■ その53 「サインするときに使いたいペン」 モンブラン マイスターシュテュック164
□以前、バーニーズニューヨーク(洋服屋さん)で
スーツを買いに行ったときのこと。
購入するスーツも決まり、いざ支払いという段になり
クレジットカードを差し出した。
「サインをお願いします。」と
店員さんが胸ポケットから1本のボールペンを颯爽と出した。
黒塗りのモンブランのボールペンだった。
それを受け取り、サインをした。
言うまでもなく、とても気分のいいものだった。
決して安くない買い物をして、クレジットカードのサインをするときに
100円のボールペンでは、あまりにも悲しすぎる。
ペン1本でこんなにも気分がよくなるものだと
つくづく感じてしまった。
□さて、今回は私も10年以上使い続けている
モンブラン マイスターシュテュック164 ボールペンです。
モンブランと言えば、万年筆を思い浮べるとことろだが
ボールペンもいいものを作っている。
この164は、今は残念ながらカタログには掲載されていないが、
広く愛用されてきた定番モデルだ。
巷で見かけるのは先程のバーニーズの店員さんと同じ
黒塗りタイプだが、人と同じものを持ちたくない
へそ曲がりな私はあえてバーガンディを選んだ。
いわゆるえんじ色。
おそらく女性向けに用意された色であろうが
男性が持っても結構さまになると個人的には思っている。
□一見すると、何の変哲もないペンに見えてしまうが
さすがモンブラン。
細部に神が宿っているようだ。
胴軸に使われているのは硬化樹脂。
プラスチックというと、どうしても、高級感が出にくいところだが、
いい材質をつかっているのだろう。
まるで、漆塗りのような上品な佇まいをしている。
10年以上愛用している私のペンの艶は今も健在だ。
手にしてみると、さらに感じるのが
何の変哲のないと思われたスタイリングが
実に計算しつくされた太さになっていることだ。
上質の樹脂とあいまって、程よく手にまとわりつき、握り味は上々。
□ペン先は、胴軸をねじると繰り出されてくる。
この方式は特に珍しいものでもないが、
そのねじり味とでも言おうか
他のペンと違って独特な感触がある。
ねじりはじめには、適度な重みがあり
最終的にペン先が繰り出されると
かすかなクリック感とともにストッパーが効く。
その一連の動きには一切の音もしない。
その代わりに、心地よいねじり味の感触が
手に伝わってくる。
それが、あまりにも気持ちよいので、
ペンを握っていると、ついつい何度もねじってしまう。
□肝心の書き心地は、専用のリフィルが大変よくできている。
特に太字のMを使うとその書き味には一瞬驚かされる。
ボールペン特有のサラサラではなく、ヌメヌメと滑らかな書き心地がある。
□私のペンの愉しみ方として、ペンとシャツの組み合わせがある。
シャツの胸ポケットにさしてみると
シンプルなクリップとモンブランのトレードマークである
ホワイトスターが奥ゆかしく顔を出す。
出しゃばりすぎない、程よい主張だ。
□サインと言うものは、自分の分身である。
ショッピングの時のクレジットカードのサインでは
確かに私が買いました。という証明にもなる。
こういう大切な契約という1つのセレモニーには
気分を盛り上げてくれるいいペンを使いたいものだ。
これからは、
店員さんから差し出されたペンを丁重にお断りして
自分の胸元からお気に入りのペンを出して
サインをしてみようかと思っている。
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(2004年11月23日)
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