2017.05.30(382)

「久しぶりに手にしたボールペン」

ポスタルコ

チャンネルポイントペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ここ数年、ボールペンはほとんど使ってこなかった。もっぱら「こすって」書く筆記具をメインにしてきた。こすって書くとは、鉛筆、シャープペン、万年筆といったペン先を紙にこすりつけて書く筆記具。筆圧で表情の違う筆跡が書け、私はこれらを「感情表現筆記具」と呼んでいる。対して転がす系筆記具であるボールペンは、一定の線を書くことを得意としている。これは感情に対して「情報表現筆記具」と私は捉えている。最近ペンを持つことは、どちらかと言うと感情を書き表すことの方が多かったので、必然的にこする系ばかり手にしてきた。そんな中、このボールペンを見てモノとしての魅力に引き込まれた。いっちょ久しぶりに転がしてみようか、という気持ちになった。

これは私の大好きなポスタルコによるオリジナルペンなのだ。私はいくつものポスタルコ プロダクトを愛用している。自らも認めるポスタルコ ウィルス感染者である。実はずいぶん前よりポスタルコのマイクさんからペンを作ることを考えているというお話はお聞きしていた。私も今回のペンプロジェクトにほんの少しだけ協力させて頂いている。マイクさんがペンをデザインするにあたって色々なペンを見てみたいということで、私がわんさと持っている数百本もの国内外のペンをお見せした。手帳で確認したところ、マイクさんが私の事務所にお越しになったのは2013年だった。4年の月日を経て、完成したのがこの「チャンネルポイントペン」なのだ。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

■ 新しさとクラシカルが共存するデザイン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

なんてポスタルコらしいのだろう、それがこのペンをはじめて手にした時の第一印象だった。ポスタルコのプロダクトなので当たり前と言えば当たり前なのだが、ポスタルコというロゴが大きくある訳でも、トレードマークがあるのでもない。それなのに、ペンの雰囲気と言うか、ペンのまわりに漂う空気までもがポスタルコらしい。それを言葉で言い表すのは難しいが、あえて言うなら「道具感」。手にして使う道具。機能や使い勝手から割り出されたフォルムになっているのを強く感じる。

そして、新品なのにすでに10年はこの世に存在しています、という貫禄、風格まで漂わせているところもポスタルコらしい。

■ 「チャンネルポイント」という機構

さて、実際に手にした感触や使い心地を言葉でお伝えしていきたいと思う。まず手にして感じるのは、ペンの長さが少しばかり長いこと。計ってみると15cm、一般的なボールペンより1cmほど長い。私はふだん万年筆のキャップを尻軸にさして使っているので、それに比べたら短い。書きはじめてみると、見た目ほどこの長さは気にならなかった。重さは26g。ズシリとくるという重さではない。プラスチック製ではないぞと感じられる、ほどよい重量感だ。材質は、先軸と後軸がアルミ製、クリップが真ちゅう製。いずれも金属の塊から削りだして作られている。先軸にはほぼ全体にわたってレコードの溝をイメージしたという細かい溝が幾重にも並んでいる。マット塗装と相まって指先をスゥッとホールドしてくれる。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

重心のバランスは、つなぎ目よりわずかに後ろ。やや後重心となるが、握った時の落ち着きはいい。そして、商品名にもなっている「チャンネルポイント」について。ノックボタンはクリップと一体化されている。ペン先を出すには、クリップの根元を親指で押し込む。カチッと金属パーツ独特の甲高い音とともにペン先が繰り出される。「チャンネル」とは、ものが動く溝や水路の意味。ノックを押しこむと、中の機構が溝を通ってカチッとロックされる構造になっている。使い始めは、このカチッとノックする感触は少々硬めだったが、使い込むうちにだんだんスムーズになっていった。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

なんだ、ふつうのノック式とそれほど変わらないじゃないかと思われるかもしれない。しかし、違うのだ。ふつうのノック式はペンの真上から押し込む必要がある。「チャンネルポイントペン」は、真上からはもちろんノックできるが、斜め上から押しこんでいくこともできる。これは何を意味するのかと言うと、ほんの少しだがノックするための親指の移動距離が短くて済むのだ。スピーディにノックできる訳だ。

ちなみにカチッという音を立てずにノックをすることも可能だ。ノックの表面に親指を添え、ノックボタンを横に押し込んでから下にスライドさせる。この方法ならペン先を静かに繰り出すことができる。言わば、サイレンサー機構だ。ペン先を戻すには、ノックを押すのではなく、クリップを横に押しこめばいい。ちなみにこの時も親指の移動距離が短い。クリップの面には親指がフィットしやすい格子状の溝がある。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

■ 馴染みのあるリフィルを使う

この「チャンネルポイントペン」では、三菱鉛筆の以下の各種ボールペンリフィルが使える。ちなみに、これは三菱鉛筆社からオフィシャルにリフィルが供給されている。その橋渡しを私の方でさせて頂いた。

*ジェットストリーム単色タイプ
SXR-38(0.38mm)、SXR-5(0.5mm)、SXR-7(0.7mm)
*ユニボールシグノ単色タイプ
UMR-83E(0.38mm)、UMR-85E(0.5mm)、UMR-87E(0.7mm)

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

私は太字が好きなので、ジェットストリームの0.7mmを入れている。書いてみるとジェットストリームならではのなめらかさをほどよいボディの重みで味わえる。しかも、そもそもの今回のペンのボディが上記リフィル用に作られているので、カスタマイズしたペンとは違う一体感にあふれている。たとえばペン先を出した時のぐらつきは驚くほど少ない。書いていて安定感がある。ジェットストリームの性能を十分に引き出してくれるボディとなっている。なるほどポスタルコっぽいなと感じたのが、ペンの後軸がゆるやかな四角軸であること。ペンを握った時に、この部分はひとさし指の付け根にあたる。ここがフラットであることで握った時の安定感がある。今回のように使っていてフト気づくさりげない便利さが仕込まれていることは、ポスタルコプロダクトではとても多い。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

■ 美しくとめいやすいクリップ

次にクリップ力についても触れておきたい。クリップはペンのトップから張り出している。これは色々なところにクリップをさした時にペンの頭が出ないということを意味する。ポケットにさすとクリップだけが顔を出す。向きは違うがちょうどタイピンのようだ。またノートなどにもスッキリとはさみやすい。スナップパッドの上の部分セットすると、やはりポスタルコ同士ということで実にしっくりくる。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン



久しぶりにボールペンを手にノートに書いてみると、こする系よりかはたしかに線の表現幅こそ少ないが、インクの発色はクッキリとして「情報」が次々に脳に送り込まれていくのを感じる。たまには転がしてみるのもいいものだ。それに気づかせてくれた「チャンネルポイントペン」なのでありました。

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネル ポイント ペン

ポスタルコ チャンネルポイントペン 
590&Co.さんでも販売されています。

YouTube「pen-info」チャンネルでも紹介しています。

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