ新品にして
 販売できるとのことだった。

 それも踏まえて
 74と743を再び書き続けること5分。

 それまで私はペン先の書き味だけに
 意識を集中させていた。

 ボディの握り心地という点で
 どうなのか?と
 再び私の手にそこのところを聞いてみた。

 すると、
 軸が少しばかり太い方が
 自然に握れるという。


 


 なるほど
 そう言われてみれば、
 私は743をウェバリー、フォルカンの2本、
 さらには
 743と同じ軸の太さを持つ823も2本も所有している。

 どうやら
 私の手はこの太さにすっかりと慣れてしまっているようだ。

 そもそも
 私の手は大きめなので
 こうした太い軸との相性もいいのだろう。

 今回は、
 自然に流れるようにEFを楽しむというのが
 重要なポイントだったので、
 ゆったりと握れる743に決めることにした。


 


□これで743は3本目になる。

 こうなると、
 どれがEFでウェバリーでフォルカンなのかが
 わからなくなってしまう。


 


 そこで
 以前、アサヒヤ紙文具店さんに
 教えていただいた方法で
 区別することにした。

 キャップに
 「EF」と刻印するというものだ。


 


 ペンにこうして名入れをするのは
 はじめてだ。

 あまり目立ちすぎたらイヤだったので
 素彫りという、色が付かないスタイルにしてもらった。


□早速、
 原稿や一筆箋で
 このEFを使っている。


 

 

 

 


 EFとは言え、
 Bで書く時と同じような大きさの文字で書くと、
 自分の文字ながら
 全く違う印象になる。

 なんだか、
 ちょっと繊細な印象になる。

 書き味はまだカリカリとしたところがあるが、
 校正用万年筆の時のように
 5年、6年と使い続けていくうちに
 なめらかになっていくことは実証済みだ。

 あせらず、ゆっくりとその道のりも含めて
 EFを楽しんでいこうと思う。

 校正用万年筆と違って
 このEFは一度に書く分量も
 格段に多いので
 もっとはやく辿り着けるかも知れない。


 


(2014年9月23日作成)


■ 私が743 EFを手に入れた伊東屋 横浜店

■ パイロット カスタム743 極細(EF)は
  アサヒヤ紙文具店でも試し書きして購入できます。



 




  ■ Facebookページ はじめました。

    



* 関連コラム

 ■ 「美しい細字を書きたい。」 パイロット カスタム743 フォルカン

 ■ 「反りのあるペン先」 パイロット カスタム743 ウェーバリー 万年筆

 
■ 「校正専用として買った万年筆」 パイロット カスタム742 万年筆


 ■ 「1万円 万年筆の魅力」 パイロットカスタム74編 

 ■ 「モチベーションを高めるために」 パイロットカスタム823  B

 ■ 「飲みっぷりのいい万年筆」  パイロット カスタム823 プランジャー


 TOP   他の文具コラムを見る

 画像で文具コラムを探す


Copyright (C) 2003 Tadashi Tsuchihashi,All rights reserved.