■ 「高嶺の花 的ノート」 丸善 ダックノート 150D−2 9mm横罫 2,730円
□2,730円というノートにしては、かなり高めの値段のせいもあって、
これまで、店頭で手にはするものの、レジに持っていくことのなかった
私にとって、ちょっとばかり「高嶺の花 的ノート」だった。
折りしも、先日オープンしたばかりのラゾーネ川崎の丸善に立ち寄った際、
店内の一角に、丸善オリジナルのステーショナリーコーナーが特設されているのを
見つけた。もちろん、このダックノートも展示されていた。
これまで、ノート売場では他のノートと一緒くたに並べられて、
後姿だけを見せていたときとは違い、
そのコーナーのダックノートときたら、まるで晴れ舞台にもで立っているかのように
堂々と輝いて見えた。
しかも、悪いことに
1冊1冊職人さんが手づくりしていますということを紹介する、
パネルも横に添えられており、
もう、私の中の「買うモード」は頂点に達しつつあった。
ちょうど、欽ちゃんの仮装大賞の合格点まで、ランプがあとひとつといった感じ。
そして、最後の難関である値段については、
「万年筆を喜ばせるには、こういういいノートが必要だな。。」と
自分の中で2,730円を支払うという大義名分をスバヤク思いつき、
足早にレジへと向かったのだった。
□ダックノートと言っても、アヒルの革を使ったノートではない。
アヒルと同じスペルの「DUCK」なのだが、
帆布という意味もある。
表紙には、ひと航海を終えてきたかのような
深い味わいのベージュ系の帆布が使われている。
帆布というと、ガチガチとした印象があるが、
これはかなり薄めのものが使われていると見えて
それほどのガチガチ感はない。
しかしながら、その帆布の下には厚紙があるようで、
コシのある程よい硬さがある。
総勢、300ページもあるので、ノートをぐいと折り曲げてパラパラと
めくるときにこの程よい硬さが、一般のノートのように柔らかすぎず、
かといってハードカバーのように硬すぎることもなく、ちょうどよい。
実用性と高級感のちょうどうまい中間点を捉えているように感じられる。
□その表紙を開くと、本文のノートに入る前に「見返し」があり、
その色が昔の本のような渋めの茶色をしている。
これが、表紙のベージュと実にマッチしている。
特に書く場所でもないのだから、見返しの色なんてどうでもいいじゃないか、と
思われるかも知れない。
しかし、ノートを拡げるたび、チラッと目にはいるので、
ノートを目で愉しむという点でも大切な部分だと思う。
ちょうど、スーツを羽織るときに見える裏地みたいなものかもしれない。。
ちょっと、違うかな。。
□この見返しの茶色に合わせるかのように、ノートの断面である小口も
ほぼ同じ色でコーディネートされている。
1ページ1ページを見てみると、その塗りが多少はみ出ていたりしていて、
明らかに人間の手によるもの、ということがひしひしと伝わってくる。
ちょっとした辞書ほどの厚さがあるので、
ビシッと閉じた時の小口を斜め45度くらいから見ていると、
実に美しいのである。
先ほど、塗るという表現をしてしまったが、
これは「塗る」ではなく、「磨く」という表現の方が適切だろう。
それほどまでの、落ち着いた艶がある。
そこを指で、ページの目に沿ってなぞると、
ツルツルとした独特な滑らかさが伝わってくる。
外観だけでも、語り所に事欠かないノートだ。
□さぁ、ようやくノートの中面を見ていこう。
茶色の見返しをめくると、
目に優しいクリーム色の紙が出迎えてくれる。
ノートの外側をぐるりと囲むように表紙のベージュ、そして茶色の小口もあり、
開いたときの姿もまたいい。
書きはじめる時に、思わず居住まいを正してしまう。
□ノートのサイズは3種類ある。
その中で私は日ごろよく使っているA5サイズに近いものを選んだ。
またノートの紙面については、無地、方眼、横罫線の3種類が用意されている。
私は横罫線タイプのものを手に入れたのだが、
その幅がなんと9mmというかなりの太めになっている。
日ごろ、一般的な6〜7mm幅を使っているので、
数ミリと言えどもその差はとても大きく感じる。
しかしながら、この9mm罫線は私にとってちょうどよいかもしれない
と思うようになった。
と言うのも、
私は、このノートに書くには、万年筆と固く心に決めていた。
よく使っている太字のペン先で、
さらに私の文字がかなりの大きめときているので、
考えてみればこうした太い罫線の方が、私には都合がよいという訳なのだ。
□分厚いノートということで、気になるのが、ページの開き具合。
しかし、このダックノートはこの見開き性に大変優れている。
ページのはじめでも、真ん中らへんでも、とにかくどこを拡げても
ノートの綴じ込み部分が必要以上に膨らむことなく
しっかりと、とどまっていてくれる。
これは、「本かがり」という綴じ方によるものだ。
紙を20ページずつに分けて、真ん中で折り曲げる。
それを15束用意して、糸でかがって製本するというもの。
背表紙の内側を覗いてみると、その手の込んだ職人の技が垣間見える。
この細かな束にした製本が、分厚くなっても
気持いい見開き性を生んでいるのだ。
また、ノートの背の部分が角ばっておらず
とても自然な丸みを帯びている。
これは、職人が木槌でたたいて仕上げているのだと言う。
ノートの握り心地というのは、あまり聞かないが
この丸い背は手の平にすき間なくピタッとフィットしてくる。
□最後になってしまったが、
書き味もご紹介しておかねば。。
フルース紙が使われているということもあり、万年筆との相性はとてもよい。
フルース紙ならではの、万年筆のペン先のスムースさは格別。
万年筆がいつもよりも喜んで走っているようにさえ感じられる。
インクはにじまず、しっかりと受け止めてくれる。
自分の書いた万年筆の文字が、じわっとひとまわり大きくなることなく
書いたままの筆跡が残る。
しっかりとした厚口の紙が使われているので、
万年筆のインクが裏にぬけてしまうことも見られなかった。
このクリーム色のノートには、ブルー系のインクがよく映える。
□2,730円と決して安い価格ではないが、
目で見て愉しみ、手にとって作りこみの良さを実感し、
そして書き心地を堪能してと、
それに見合うだけの満足感は十分に得られそうだ。
(2006年10月24日作成)
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