文具で楽しいひととき
CATEGORY / 何度も読み返したくなる本
短編小説。短い中にも独特な世界が立ち上ってくるものに出会えると、とてもうれしい。この「文鳥文庫」は、短編小説をまとめた本。この体裁が面白い。装丁というよりもパッケージになっていて、あけると中には8編の短編小説がそれぞれ紙のケースに入っている。ちょうどLPレコードジャケットから取り出すみたいにすると、中から短編のコアが出てくる。これがまさにコア(本質)だけ。表紙もなければ、しおりもなく、短編小説の心臓部がそのまま出てくる。製本されずに蛇腹状になっている。サイズとしては文庫本なのだが、この読書体験はこれまでにないものがある。一編の小説を手の平に載せてページをめくりながらというよりも折り返しながら読んでいく。当然に見開きもよく、心地よい読書が味わえる。あまり急がずにいつもよりもゆっくりと文字を追っていきたくなる。
*文鳥文庫 第二弾「刺青」谷崎潤一郎、「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」村上春樹、「メリイクリスマス」オー・ヘンリーなど