文具で楽しいひととき
MUCU
Drawing Pencil-Donguri
■ シャープペン メカパーツからスタートした開発
素材そのものの力を引き出し、余計なものをそぎ落としたプロダクトを作り続けているMUCU。
そのMUCUが新たにペンシルを作ったという知らせをうけてペンシル好きの私はスキップをしながらその発表会場に足を運んだ。
「はじめは、このメカパーツがきっかけなんです」
そう言って、MUCUの榎本さんが見せてくれたのはシャープペンの心臓部である芯を送り出すパーツだった。ふつうのシャープペンのメカと見た目が違うのはこれはノック式ではなくボディをツイストして芯を繰り出す方式のためだ。
このメカパーツからスタートしてどんなペンを作ろうかと今回のプロジェクトは始まったのだという。
ペンのフォルムをデザインする上で榎本さんがこだわったのは、手の中の収まりがよく、手と一体化するということだった。インスピレーションのきっかけとなったのが榎本さんのまだ幼いお子さんがよく集めていたという「どんぐり」だった。
小さな手に握られた「どんぐり」。優しい丸みを帯びたそのフォルムがお子さんの手に気持ちよさそうにフィットしていたという。それを大人の手にあわせると、どうなるか・・・そう考え、作り出されたのが、今回のフォルムだ。
言われてみればまさに「どんぐり」の形そのものだ。
■ 子供の頃のように描く
今回のペンシルには素材違いの2タイプがある。
真鍮とアルミニウム。いずれも無垢素材が使われている。真鍮タイプを手にしてみると、ズシリと重い。
程よい重さという生やさしいものではない、これは本格的に重い。重量は140gもある。いつもペンを持つように書いてみるとギクシャクとしてしまった。
その様子を見ていた榎本さんが「本体の重さを芯に載せて腕を動かしてみるんです」そう言ってペンシルを手の中にすっかり収めてクルクルと円を描きはじめた。
同じようにやってみるとたしかにスムーズに描ける気がした。重さを味方につけた描き方だ。先ほど私は、ふつうのペンのように3本の指で支えて書こうとした。そうではなく、子供が 「どんぐり」を握るように手の中にすっかり収めて書いていくのが正しいやり方のようだ。
ちょうど、子供の頃に石ころを手に地面に絵を描いていた時のように。もうひとつのアルミニウムタイプの方は一転してとても軽い。
60gということなので、ペンとしては少々重い部類に入るが、先ほどの真鍮の半分以下なのでとても軽く感じた。
■ クラシカルな繰り出し機構
芯は、1.15mmという太さ。
タップリとしたこの「どんぐり」ボディで描くには、これくらい太い方がちょうどよい。ペン先側にはボディのつなぎ目がある。そこをツイストすると芯がグングン繰り出される。
逆回転させると芯は引っ込んでいく。なお、芯交換は入っている芯を使い切ったらペン先から新しい芯を差し込むというクラシカルスタイル。つまり、予備の芯は収納できない。
■ 書くことを拒否される
普段、ペンを持って書くのと今回は、少々違う感触があった。この「どんぐり」ペンシルを手にすると、「書く」ことは拒否されてしまう。その代わりに「描ける」ようになる。子供の頃にかえって無心に描ける。文字よりもイメージなどを発想させる時にいいかもしれない。
自分の中の描くモードのスイッチがいつもとちょっと違うところに入る、そんなペンだった。
*追記
予備芯が付属されています。薬の容器のようなケースに入っています。
*MUCU Drawing Pencil-Donguri 真鍮、アルミニウム
MUCU
*関連コラム
「書類を月ごとに管理する封筒」 MUCU エンベロープ カレンダー KAKUNI
「保管のことまで考えたノート」 MUCU DEPOT
「手帖」 MUCU ポケットブック
*ペンシル系コラム
「『太』は『細』を兼ねるペンシル」ラミー スクリブル 3.15mm ペンシル「文字という立体物を作る黒鉛芯」e+m ワークマン2.0mm
「芯の交換が待ち遠しくなる」小さな試験管
文具コラム ライブラリー
pen-info SHOP