■ 「 手帖。 」 MUCU ポケットブック 1,890円
□一冊 2,000円くらいする本格手帳の市場は、
Moleskineをはじめ、最近ではpaperblanksや、
はたまたクオバディもノートをラインナップし始めたりと
その活況ぶりは目を見張るものがある。
一方で私たちユーザーからすると、あまりの多さに
少々おなかがいっぱい気味という感じもなくはない。
そんな折、銀座・伊東屋の4階のワークスタイルコレクションの
一番奥でひっそりと並んでいたのが、このMUCU ポケットブック。
もう、おなかいっぱいであるにも関わらず、
ついつい手が伸びて一冊買ってしまった。
よくご馳走をたらふく食べても、デザートだけは別腹ということがあるが、
この手帳もそんな魅力を持っている。
□「MUCU」とは、「無垢」のことで、
このことからもお察しのとおり純粋な日本のブランドである。
無垢というブランド名には、
ひとつひとつ吟味された素材だけを使い、
シンプルに仕上げて、素材本来がもつ力、
無垢の良さにこだわるという想いが込められている。
今回のポケットブック以外にもノートをはじめ、
色々な紙製品がラインナップされている。
□さて、このポケットブックには
こうした手帳には珍しく専用のケースが付いている。
まるで工場からそのままやってきてしまったいった感じの
素朴なクラフト製で、無垢っぽさが全身からみなぎっている。
ちなみに、このケースは長期保存用としても使えるという。
手帳というものは、表紙や背に記入するところがないので、
使い終わったものを本棚に並べると、どれがどれやらわからなくなってしまう
ことが多々ある。
でも、このケースに年やタイトルを書いておけばすぐに見つけらて便利そうだ。
そのケースから取り出すと、
中から懐かしさあふれるデザインのポケットブックがあらわれる。
ポケットブックという商品名ではあるが、
日本語の「手帳」、
さらに言えばどことなく懐かしさもあるので、
「手帖」という表現の方が似合いそうな気がする。
表紙のカラーはブラック、グレー、オレンジの3種類があるが、
この中で一番古きよき時代を感じさせてくれるレンガ色の
オレンジを選んだ。
この落ち着いたたたずまいからは想像できないが
合成皮革のカバーは、ガシガシ使っても大丈夫なように
耐水性、折り曲げ強度そして、摩擦強度にも優れたものになっているという。
サイズは、Moleskineと測量野帳のちょうど中間くらいといったところだ。
やや細身のサイズのおかげで
指の第一関節をしっかりと折り曲げてガッチリと握りしめることができる。
実際に使ってみて感じたのは、
このスリムサイズはポケット、特にスーツの内ポケットに
入れても余裕があるので、出し入れがとてもしやすかった。
□この手帳の外観でもうひとつ触れておかねば
この手帳に怒られてしまそうなことがある。
それは、紙の裁断面である小口だ。
小口がこげ茶色でビシッとすき間なく塗られていて、
さらに、磨きまでかけられ、見事な艶やかさを放っている。
手帳の表紙を両端からギュッと手で押さえ込んだ状態で
その小口を指でなぞると紙の断面というよりも、
これはもう上質な革の表面をなぞっているような、
そんな感覚に襲われる。
□表紙を開くと、ほのかにクリーム色した紙が連綿と続いている。
この中の紙は、横罫線、方眼、無地がある中で、
今回私は、無地を選んでみた。
ちょうどアイロンをかけたてのような
一枚一枚がパリパリと、とてもハリがある。
表面はとても滑らかさにあふれていて、
ペンはもちろんのこと、指先でなぞってもその心地よさは十分に感じられる。
手持ちの万年筆でもって色々と筆記テストをしてみたが、
どのインクもにじみはなく概ね良好。
しかしながら、インクの乾きという面では少々時間を要する印象を受けた。
□この手帳には、バインディングカードと呼ばれるものが
別売り(399円)で用意されている。
これには、ゴムバンドが付いており、
表紙をしっかりととめておくことが出来るようになっている。
このバンドをつけたとたん、これまでのクラシカルな顔立ちが、
グッとモダンに様変わりする。
バンドをとめた姿こそMoleskineのようだが、
使い勝手は似て非なるものだ。
そもそも構造が違っている
Moleskineは2カ所でバンドをとめているのに対し
MUCUは一カ所だけである。
この一カ所であることで、
バンドをはずのが、Moleskineよりも簡単に行える。
手帳の下のバンドをちょこんとはじいてあげるだけで、
ゴム鉄砲のようにパチンと外れて向こう側に飛び出していく。
起動性の良さという点では、MUCUの方が勝っているかも知れない。
□今回、この手帳をぜひ買っておこうと思った最大の理由は、
これまでの海外スタイルの手帳とはまた違う
日本の手帳独特の良さみたいな趣きが伝わってきたからだ。
それもそのはず、
実は、この手帳は、日本の老舗手帳メーカーのアドバイスをもとに
作られたのだそうだ。
とりたてて、これまでの手帳よりも斬新な機能性を備えているという訳ではないが、
手帳の基本性能という点については、しっかりと磨きがかけられている。
地味ではあるけれど、どこか惹かれる手帖だ。
(2007年8月28日作成)
■ MUCU ポケットブックは、こちらで販売されています。
□ MUCUオフィシャルサイト
<本格手帳 関連リンク>
■ 「所有する喜びが感じられる手帳」 モールスキン ポケット ルールドノート
■ 「ロングセラーの携帯ノート」 コクヨ 測量野帳
■ 「たてに開くモールスキン手帳」 モールスキン レポーター
■ 「高嶺の花的 ノート」 丸善 ダックノート
■ 「ノートで自己主張を愉しむ」 Paperblanks (ペーパーブランクス)