■ その73 「クネクネと曲がるペン」 ぺんてる Flexibol Pen 当時価格 500円
□今年の2月に、私のウェブサイトを日ごろご覧いただいている読者の方々と
ステイショナリーについて語り合うという趣旨でオフ会(座談会)を開催した。
せっかくの機会だから、各自お気に入りのステイショナリーを
持ち寄りましょうと呼びかけたところ、
当日は、たくさんのこだわりのステイショナリーが一堂に会した。
その中で I さんが持ってこられたのが
今回ご紹介する、ぺんてるさんのFlexibol Pen。
以前に私も手にしたことはあったが、
すっかりその存在を忘れてしまっていた懐かしいペンだ。
□Flexibol Penというネーミングは海外で販売された時のもので、
日本では「まがりんぼーる」という実に分かりやすい商品名だった。
発売は、今からさかのぼること15年前の1989年。
実は、このFlexibol Penのデザインはアルゼンチン出身の
インダストリアル デザイナーのエミリオ・アンバス氏によるのものだ。
エミリオ・アンバス氏は椅子やエンジンをはじめ、照明器具、歯ブラシなど
耐久財から消費財まで幅広い分野で活躍をされている。
氏のウェブサイトを見ていたら、ラミー社のMagic Wand Roller Penという
ペンのデザインも手がけられていた。
Flexibol Penは、さすがインダストリアルデザイナーによるものという感じが
ひしひしと伝わってくる素敵なスタイリングをしている。
15年経った今見ても、古さを感じさせないそのデザインは賞賛に値すると思う。
□外観はとてもユニークで、
2つに分かれた胴軸を、まるで背骨のようなパーツでつないでいるというもの。
むき出しになったその背骨こそ、クネクネと曲がる秘密である。
これがとても気持ちよく曲がる。
曲がり味としては、ちょっと弾力があり、曲げたら曲がりっぱなしにはならず
しばらくすれば自然に元に戻る。
この背骨をよーく観察してみると、格子状になっていて
中に入っているボールペンの芯がわずかではあるが
垣間見えるようになっている。
その隙間からインクの減り具合を確認することだってできてしまう。
□実は、このクネクネと曲がる構造は、
その背骨によるものだけではなかった。
分解して中に入っているボールペンの芯を出してみると、
通常の芯とはちょっと違っていた。
ちょっと曇りガラスのようなその芯は、通常よりも
明らかにクニャクニャとしている。
おそらく、快適な曲がり味を出すために
特別に開発されたのものだろう。
■ 手前がFlexibol Penの芯
□では、ペンとしてどうやって使うかというと、
ペン先側の軸をひねるとカチッとロックが解除される。
それをクルクルと回していくと、少しずつ背骨の方にスライドしていく。
そして、2つに別れ別れになっていた軸が最終的には1つに合体するというもの。
この時にもカチッというしっかりとしたクリック感と共にロックされるので
安定した筆記が可能となる。
先ほどまでの背骨丸出しのユニークなスタイルとは、
うって変わって、すっきりとしたペンに変身する。
書き終われば、先ほどの逆の要領でグリップのついた軸をカチッと
ロックを解除してクルクルと回せばよい。
この回転スライド式とでも言おうか、
クルクル、カチッは他のペンでは味わえないとても楽しいギミックだ。
ペンのトップ部分には、
「PATENTED BY EMILIO AMBASZ」とある。
デザインだけでなくこうした機構の特許もとっているようだ。
□ところで、ペンが曲がるというその機能はなぜ必要だったのか?
単に曲がって楽しいということだけでなく、 ちゃんと実用性が考えられている。
エミリオ・アンバス氏に聞いた訳ではないが
おそらく、それはズボンのポケットなどに収納する時のためだろう。
実際、Flexibol Penがクネクネと曲がるのは、書かずに携帯をする時だけだ。
私は、ペンをズボンのポケットに入れることがよくあるのだが、
そういう時は、軸の短めのペンにしている。
長い軸だと椅子に座ったり、立ったりした時に、ペンが邪魔をして
とても居心地が悪い。
Flexibol Penをズボンの前ポケットと後ろのポケットに入れてみた。
立ったり、座ったりしても先ほどの背骨がよく曲がってくれるので
ほとんど違和感はない。
特に、後ろ側のポケットに入れている時などは、ペンが入っていることすら
忘れてしまうほどだ。
□Flexibol Penはすでに、日本では絶版となっている。
今回は、ぺんてるさんに無理を聞いていただき
倉庫に眠っていた貴重な在庫をご提供いただいた。
当然もう、専用のクニャクニャと柔らかい芯も販売されていない。
私としては、この素敵なペンを単なるコレクターズアイテムとして
眠らせておきたくなかったので、
邪道かもしれないが、
他のボールペンの芯をちょうど良いサイズにカットして使っている。
さすがに、当初ほどの曲がり味はなくなったものの十分に曲がる。
ちょっと固めになった私のFlexibol Penは
握力アップのトレーニングにもなりそうだ。
(2005年4月19日作成)
■ 関連サイト
エミリオ・アンバス氏のオフィシャルサイト (英語)