文具で楽しいひととき
文具ショップ プラーナ
鉛筆ホルダー+レザーキャップ
やっぱり鉛筆は使いやすいと思う。
たとえば、仕事中に電話がかかってきて大急ぎでメモを取ろうとする時、私の手は無意識のうちにいくつものペンが入っているスタンドから鉛筆を選び取る。あくまでも無意識のうちに。鉛筆はノックしたりキャップを外したり、書き始める前に特に何もしなくてもすぐに書けるということを私の手はよく知っている。
こうしたいざという時だけでなく、アイデアを考えるときにも鉛筆をよく手にする。とても頼りにしている筆記具だ。しかし、考えてみると私が鉛筆を使うのは、どちらかと言うと仕事場が中心だったように思う。これはそんな鉛筆に「よそ行き」の装いをさせたようなイメージ。さらに心地よく鉛筆と付き合うことができそうだ。
これを企画したのは「文具ショップ プラーナ」の森永さん。文具好きが高じてショップを立ち上げたという方。
■ 短くない鉛筆もセットできる補助軸
今回のアイテムはホルダーとキャップで構成されている。まずは、ホルダーからご紹介したい。
「補助軸」ではなく「ホルダー」とあえて呼んでるところにちょっとしたこだわりがある。「補助軸」は短くなった鉛筆を握りやすいようにまさに補助するためのものだ。実は、森永さんはもともと鉛筆をあまり使っていなかった。最近では大人も使える素敵な補助軸が色々と出ているが、森永さんは使い込んだ短い鉛筆を持っていなかったので、興味あるものの自分とはあまり縁のないものと、そう思いこんでいた。
それから鉛筆を手にしない森永さんにとって鉛筆は、日頃よく使っているボールペンや万年筆と比べて、どうしても少し細過ぎて、軽る過ぎるとも感じていた。ならば、長めの鉛筆が使えて、細すぎず、軽すぎないものを作ってみてはどうだろうかと、思いついた。という訳で「補助」ではなく、鉛筆を快適に使うためのホルダーなのである。
森永さんが目を付けたのが「Stylo Art(スティロアート)」さんの鉛筆ホルダー。
木目が美しいホルダーだ。ただ一つ問題があった。それは、鉛筆を差し込む穴の深さが一定でなかったこと。鉛筆が深くセットできるものもあれば、やや浅くてセットした鉛筆がすこしだけ長く飛び出してしまうものもあった。
そこで、森永さんは Stylo Art さんにホルダーの穴の深さを一定にしてもらうようお願いした。その際長目の鉛筆もセットできるようできるだけホルダーの穴を深くしてもらうことにした。ただ、このホルダーは無垢の木から作っているので、奥深くまで削るのは決して簡単なことではない。そこをなんとかお願いして作ってもらった。
できあがったホルダーの内側はもうこれ以上削ったら反対側に穴があいてしまうというくらい、ギリギリのところまで削ってもらった。新品の約17.5cm ほどの鉛筆をセットするともともとの鉛筆よりプラス2cmくらい長くなる程度。新品の鉛筆をこれでも使えないことはない。ただ、快適に使うという点では、まだちょっと長い。
特注の鉛筆ホルダーを作った森永さんは、その勢いに乗って少しだけ短い鉛筆も併せて作ってみることにした。北星鉛筆さんに依頼して13cm の鉛筆を作ってもらった。
この13cmの鉛筆をホルダーにセットしてみると、スルスル・・・スルスル・・・と深々と収まっていく。
鉛筆を削ったところぎりぎり、つまり、鉛筆の首まできっちりと収まる。
この鉛筆を使えば、はじめから心地よい鉛筆ライフが楽しめるわけだ。ちなみにこの短めの鉛筆は別売りだが、 B 、2B 、4B と柔らかめのものが用意されている。もちろん、この鉛筆に限らず、自分の持っている鉛筆をセットすることも可能だ。
■ 専用キャップにもこだわりが
森永さんが製作を依頼したのは「 Aging(エイジング)」さんという革工房。Aging さんでは、もともと鉛筆用のレザーキャップを展開していた。
それをベースにして今回のホルダーに合うキャップを森永さんは作ってもらった。
このキャップがいいのは、芯先にセットできるのはもちろんのこと、筆記時にはキャップをホルダーの尻軸にスポッとセットできてしまうところだ。
もちろん芯をキリリと尖らせた芯先もほどほどに保護してくれる。
■ 少々ユニークな書き姿
さて、書き心地はどうだろうか。見た目にはややふくよかなフォルムなので、ちょっと太いかもと思ったが手にしてみると意外と自然。
特に日頃から万年筆を使っている私にはすんなりと馴染んだ。ちなみに、実際に握るのはメタルのギザギザ部分なので実はあまり太くない。それから軽さにも自然さがある。ホルダー部分があるので、当然その分重くなってはいる。
見た目にはいかにも重厚なウッドという感じだが、これも意外と軽量。たぶん、軸の内側を奥深くまで削っているからなのかもしれない。この軽さがごくごく普通のペンという感じで、重すぎずかといって軽すぎずちょうどいい。紙の上に芯先を走らせると「シャラシャラ」という音がする。
鉛筆単体では聞こえない音だ。書いている時の芯の振動が木軸に伝わっているからなのだろう。私が手に入れたホルダーはケヤキ。
ウッドならではのナチュラルな風合いがあり、木目もしっかりと堪能できる。なにより気に入ったのは、手にした時のすべらかなさわり心地。これがとても心地よい。このナチュラルウッドに鮮やかなレッドのレザーキャップとの相性も個人的に気に入っている。
よそ行きの鉛筆として使っていこうと思う。
■ 補足
ホルダーはケヤキを含めて全部で4タイプ。右から、ウォールナット、ケヤキ、そして左2本がタモ。(写真には写っていませんが、ヤマザクラというタイプもあります)ちなみに、タモは、野球のバットによく使われている素材だそうです。なるほどたしかにそんな雰囲気があります。
キャップも全部で4色。
これは森永さんが愛用している鉛筆ホルダー&キャップ。いずれもいい味が出ています。
*関連リンク
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