文具で楽しいひととき
オートポイント
All America Jumbo シャープペン0.9mm
今、私がよく使っているペンの種類は万年筆、シャープペン、そして鉛筆。
その共通点をしいてあげるとすれば、ペン先をこすって削りながら書くということになるだろうか。
特に明確な理由があってこの3種類のペンを使っているということもなく、なんとなくこうなったというのが正直なところ。なぜ自分は最近ボールペンをあまり使わず、万年筆やシャープペンばかり使っているのだろうか。
自分では気づいていないが、きっとそこにはなにかしら理由があるはずだ。なんで万年筆やシャープペンが好きなんだ、どうなんだ、そこのところは…と自分で自分に問いかけてみた。はじめは、無言を守っていた自分がだんだんと重い口を開き始めた。
彼(私のことです)によると、仕事の中心がパソコンになったので、そのパソコンではできないことをペンでやってみたかったんです、と白状し始めた。そうかそうかと、カツ丼を食べさせ(妄想ですけど)さらに話を引き出した。
パソコンはキーボードを打てば常に一定の文字が作られていく。一方ペンは毎回違う文字になる。軽く書けば薄く細い線が、逆に力を入れれば太く濃い線が書ける。つまり、ペンの方が感情が出やすい。中でもその感情表現がより出しやすいのが、万年筆そしてシャーペンなのだという。
たしかに、万年筆はブルーのインクを入れていると、力の入れ具合がインクの濃淡として現れ、鉛筆でも様々な表情の筆跡が作り出せる。その点でいうとボールペンは、どちらかと言うと一定の線を書くのが得意であるように思う。なるほどそうだったのかと自分で自分に納得がいった。
パソコンではなく、せっかくペンを持つからにはパソコンにはできないことをしたい、だからそれを表現しやすい万年筆やシャープペンにしたという訳だったのだ。その感情表現ペンとして最近新たに仲間に加わえたのが、オートポイントの All America Jumbo というシャープペン。
聞くところでは、オートポイントはアメリカではごくごく一般的なペンでキオスクなどでも普通に売られているものらしい。今回、フライハイトさんのネットショップでこのペンを手に入れた。
商品に「 Jumbo 」とあったので、どんなに大きなペンなのかとヒヤヒヤしていたが、実物が届いてみるとそんなにジャンボということもなかった。ジャンボというよりかはやや太軸といった感じだ。
日頃、万年筆をはじめ太軸系のペンをよく手にしている私にとって、この太さ、全く違和感はなかった。
ボディ全体から感じるのは古き良きアメリカを思わせるアンティークな雰囲気。レトロな印象があるが、これはれっきとした新品のペン。新品でレトロが味わえるのはうれしい。軸は多面体になっており、数えたところ11面体になっていた。
11とはなんとも中途半端な感じもするが握ってみると言ったって自然。シャープペンはずっと同じ向きで書き続けていると、芯の偏減りが起きるので、人力クルトガのごとく手元でクルクルと軸を回転させながら書くことになる。この時この11面体が大いなる助けとなる。
■ ユニークな芯の出し方・しまい方
このオートポイント、ふつうのシャープペンとはかなり違う使い方になっている。芯を出すには、ペン先の部分をツイストとさせる。
こうすると、ペン先から芯がグングンと繰りされる。
この時、調子に乗って必要以上に芯を出しすぎてはいけない。というのもツイストを逆回転させても芯は元に戻らないからだ。ここがふつうのシャープペンと最も違うところだ。出した芯を収納するには、芯を出した時とは逆方向にまずツイストさせ、ノートの紙面などに芯をあててグイと押し込んでやる。
そうすれば芯が引っ込んでくれる。
再びツイストして今度は書くために最適な長さに慎重に芯を出して、いい頃合のところでとめる。このように芯を収納する時、逆ツイストして芯を押し込むという2段階の作業が必要になる。ちなみに芯を押し込む時にノートではなく、指先でやろうとしたが、あまりにも固くて引っ込められなかった。
■ 芯の交換方法をも少々変わっている
これは腰をすえて行う必要がある。ボディの後にある消しゴムを取り外すと予備の芯が入っている。
普通なら芯がなくなったら、ここの予備芯から自動で給芯されるものだが、これはそうはいかない。
先程のツイストしたところから引っ張るとボディが分解できる。
すると先端がペチャンコにつぶされたような針金がある。
それをクルクルと回転させると外れ、中に芯を入れるというものだ。1本ずつしか芯は入れられないようだ。
この芯がとても短い。どうやらやや頻繁に芯交換をしなくてはならないようだ。では書き心地について。11面体はどこを握ってもしっくりとくる。
書き心地もいたって自然。書き心地において自然と言うとマイナスのイメージを思い浮かべるかもしれないが、自然な書き心地というのは実はとっても重要だと私は最近感じている。自然に書けるということは「書く」ということから意識が開放されその意識が「考える」ことだけに集中できるようになるからだ。
書くときにペンがあまりにも何かを主張しすぎるとそれが気になって書いていても落ち着かなくなってしまう。自然な中にも心地よさを感じたのは、ペン先のフォルム。11面体から、ペン先に行くに従いってだんだん細くなっているそのラインがいくぶん長め。
だからだろうか、書いている時にスリムなペンを持っているかのような錯覚を受ける。
太軸なのにスリムな印象を味わえるのは面白い。ただ書き心地でひとつ気になったのは標準で付いている芯がやや硬めであったこと。このオートポイントは0.9mm。それにしては、作り出される筆跡は細目だ。
まるで0.7mmの芯あたりで書いているかのような印象を受けた。そこでわたしは0.9mm の2B を入れてみることにした。プラチナ万年筆 プレスマンのシャープ芯をオートポイント用にやや短く折って入れてみた。
もちろん問題なく使える。これで再び書いてみるとこちらの筆跡の方が太く、濃くなってこのオートポイントとの相性としては合っているように感じられた。
後に付いている消しゴムの消し心地はアメリカ製にしては、と言っては語弊があるかもしれないが、なかなかよい印象だった。
ノートにアイディアを書く時、または、取材で一気呵成にたくさんの文字を書く時にこのペンはきっといい仕事をしてくれると思う。
□ 私は、このオートポイント All America Jumbo シャープペン0.9mmをフライハイトさんで買いました。
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