■ 「凹凸感のある書き味」 オリジナルクラウンミル クリームレイド A4 ライティング パッド 1,838円
□万年筆で書いていて、
紙とペン先の間の摩擦がそれこそ限りなくゼロに近づくらいに
スムースに進んでいるとき、
万年筆っていいなぁと、それはそれは幸せな気分が味わえる。
私はこのスムースさこそ、万年筆ならではの醍醐味だと、
そう思いこんでいた。
しかし、このオリジナルクラウンミルのクリームレイドと出会い、
また違った良さがあるということを思い知らされた。
料理にも色々な味があるように、
書き味もしかりなのだと。
□オリジナルクラウンミル社は1870年にベルギーで創業した
ソーシャルステーショナリーメーカーである。
封筒や便箋など紙製品だけをひたむきに作り続け、
数々のヨーロッパの王室でも愛用されるという実績を持っている。
その伝統と格式は、王冠を中心とした
オリジナルクラウンミルのトレードマークにもよく表れている。
□そのオリジナルクラウンミルの中で、今回取り上げるのは、
A4サイズのライティングパッド。
実は本国ベルギーのカタログでは、「Writing pad 」となっているが、
日本のカタログでは「便せん」として掲載されている。
たしかにライティング パッドは、日本語で「便せん」と訳される。
しかしながら、我々日本人にとって便せんとなると、
どうしても手紙でしか使えないというイメージになってしまう。
幸いこの商品は日本の便せんのB5サイズと違って、A4なので、
私は、あえて原文のとおりライティング パッドとしてご紹介したいと思う。
その方が、用途に広がりが生まれるので。
□さて、このオリジナルクラウンミルの最大特徴、
それは、レイドのある上質な紙質、これに尽きる。
その特徴を誇らしげに主張するように
表紙からすでにレイド紙が使われている。
レイドとは、日本語で言うところの「すの目模様」のこと。
上質な便せんなどで、紙の繊維が織りなす横縞の模様を
ご覧になったことがあると思う。
オリジナルクラウンミルのレイドは、同じレイドでも
ちょっと違う。
一般的なレイドは透かしてみて、縞模様がわかるというものが
ほとんどのような気がする。
オリジナルクラウンミルのものは、一本一本の縞模様が
やや立体的に浮かび上がっている。
この凹凸感のあるレイド、
例えて言うならば、スポンジケーキにヘラで
クリームをまんべんなく塗る時に、自然にできる凹凸のような、
と言ったらイメージしやすいだろうか。
このレイドの凹凸は真上から見るよりも、
手前斜め45度くらいから眺めると、その立体感というものが、
ほんわかと浮かび上がって見える。
つまり、実際に書こうとするときに見えるという訳なのだ。
□このレイドは手で触ってもよくわかるが、
やはり、その気持ちよさが一番味わえるのは、
なんと言っても万年筆で書いたときだろう。
とりわけ、M(中字)やB(太字)くらいの太めのペン先との相性がいい。
レイドの緩やかな山をペン先がしっかりと捉えて登ったり降りたりしていく。
凹凸と言うと、ともするとゴツゴツというイメージがあるが、
もともとの紙が滑らかなせいだろう、そうした感触は微塵もなく、
あくまでもスムーズにひと縞ひと縞ペン先が乗り越えていく。
□このレイドは、紙の表面にしかない。
このレイドを指先でなで回していて気づいたのだが、
紙を置いて、上から下に指をなぞらせたときは、何の抵抗もないのに、
下から上になぞってみると、
ほんのわずかだが、指先にひっかかりみたいなものが感じられた。
そもそも、文字は上から下へ書くものなので、
それをふまえて紙の繊維をしっかりと考えて作られているようだ。
また、書き味とは直接関係ないことだが、
紙を一枚だけ切り取って、光にかざしてみると、
トレードマークの王冠の透かしが中央に入っている。
こだわりを感じるのは、全ての透かしが、どの紙もほぼ中央に揃っていることだ。
よくあるものは、紙の上や下にあったり、途中で切れていたりといったことがあるが、
これは、違う。
□日頃よく使うA4サイズということで、
便せんに限らず、色々な用途で使っている。
例えば、万年筆専用のライティングパッドとして、
アイデアを書きしるしたり、原稿を書いたりと普段使いを楽しんでいる。
無地ではあるが、レイドの縞がちょうど罫線のような役割を果たしてくれるので、
書いていても文字が右下がりになることはない。
また、この紙はなんとインクジェットプリンターにも対応しているので、
ちょっと裏技的に、自分のロゴマークを印刷して、
オリジナルのレターヘッドとしても使っている。
真っ白なままでもいいが、マークが入ると、
また凛々しさがぐっと増してくる。
□ワインは、グラスの形状によって風味が違ってくるという話を聞いたことがある。
そういう意味では万年筆も、紙によって様々な書き味を愉しませてくれると言える。
今回の凹凸感あふれるレイド紙では、
手応えのある書き味というものをたっぷりと堪能させていただいた。
普段使い慣れていて、
その書き味はもう十分にわかっているつもりだった万年筆の
新たな一面が味わえて愉しかった。
(2007年9月11日作成)
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