■ 「シンプルデザインな多機能ペン」 トライストラムス マルチペン 3,150円
□私は「見かけによらず」というのが結構好きなんです。
例えば、
普段は大人しいけど、
実は空手の有段者ですごく強いとか、
こういうのにめっぽう弱い。
以前働いていた会社でも、こんな人がいた。
彼女は、普段はすごく大人しいタイプなんだけど、
実は暗算大会で
一位だか二位をとったことがあるという経歴の持ち主だった。
何桁もある数字のかけ算をするときも
斜め右上(だったか、斜め左上方向だったか、忘れてしまったが、
いずれにしても斜め上)の一点をじっと見つめて
瞬時に正解を導きだしていた。
見かけは普通なんだけど、
実はすごいという人を見ると、
とても格好いいと思ってしまう。
このペンもその「見かけによらず」というものを持っている。
□トライストラムスのマルチペン。
いわゆる多機能ペンだ。
「多機能ペン」というと、その多機能ぶりが
全身からみなぎっているものが多い。
代表的なところではノックボタンが
色とりどりに幾つも付いていたりする。
ノックボタンが一つだとしても、
何の色のボールペンが出てくるかの
小さなインデックスがあったりする。
しかし、
このマルチペンでは、そうしたものが一切ない。
それどころか、
ペンのボディは一本の筒状という
徹底したシンプルぶり。
多機能ペンというより
単機能ペンの中にあっても、
遥かにシンプルと言える。
一般的には、
ボディの中央には境目があって、
そこからペンを分解したりできるものだが、
これには、そうしたつなぎ目がなく、
一本の筒スタイルを貫き通している。
厳密にいうと、
ペン先の細くなっているところだけ、
うっすら別パーツになっているのがわかるが、
それでもシンプルであることに変わりはない。
こんなにもシンプルなのに、
全体の印象としては、
しっかりとデザインされているというのが、
ひしひしと伝わってくる。
これはどうしてなのだろうか。
きっと全体のバランスが
整っているからなのだと思う。
それを担っているのが
ペンのクリップならびに後端の部分。
ボディの筒スタイルに対して、
クリップは板状という
形は違えど、シンプルなフォルムになっている。
つや消しのザラザラとしたメタルクリップは、
先端の一カ所だけ「ガクン」というよりも
「カクン」という感じで優しく一段下がっている。
静かな主張を感じさせる作りこみだ。
□私は
今回「カーキ」というカラーを手に入れた。
このほかシルバー、ブルーそしてピンクもあった。
シルバーとブルーはメタリック系の塗装であるのに対し、
このカーキは、ベタッと塗り込まれている。
昔、ラミーのサファリが出始めた頃、
まさにサファリカラーのこうした落ち着いたグリーンボディがあったが、
今はペンのカラーとしては、
めっきりと見かけくなっている色あいだ。
地味と言えば地味だが、
ちょうど私が使っている
ポスタルコの手帳カバーもオリーブグリーンだったので、
これを選んでみた。
フト、いつも私が使っているステーショナリーを見回してみると
それ以外にも結構グリーン系が多かった。
「類は友を呼ぶ」ということなのだろうか。
□話が前後してしまうが、
このペンのパッケージもいかしている。
こちらも筒状のカプセルケースになっていて、
その中にこのマルチペンが
宙に浮いているかのように入っている。
両端がスポンジのフタになっていて、
それを引っ張ると開けられる仕組み。
私は万年筆などを買う時は、
いつもこうしたケースは要りませんと、
キッパリとお断りして、
中のペンだけにしてもらうのだが、
さすがにこのパッケージは格好よかったので、
そのままいただくことにした。
そういえば、
こうしたカプセルスタイルのパッケージといえば
ラミーのピュアがあった。
ラミーピュアもペンが宙を浮いたようになっているが、
ピュアではペンの中央を支え、
トライストラムスでは、ペンの両端を固定している。
この端の部分にはひとつ秘密が隠されていた。
それは、取説が一体化されているところ。
カプセルの上には黒い帯状の紙が巻かれている。
ここをペリペリと剥がすと、
巻物のように広がり、その内側が取説になっている。
パッケージデザインを上手く活かしている。
□次に
ペンの使い勝手のご紹介を。
ペンを手にすると、
これが結構ズシリと来る。
見た目にシンプルなので、
てっきり軽量かと思っていたので、
ちょっと意外だった。
ペン先を繰り出してみよう。
このペンはツイスト式。
ボディは一体型でツイストしようにも出来ないので、
クリップならびにペンの後端をツイストすることになる。
エンドレスでクルクルと回り続け、
黒、赤のボールペン、そして0.5mm シャープペンが
次々と繰り出される。
この回し心地は、
トンボの ZOOM414よりゼブラのシャーボ X にやや近い。
と言っても、
それらを使ったことがない方には
ピンとこないかもしれない。
どう違うかというと、
ツイストしてペン先が出た時の感触が微妙に違う。
ZOOM414は「カシャリ!」という、
しっかりとした音とともにクリック感がある。
それに対し、シャーボXの方は、
ペン先が出た時に「プスリ」という、
やや大人しめの音ともに
軟質なクリック感がわずかにある程度。
今回のマルチペンは、
この「プスリ」とまではいかないが、
比較的ソフトなクリック感が手に残る。
こういうツイスト式ペンは、
よく片手で操作するものだが、
このトライストラムスの場合、
ボディではなくクリップで行うので、
正直片手だけではちょっとやりづらい。
もちろん出来なくはないが、
出来たとしても一種類のペンを繰り出すところまでだと思う。
これは両手を使ってツイストさせてあげた方が良さそうだ。
このツイストをしていて、
一つ、いや二つほど気づいたことがあった。
ひとつは
後端が指を添えやすいフォルムになっている点。
上から見ると完全な丸ではなく、
ちょっと独特な形をしている。
ここに指がピタリとフィットする。
ツイストしやすい形が考えられているようだ。
もうひとつはクリップ。
先ほども触れたように、
クリップは板状のものを緩やかな階段のように一段下がっている。
このクリップの先端がボディに接していない。
クリップという挟む機能を考えれば、
ここはピタリとくっついてるべきところだ。
あえて、こうしているのはツイストする時に、
ここも動くので、
ピタリと付けいているとボディに傷を付けてしまうからなのだろう。
その分クリップ力、
特に薄いものを挟む力はやや心もとない。
さすがに紙一枚で留めると
スカスカとしてしまうが、
Yシャツのポケットくらいであれば
そこそこの安定感はある。
一方で、
このクリップはその付け根が
ペンの後端の結構ギリギリからはり出しているので、
ノートの表紙などにはさむと、
ペンがノートからあまりはみ出さないという良さがある。
□次に、ペンの重心バランスを見てみよう。
これが、ちょっと興味深い。
まず、ペンをそのままの状態で天秤のように
バランスを取り中心の位置を調べてみた。
すると、中央よりもやや後側にあった。
次に、ペンを分解してみた。
分解するには、
後端の部分をそのまま引っ張ってあげればいい。
そうすると、
3色のペン先の付いたユニットがスルスルと出てくる。
この中身のユニットだけで重心を調べてみると、
今度は先程よりもさらに後ろ側、
それこそクリップの先端くらいのところに重心があった。
そもそも多機能ペンというものは、
違うペン先を出す機構が後端に集中しているため、
どうしても後ろ側が重くなりがち。
最後に筒状のボディ単体でも調べてみた。
これはただの筒だから、
ちょうど真ん中かと思いきや、
やや前方にあった。
なぜだろうと不思議に思って
筒の中を望遠鏡を覗くようにしてみると、
先端側だけ内側に別パーツが二重構造になっていた。
ここを低重心、つまり前の方が重い作りにすることで、
多機能ペンでありながら後が重くなりすぎるのをカバーしていたのだ。
シンプルに見える内側では、こんなにも頑張っていたのだ。
こんなところも見かけによらない。
(2011年10月11日作成)
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