文具で楽しいひととき
プラチナ万年筆
#3776 センチュリー 富士雲景シリーズ 鱗雲
#3776 センチュリーシリーズは、富士山を主軸に据えたモデルを毎年発表している。「富士五湖」、四季折々の富士山をボディにまとった「富士旬景」シリーズ。そして2023年より新しい富士シリーズとして「富士雲景」シリーズが始まる。その第1作目は「鱗雲(うろこぐも)」。今回も発売前に特別に見せていただいた。
■ 富士山と鱗雲をボディに表現
「富士山の美しさは雲と切っても切り離せないんです」と企画・デザインを担当されたプラチナ万年筆の開発マネージャーの石花氏は話す。今回のテーマである鱗雲と富士山がバイカラーボディで表現されている。これまでの富士を中心とする限定シリーズにおいて、バイカラーは意外にも初めてとなる。透明ボディに鱗雲が散りばめられている。その一つ一つは指先を添えると分かるが、丁寧にカットされている。これまでの富士山シリーズでも様々なカットがボディに施されてきた。それらとはまた違う印象がある。そう感じるのも当然で、今回のカットは全くの不規則パターンになっているという。
ペン先側はやや密集していて、所々は重なり合っていたりもする。尻軸に行くにしたがい鱗雲の配置はゆったりといった具合に自然な配置となっている。この鱗雲のカット面は曇りガラス状にややマットになっている。ベースのクリアとのコントラストがくっきりとしていて、キラキラとは違う大人しさがある。
そしてキャップには鱗雲のカットはない。富士山の山肌を表現したという、この色はネイビーとも違う、グレーを強くしたシックなブルーグレーといったニュアンス。鱗雲の落ち着いた表情と良く馴染んでいる。
わずかにスケルトンになっていて内側のペン先も透けて見える
正面から見ても美しいが、個人的には尻軸の方から見るのがいい。この方が鱗雲の立体感がより際立つ。
■ どこを握ってもフィットする
ペン先は#3776 センチュリーお馴染みのタイプ。字幅はEF、F、Mの3種類が設定されている。
では握ってみる。スリップシールのわずかな抵抗感のあるキャップをひねりキャップを外す。ボディ単体で握る。指先はネジ山のところに行く。さぁ書こうと構え、手元の景色を眺める。いい眺めだ。先ほど鱗雲は尻軸側から見た方が立体感があっていいと触れたが、まさにそれが拝める。ただ、ボディ単体だとせっかくの鱗雲を指先で感じられない。
そこで、次にキャップをさしてみる。深呼吸をしてライティングポジションに入る。この状態だと指先に鱗雲を大いに感じられて気持ちいい。どこを握っても鱗雲が指先からたっぷりと伝わってくる。一つ一つの鱗雲のくぼみはエッジの角があまり立っていないので指触りが優しい。色々な握り心地、そして手の景色を楽しめる。
■ 「赤富士」というグリーンインク
今回の限定万年筆には特製のボトルインクが付属されている。見るからにグリーンインクなのだが、名前は「赤富士」という。書いてみるとその訳がわかる。書きたての時は深いグリーン色をしているが、筆跡が乾くと所々が光の加減で赤く反射する。つまりフラッシュインクだ。葛飾北斎の「凱風快晴」という赤富士の絵がある。麓は緑色をしているが、山頂に行くにしたがい赤になっていく。これをインクで表現したという。このフラッシュは筆跡全てに必ず現れるものではない。コントロールできない面白さがある。
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これまで様々な#3776 センチュリー富士シリーズを見てきた。10年以上だから10本以上ということになる。そうした中でも今回の「鱗雲」はまた違った一本として楽しめると感じた。バイカラーということで、キャップをさした時、ささなかった時で手の景色は大きく違ってくる。今回はインクも含めて筆記景色に富士山をたっぷりと味わえる。
プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 富士雲景シリーズ 鱗雲
40,000円+Tax 限定3,000本(シリアルNo.入り) 2023年7月25日発売
協力:プラチナ万年筆
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