文具で楽しいひととき
プラチナ万年筆
#3776 センチュリー 六花
今年で100周年を迎えたプラチナ万年筆。ボディそしてペン先にプラチナを使った100万円という豪華なアニバーサリーモデルを出すなど話題を集めている。しかし、もう一方でこの時期、忘れてはならないのが#3776 センチュリーの限定「富士旬景シリーズ」である。1作目には赤く染まった「春暁」、2作目は爽やかなブルーグリーンの「薫風」と続いた。とくに「薫風」は日本だけでなく海外でも大変な人気ですぐに完売をしてしまったという。これまでカラーで攻めてきた「富士旬景シリーズ」、今回はどんなものになるのだろうと、期待に胸を膨らませてプラチナ万年筆社に伺った。
2作目の「薫風」から限定版の企画を担当されているプラチナ万年筆の秋葉さんが今回はこれですと、見せてくれたのが「六花」というモデルだ。
■ これまでとひと味違う透明ボディ
「六花(ろっか)」とは、六角形の雪の結晶を花に見立てた雪の別称。そして今回もモチーフになっているロッキー田中氏の写真は、すっかりと雪に包まれた富士山。雪に覆われて全ての音も吸い込まれていくような静寂な世界。それを「六花」という雪の結晶で表現したという。
「初ひかり」ロッキー田中氏撮影
今回は何色だろうと思っていたところ、透明軸だった。透明ボディは「富士五胡シリーズ」でも何度となく登場している。すでに色々な透明軸が試みられてきた。しかし、今回は同じ透明でもこれまでとは全く違う印象がある。ボディにはしっかりと彫り込まれた正三角形が連なっている。軸を回転しつつ、その模様に目を凝らすと正三角形が6つ連結しているところが六角形の雪の結晶になっているのがわかる。
これまでの限定シリーズでは、軸に加工されたパターンはどちらかと言うとラインが多かったように思う。今回はラインではなく模様が全面に打ち出されている。しかも、ひとつひとつの模様も大きいので、ひときわインパクトもある。見るからに凹凸感にあふれている。その深さ0.3mmと「薫風」のときよりわずかに深いそうだ。そして溝の角度も156°とかなり広め。その加工には専用のダイヤモンド刃を使い、NC切削とう数値制御による方法で行われている。これは、前回の「薫風」から採用されている加工方式。今回のような複雑な加工を得意としている。
黒を背景にするとジュエリーのような印象に
いつも万年筆のペン先を覗いているルーペ(15倍)でこの六花パターンを覗いてみた。そこには、また違った世界があった。精密に加工された美しい溝がキラキラと輝いている。顕微鏡で雪の結晶を見ているような感じといったらよいだろうか。
■ 新鮮な握り心地
キャップをクルクルと外し、尻軸に優しくセットしてみる。ボディの凹凸がタップリあるためかキャップの尻軸への装着感もいくぶんよい印象がある。そして、握った時の姿がまた違った雰囲気になる。ペン先を走らせてペンが動くたびに六花パターンが光を反射して美しくきらめく。きっと回りから熱い視線を受けそうな書き姿となるだろう。
この六花パターンの凹凸は握る時にもしっかり味わえる。これまでの「富士五湖シリーズ」「富士旬景シリーズ」の中でも明らかに存在感のある握り心地。とは言えゴツゴツしすぎることなく程よいグリップの助けになる。鮮やかなカラーインクを入れたら、雪の結晶越しに透けて見えてきっとキレイだろうと思う。
*
今回の「六花」は加工に手が込んでいるということもあり、価格は30,000円+Tax。ペン先は極細、細字に加えなんと中軟も用意される。ペン先だけが優しくクイクイとしなる感触にはファンも多い。透明軸ボディはすでに持っているという人も多いと思う。そんな中でもこの「六花」はまた違った透明具合を楽しませてくれる一本だ。
シリアルナンバーが刻印されている
プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 富士旬景シリーズ「六花」 30,000円+Tax
限定 2,500本 2019年7月1日発売
協力:プラチナ万年筆
関連コラム
「爽やかな風を感じる万年筆」プラチナ万年筆 #3776 センチュリー 薫風
「早春の夜明けに赤く染まった富士」プラチナ万年筆 #3776センチュリー 春暁
「最高峰の#3776センチュリー」プラチナ万年筆 #3776センチュリー 河口
文具コラム ライブラリー
pen-info SHOP