■ その99 「今でも新品で手に入る 懐かしいたたずまいの万年筆」 パーカー45 フライターGT 5,775円
□古いデザインの万年筆は、今のものにはない独特な風合いを持っている。
私はまだ、アンティーク万年筆という分野に足を踏みいれたことはないのだが、
なんだか、とっても素敵な花園のような魅力を感じる。
でも、入ったが最後、
もう二度と戻ってこれなくなってしまうのでは、、
という不安も同時によぎったりする。
そんな時に出会ったのが、このパーカー45。
昔のデザインをそのまま残している万年筆。
うれしいことに、いまだに新品で手に入る。
しかも、値段も5,000円ちょっと、というお手頃価格なので、
例の花園に入る前に、ここらへんから始めてみることにした。
□パーカー45、発売は1960年。
この「45」というネーミングは、ちょっとしたこだわりがあって付けられている。
実は、「コルト45」というピストルからちなんで付けられたそうだ。
□ボディはツルツルとザラザラのちょうど中間くらいのサラサラという感触。
虫眼鏡で表面の様子を観察してみると、
大変細やかな線が丁寧に刻み込まれている。
□手に持ってみると、あれっと思ってしまうくらいにとても軽い。
実際に計ってみると、20g。
プラスチックで出来ているラミーサファリの万年筆が17gなので、
その差、わずか3g。
メタルボディという見た目のしっかりとした感じがありながら
軽快に使えるのがとてもいい。
□キャップをはずして、おおっと思わずうなってしまうのがペン先の小ささ。
万年筆と言えば、大きなペン先が多い中
このパーカー45はペン先から5mm程度しか出ていない。
このパーカー45が生まれた1960年代当時には、
他のペンブランドにおいても
こうしたちょこっとしたペン先の万年筆が結構見受けられる。
今はあまり見かけることのなくなった、この小さなペン先が
昔の万年筆という気分をとても盛り上げてくれる。
ちょっとしか出ていなくても存在感はたっぷりで、
まるで、鳥の鋭いくちばしを思わせるシャープなフォルムをしている。
□このちょっとしか出ていないペン先のため
筆記時に多少気をつけなくてはならないことがある。
それは、紙とペン先の接する向きについて。
万年筆をお使いの方ならご存知のように、
ペン先を紙に対して正しく向けてあげないと
万年筆独特のあの滑らかな書き味は堪能できない。
大きいペン先の万年筆ならば、その向きは一目瞭然となるのだが、
この小さなペン先だと、その向きがちょっとつかみづらい。
そんなにシビアでもないが向きがずれていると、
書き味にあらわれてくる。
でも、ピタリと向きがはまった時は、それはそれは滑らかな
書き味を生み出してくれる。
向きが違ったら、書きながら手元を持ちかえるなどして
多少調整すれば済むことなのだが、
書き出しからピタリと合わせる方法がある。
それは、尻軸にさしたクリップの位置を目印にするというものだ。
ペン先とキャップのクリップをしっかりと合わせておけば結構うまくいく。
この「ペン先向き確認」ということもあるが、
パーカー45は筆記時にはキャップを尻軸にさした方がいい。
キャップをさしてみるとわかるのだが、キャップが深々と入り込んでいく。
もともとの長さが13.7cmだったのが、キャップをさしても15cmと
わずか1cmちょっとしか長くならない、
しかも、ボディ自体がとても軽量なのでバランス的にも申し分ない。
こうした機能面もさることながら、
私はキャップをさしたその美しさに惚れ惚れとしてしまった。
真っ黒なグリップとキャップエンドにある黒い丸が全体の印象を
ビシッと引き締めてくれる。
ペンは、通常の状態の美しさも大事だが
書くときのペンの姿というものも大切だと私は思っている。
文字を書いているときは、綴っているその文字を凝視しながらも
その視界には、しっかりとペンの全容も見えている。
この時の眺めがいいと、私はこの上なく幸せな気分に浸ることができる。
パーカー45のこの時の眺めがとてもいい、
文字を書くのをついつい忘れてうっとりとしてしまう程。
□ふとキャップを見ていると、
クリップに隠れているその下に穴が開いている。
輸入元の方によると、これは
間違ってキャップを飲み込んでしまった時に
息が出来るようにするためだそうだ。
この穴が気になって色々な角度から見ていて気づいたことがある。
それは、クリップの先端の形状が万年筆のペン先にあるポイントに
とても似ているということ。
それを意識して作られたかどうかは不明なのだが
ペン先と比べて見てみると、とてもよく似ている。
だからなんだと、言われれば
なんでもありません、、、と言わざるを得ないことなのだが
ちょっとうれしい発見だった。
□5,000円台という手ごろな価格で手に入る
古きよき時代を感じさせる万年筆。
初めての万年筆、サブ万年筆に最適な1本となるだろう。
(2006年2月7日作成)
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