文具で楽しいひととき
パイロット
いろうつし
発売されたらすぐ買おうと思っていた。使い慣れているパイロットからつけペンが出たというニュースを知り、これは一度使ってみるべきだと思った。発売日当日、横浜の有隣堂さんに行く用事があった。目的のものをスバヤク買いレジを後にしようとした時、すぐ隣の万年筆が並ぶガラスケースの上でお店の人が「いろうつし」の什器をせっせと組み立てていた。もう売り出しているんだと思い、買えますか?と聞くとハイまさにこれからということだった。それではと木軸のブラック、字幅はインクの色が楽しみやすいだろうとMを買った。
■ 万年筆のペン先が付いている
この「いろうつし」を買おうと思った一番の決め手は万年筆のペン先が付いていることだった。きっとなめらかな書き味だろうと手の中に想像が膨らんだ。これまで持っていたつけペンはどうしてもカリカリとした書き味で馴染めなかった。ルーペで「いろうつし」のペン先を覗き込むと、そうそうこういう感じだよねというパイロットらしいペンポイントが見えた。書き味までイメージできそうだった。
■ ペン芯がないのにインクは保持できるの?
ルーペを机の上に置いて、ペン先をクルリと裏返してみた。ペン芯はなく、普段あまり拝めないペン先の裏側がそのままになっている。どうやってインクを保持するのだろう。取説に従い、インクをつけて書いてみることにした。それによると、ハート穴のところまでインクをズブリと沈めるとある。よく見ると、ハート穴の両側には波線がある。ここを目安にしていけばいい。
まず、いつものパイロットのブルーで試してみた。ボトルインクに沈め引き上げてみると、ペン先の裏側にインクが表面張力でじっととどまっている。どうやらこのまま書いていくらしい。このときペン先を振ったりしてはいけない。インクが飛び散ってしまうので注意が必要だ。
ボトルの中にアダプターがあり、ハート穴まで沈めるのがちょっと確認しづらかった
案の定ちょっと付けすぎた
紙の上に添えて書いてみる。なるほど下ろしたてのパイロットのペン先らしいタッチだ。滑らかに紙の上を走っていく。力を加えると、少しだけペン先がしなるが、ステンレススチールならではの硬質さがある。インクひとつけで、思っていたよりそこそこ書いていけた。
書き切ってみると、このようにインクはすっかりなくなっている
■ 水洗いでインクの色替えも簡単
違うインクに替える時は、その度に水洗いをする。と言っても水に浸してバシャバシャするだけでいい。私は飲み終わったペットボドルをカットして使っている。洗い終わったペン先は「キムワイプ」でふき取る。
このペットボトル再利用カップは万年筆のクリーニングの時にも使っている
次にペンアンドメッセージさんで買った「ビンテージデニム」で試してみる。落ち着いたネイビーブルーでいい色合いだ。インクフローもある程度一定なので安心して書いていける。
次に随分前に買ったカランダッシュのサンセット。こういう色をしていたんだと久しぶりの再会を楽しんだ。どのインクでもそうだけど、インクがなくなって書けなくなるのが前触れがなく結構急にやってくる。書けなくなるまでにおよそ5文字くらい手前で筆跡がうっすらとしていく。と同時にインクフローも渋くなるせいか、書き味にも少し変化があらわれる。
どんどん色んなインクを試していく。こうしてさっと色替えできるのはつけペンならでは。神戸インク物語の須磨浦シーサイドブルーで書いてみると書き味はまた微妙に違う。インクには色だけでなく、書き味の個性もあるということをしみじみと実感した。つけペンは次々に色々なインクを使えるので、さっき書いた書き味の記憶を頭に残したまま比較していくことができる。しかも同じつけペンでインクだけ替えるので、定点観測ではないがそれぞれのインクの個性がダイレクトに伝わってくる。
パイロットの顔料インク「強色」でも試した。気軽に色々な万年筆に入れづらいインクだけど、つけペンなら楽しみやすい
*
ついつい買いためてしまったインクの中には、よく使うインクの陰に隠れてあまり使ってあげられていないインクも中にはあったりする。そうしたインクもこの「いろうつし」を使えば気軽に楽しむことができる。しかも万年筆ライクな書き味で。
パイロット「いろうつし」
YouTube「pen-infoチャンネル」でも「いろうつし」の使い心地を紹介しています。
YouTube「pen-info」チャンネルでも紹介しています。
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