文具で楽しいひととき
三菱鉛筆
赤青鉛筆
最近、結構よく使っているのがこの赤青鉛筆。
何を今さら的な筆記具ではあるのだが、改めてこの実力をしみじみと感じている次第。そもそもこの赤青鉛筆に注目するきっかけとなったのは、ポスタルコのマイクさん。以前、インタビューをさせていただいた際に、マイクさんのペンケースの中身を見せてもらった。その中に万年筆やシャープペンに混じって、この赤青鉛筆がさりげなく入っていた。マイクさんはこれを「ウォーム&クール ペンシル」と呼び、主にスケッチの彩色に使っていた。
ヤード・オ・レッドの万年筆でスケッチのアウトラインを描き、そこにこの赤を鉛筆で色を塗っていくというのがマイクさんのスタイル。赤は暖色なので、手前に浮かび上がっているように見え、逆に青は寒色で沈んで見える。これを利用してマイクさんは、企画中のプロダクトのスケッチに色をつけて立体的に描いている。デザイナーならではのなるほどな使い方である。
■ 究極の多機能ペン
それに感化されて私も一本持ってみることにした。と言っても私の場合はスケッチを描くわけではないのだが、まぁ、そんなに高いものでもないしと一本持ってみようと文具店に買いに行ってみた。
私が手に入れたのは三菱鉛筆の「Color Pencil」。
このデザインが何とも言えずいい。大体の赤青鉛筆は、5メートルぐらい離れたところから見ても、すぐにそれだとわかる赤と青で半々に塗り分けられたわかりやすいボディをしている。
しかし、これはナチュラルの木軸で中央にだけ1cm ばかりの赤と青の帯がある。赤青鉛筆は、両方味から徐々に削っていくことになるので、こうして中央にだけマークがあれば、使い込んでいても赤青鉛筆であることがすぐにわかる。早く私もそういう使い込んだ状態にこの鉛筆を持っていきたいものだ。そして、ボディにある「Color Pencil」という書体がまたいい。
どこかの国の輸出用なのではないかと思ってしまうほど、ちょっと不思議な書体をしている。このボディデザインに、すっかりと魅せられてしまった。
■ バーミリオン、プルシャン ブルーという表記
ところでそもそも、こうした赤青鉛筆というものはどのような経緯で誕生したのだろうか。いつもさりげなく、私たちの生活に溶け込んでいるこの赤青鉛筆なのだが、その歴史などを私は全く知らなかった。
そう考えてみると、さらに不思議に感じるのが、その色だ。
普通の赤や青ではなく、「バーミリオン」つまり、朱色と「プルシャン ブルー」という濃紺になっているというのも気になってくる。そこで、三菱鉛筆の広報の方にそこらへんのことをお聞きしてみることにした。
まず、この赤青鉛筆の歴史について。三菱鉛筆さんに残っている資料によると、大正3年(1914)発行の眞崎市川鉛筆(株)の目録に「月星印朱藍色鉛筆」という製品が 紹介されているという。ということで大正3年には、あったということになるようだ。
ちなみに私が愛用している三菱鉛筆の朱藍エコライターは、平成15年(2003)年3月10日の発売ということで、意外にも新しいものだった。
そして、次なる疑問がこうした赤青鉛筆はそもそもどんな目的で作られたものなのか。これは、まだ、筆記具の中でも鉛筆が主流だった当時、その訂正用鉛筆として作られたものだという。
今で言うところの3色ボールペン的な位置づけだったのだろう。赤青鉛筆を今なおよく使っている業種としては新聞社さんがある。知人の新聞記者の方にお聞きしてみると、確かに今も、校正には赤鉛筆をよく使っているという。
その関係でオフィスのフロアには、鉛筆削りが数台あって、結構、頻繁にガリガリという音が聞こえてくるそうだ。ちょっとマニアックな用途としては、競馬新聞の予想チェックでも、今なお愛用されている方も多いのだとか。
そして、3つ目の疑問はなぜ、青でなく藍色、そして赤でなく朱色なのかという点。これは、当時の技術的な面が影響しているということだった。その頃はまだ色鉛筆で鮮やかな色を出すことが技術的にむずかしかったため、 「藍色」が「青色」に相当する色だったという。
その後、顔料の開発により、鮮やかな「青(ブルー)」や「だいだい」を近年作り出すことができるようになった。また、朱色に関しては、「筆(墨汁)→鉛筆」と進んだ中で、墨汁の赤は「朱」だったので、 この赤=朱が基本にあるのではと推察されるとのことだった。
こうした歴史的な背景がベースになって当時の色のまま今も作られているということなのだろう。
■ 赤青鉛筆をマーカーとして使う
では、この赤青鉛筆を私は日々の仕事でどのように使っているのか。まず、これはマーカーとして、とても便利な面がある。ノートなどで重要な部分を目立たせる時には、蛍光マーカーを使うが、その代わりのペンとして、これはなかなか頼もしい存在なのである。
文字の上から塗っていっても、下の文字はしっかりと判読できる。
それでいて、ちゃんと目立たせることも出来てしまう。蛍光マーカーほど目にチカチカせずに程よい感じのマーカーになる。最近は、マイルドライナーなど、あまり目立たないやさしい色のマーカーが人気だが、ちょうどそんな感じで、これは使える。
そうそうマーカーということで言えば、これは当たり前だが、キャップがついていない。つまり、思い立ったら吉日とばかりにすぐに塗っていける。そして、使い終わった後に再びキャップを閉める必要も当然ない。マーカーを塗るという作業は、サッと突然に思い立って使うということが多い。たとえば、10分くらい前から使うぞと、気持ちをだんだん盛り上げていくというタイプのペンとは違う。
そんな点でもこの赤青鉛筆は良いと私は思う。ちなみに、青でマークする場合は、気持ち軽めに塗って薄くした方が下の文字が読みやすくなる。
力加減一つで色を濃くも薄くもできるのも、鉛筆ならでは。力加減ということで言えば、こんな使い方もある。それは2段階マーカーというもの。
まずはじめ、赤鉛筆でマーカーして、その上から、青鉛筆で濃いめに重ね塗りをすると完全に消し込むことができる。
ToDoのハイライト&消し込みに便利かも。
それから用途の二つ目。これもマーカー的な使い方と言えるかもしれない。それは書類にメモを書き込む時。
■ 目立たせるメモ書きに
私の場合で言えば、作成中の原稿が今、何回目の推敲であるかといったことや、ノートなどでもここはちょっと重要ということをこの赤青鉛筆で書き込んでいる。
私たちが日頃使っているペンは、0.7mm~1.0mmくらいのボールペンや0.5mm~0.7mmのシャープペンなので、筆跡はどうしても細い。書類に印刷されている文字も同じように細いものばかり。そんな中で1mm を越える太さの赤青鉛筆の筆跡は、目に飛び込んでくる迫力がある。
以前は、赤のボールペンで、そうした注釈を書き込んでいたが、目立ち度は全然違う。つまり、たくさんの書き込みの中で、埋もれないというのがある。
このように何かの上に書き込むだけでなく、まっさらな紙に書き込むのにもいい。たとえば、メモ。太い筆跡で、こちらも目立ち度は抜群。
この赤青鉛筆の書き味が普段私たちが使っている他の筆記具とは明らかに違う。それは色鉛筆ならではの滑らかさに満ちているということだ。
滑らかと言えば、同じ三菱鉛筆にジェットストリームがあるが、それとは全く別物。
たとえるなら、ジェットストリームはF1などのカーレースの様にスピーディさあふれる滑らかさであるのに対し、赤青鉛筆は消してい急がずゆったりとしていて優しさのある滑らかさとでも言ったらいいだろうか。仕事中に、この赤を鉛筆を手にして書くと何だかホッとする。書くということで言えば、この赤を鉛筆消しゴムで消すこともできる。
と言っても完全に消せる訳ではなく、3割が2割5分程度は残ってしまうが、大方は消すことができる。しかも、消す時はかなりの力を要する。まっ、書きかえられるのは便利ではあると思う。
こんな感じで私は赤青鉛筆を使っている。
■ 赤青に限らず色鉛筆も使える
先ほどのマーカー的な使い方で言えば、何も赤青鉛筆にこだわらなくても、他の色鉛筆でもいいのかもしれない。たとえば、マイルドライナーの様にグレーの色鉛筆というのもありだと思う。試しに灰色の色鉛筆を買ってきてみた。
灰色の色鉛筆といっても、売り場に行ってみると、灰色だけでもたくさんの種類があって驚いた。ちょっと青みがかったグレーや濃いグレー、薄いグレーなどなど。そこで、濃い目のものからやや薄めのものまで何本か買ってきた。
それらを使って自分で書いたものの上をマーカー的に塗っていろいろ試してみたが、消しこむだけであれば、基本どのグレーでも問題はなさそうだった。
もし、下の文字を見せつつ消しこむというマイルドライナー的な使い方をする場合は、比較的薄目のグレー、三菱鉛筆でいうと、シルバーグレーの565やトンボ鉛筆あれば、 PIGEON GRAY の P 10辺りがよさそうな印象。まぁこれは、個人の好みの問題なので、興味のある方は、いろいろ試してみるといいと思う。
また、灰色に限らず、そもそも色鉛筆にはまさに色々な色があるので、他の色を選んでみるのも楽しいかもしれない。試しに、私は、ちょっと珍しいブロンズ色というのを買ってみた。
他ではなかなか見かけない色あいなので、これで伝言メモを書けば、すぐに私だとわかってもらえる。
赤青鉛筆以外にいろんな色鉛筆を使っていく時には、以前に紹介したツイン補助軸を使うといいと思う。
これに自分の好みの色を組み合わせてセットすれば、今回紹介した赤青鉛筆に限らず、自分だけの○○鉛筆を作ることも可能。赤青鉛筆を手にしたことで、図らずも色鉛筆の実力を再認識する結果となった。
□ 赤青鉛筆とひとくちで言いましても、いろんな種類があるようです。
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