文具で楽しいひととき
ラミー
イコン
2011年2月10日、東京六本木でDKSH 社のフェアが開催された。DKSH とは、以前の日本シイベルヘグナーのこと。つまり、ラミーの日本の代理店である。
ちなみに、ラミー以外にもファーバーカステルなども扱っている。このフェアでラミーの久々の新作を見ることが出来た。その展示の仕方があまりにも控え目で、うっかりしていると見過ごしてしまいそうなものだった。発売を前に速報として、ファースト インプレッションをお届けしたいと思う。商品名は「econ(イコン)」という。
デザイナーは、個人ではなくデザイン事務所の「 eoos(イオス)」。ラミーといえば、ラミー2000のゲルト・アルフレッド・ミュラー氏をはじめデザイナー個人がデザインを手がけているというイメージが強くあったので、これはちょっと意外でもあった。
しかし、以前にもこうしたデザイン事務所が手がけたラミーのペンもあった。日本ではすでに販売はしていないが、ラミーアクセントというペンがそうだ。この時は、「フェニックスデザイン」が行っていた。今回の新作ペン、イコンでは、そのデザイン事務所イオスが担当している。イオスでは、これまで数多くのインテリアや家具などのデザインを手がけてきたという。
■ 流行を追わないデザイン
さて、今回のペン、イコンの第1印象は、これは果たして新作なのだろうか、というものだった。
先程うっかり見過ごしそうになったと書いたが、ショーケースの中で他のラミーのペンと一緒に並んでいるその姿は、新たに加わったという感じはあまりなく、旧来からずっとその仲間であった、という溶け込み具合だった。
もう一つ私が、このイコンを見て感じたのが、ラミーの初期、つまりラミー2000の時代にデザインされたものを復刻したのではないだろうか?というものだった。それほど、クラシカルな雰囲気というものが漂っていた。こうしたことは、ある意味ラミーらしさに溢れているとも言うことができる。
別な言い方をするならば、ペンの外側から見てラミーらしいと感じるよりむしろ、ペン内側からそこはかとなく漂う雰囲気が実にラミーらしいとも言える。ボディはオールステンレス製で、ボディの端から端まで実直なまでにまっすぐなライン。ペンの正しい姿という感じだ。
平たい言葉で言ってしまえば、実にシンプル。しかし、このイコンにはシンプルという言葉だけでは表現できない「何か」が大いに秘められている。
特別にショーケースから出していただき、実際に手にさせていただいた。オールメタルという見た目の割に、意外と持った感触としては軽量な印象。シンプルと思っていたボディには、おもわずオッ!と思ってしまう部分がそこかしこにあった。その一つがグリップ部分。
ここにわずかなスリットがある。そのスリットからは内側の別なメタル部分が、わずかに見えている。今にもこの部分がメカニカルに動き出しそうな雰囲気があるが、残念ながらそういうことはなかった。内側のパーツが見えているだけなのだが、このスリットがあることでシンプルなボディの中で静かなアクセントとして、とても効いている。
ともすると、ステンレスは触り心地がサラサラしすぎるところがあるが、このスリットはグリップの周りに等間隔にあって握り心地という面でも貢献しているようだ。
■ 見応えのあるクリップ
そして、もう一つのこれも静かな存在感を放っているのがクリップ。
一枚のステンレスで作られているのだが、この取り付け具合がちょっと変わっている。ボディからまっすぐにクリップが生えているのではなく、その根元が横から出ているのだ。こうしたクリップはちょっと珍しいと思う。よくキッチン等のフックで、こうした横から張り出したものがあるが、まさにそのようなイメージ。
今回のデザインを手がけたイオスは、インテリアや家具の分野が得意と触れたが、このクリップの取り付け方がその片鱗をうかがわせている。この横張り出しクリップによって、ひとつ大きく違うのは、クリップの下の部分があらわになっているという点だ。一般的なペンでは、クリップの下側というのはクリップに覆い隠されていて、あまり注意がいかないものだが、今回は違う。
そうしたことを想定してか、このイコンでは、クリップの下側に3本のアクセントラインが付けられている。まるでサメのえらの様にも見える。
この3本のアクセントは、まだ、仮のもので正式版ではなくなってしまう可能性もあるという。個人的にはぜひ残して欲しい。
ペンのラインナップとしては、油性のボールペンとシャープペンの2種類。油性ボールペンは、ラミーノトと同じようにノックをしても音がしない方式。そして、シャープペンはで0.7mm 芯タイプのみ。0.7mm を愛用している私としては嬉しい。
ラミーが標榜するバウハウスには、「流行は追わない」「時間軸を考えない」という言葉があるが、イコンはまさにそれを体現したペンであると思う。価格も比較的手が出しやすいのも嬉しい。私は0.7mmペンシルタイプをまずは手に入れようと思う。
ラミー イコン
ボールペンは、こちら
■ 追記せずにはいられずに。。
上記コラムは、展示会での限られた中で手にした時のインプレッションをまとめたもの。その後、予定どおり0.7mmシャープペンを購入した。数ヶ月実際の仕事で使ってみてなるほど、そういうことだったのか、フムフム。。と感心することがあったので、追記として書いてみたいと思う。
ラミーといえば、バウハウスの考え方を取り入れていることで有名。そのバウハウスの書籍をひもといてみると「形体は機能に従う」というフレーズをよく目にする。
個人的にこの言葉がとっても気に入っている。つまりそれは、デザインのためのデザインではなく、すべての形体(デザイン)は、まず機能ありきで、それを突き詰めいていった結果であるということなのだと思う。このラミーイコンにはそうした点が見られる。
まず、グリップ部分。
握りやすいようにグリップ部分にスリットがあるが、これは、ある意味必然から生まれたものだとつくづく感じる。ペン先をクルクルと回転させて分解してみる。すると、スリット越しに見えていたパーツを含めたペン先が 出てくる。
このペン先部分が 一般のペンに比べて結構長い。では、なぜイコンでは、その部分をあえて長くしているのか。実際に使ってみて わかったのだが、これは、ペンを低重心にして快適に握れるようにするためだったのだ。この部分があることで、ペン先が重くなり 筆記体勢に入ると、自然にペン先が下を向く。そういう快適に書くという機能性の結果としての部分なのだ。それをスリットから見せつつ、さらには、それを握りやすいグリップにもしてしまっているのだ。機能を追求した結果がデザインとなりそれがまた、さらなる機能につながっているのを感じる。
次に、クリップの下にあるサメのエラのようなスリットについて見ていこう。
このエラスリットは、単純に見ていてとっても格好いい。しかし、単に格好いいという理由から付けている訳ではないということがやはり子細に見ていく中で わかってきた。イコンは 見ての通りのシンプルボディ。その形は、いわゆる筒スタイル。ここにクリップを付けるときに極限までシンプルにすることが 考えられている。
シンプルに付けると同時にクリップの最大の役割であるはさむ力も決しておろそかにできない。そのバランスの取り方がすばらしい。クリップとメインボディは 別パーツになっている。 実際、鉄の質感を見比べれば 一目瞭然。クリップの根元は片側だけでボディとつながっている。
これだけでは、 強度的に弱くなってしまう。 ここからは 私の勝手な解釈となるが、クリップの根元はボディの内側に深く入り込んでいるのではないかと思っている。その証拠にクリップをぐいと引っ張ってみるとかなりの強度がある。その内側に入り込んだクリップの根元を固定するために先ほどのサメのエラでかしめているのでは、というのが私の推測。実際に使っていく中でこうしたことを感じてしまった。シンプルに見えるが、とても奥が深いペンだ。
iMacのキーボードと並べると、すっごく馴染みます。。
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