文具で楽しいひととき
YORO
PEN
ペンを持って書く時、私はペンの種類によって自分の中の「モード」が切り替わる。例えば、万年筆を持って書くときは「万年筆モード」。これは、かる~い筆圧でリラックスしながら書くイメージ。
■ ペンによって握る時の角度が違う
そもそも万年筆は、ペン先が紙に触れてさえいれば、インクが出てくるので、その万年筆の利点を最大限に活かした書き方とも言える。筆圧だけでなく、手にしたときのペンの角度も違う。
私の万年筆の握り方は、ペンの中程を軽くつまみ、親指と人差し指のつけ根を枕のようにしてペンをゆったりともたせかけてあげるといった具合。つまり、かなり寝かせて書いている。実際に計ったことはないが、目測で大体45度といったところ。
一方、「ボールペンモード」というものもある。この場合は万年筆よりも強めの筆圧で、ペンを握った時の角度が一挙に大きくなる。
ご存じのようにボールペンにはペン先に小さなボールがある。そのボールが紙にしっかりと触れ、しかもボールがスムーズに転がらなくてはいけない。そのためにはある程度の角度が必要となる。仮に万年筆のようにボールペンを寝かせて書こうとすると、ボールはうまく転がらず、ボールをかしめている部分にひっかかってしまう。
このように、ペンの種類によって、モードを切り替えて書いている。きっと、多くのかたもそれぞれ独自のモードをお持ちだと思う。私は、普段万年筆で書くことが多い。そうすると、手はすっかりと「万年筆モード」に慣れきってしまう。そんな中、急にボールペンに持ちかえると、手がモードを切り替えるのが大あわてになってしまう。
先日、とある方から面白いペンをご紹介いただいた。これはボールペンなのだが、
万年筆の時のようにボディをたっぷりと寝かせて書くことできるのである。それがこの「YOROPEN」。
■ クランクのようなペン先
特に新発売ということでもないので、文具好きの皆さんの中にはこれまでどこかで見たことがあるという方もきっと多いと思う。私も以前にロフトで同じようなものを触ったことがある。このペンの最大の特徴、それは説明するまでもないが、ペン先のスタイルだ。
ペンの軸はまっすぐなのだが、ペン先のグリップあたりを過ぎたところから急に何かを思い出したかのように上を向き、そして何もなかったように再び前を向いているという、ちょっと変わったスタイルをしている。この形、ちょうど人が何かを指さした時の手の形に似ている。
そもそもこのペンの開発者 Liu氏の娘さんが障害をお持ちで、そうした障害をもった子供でも難なく書けるペンが欲しい、そんな思いで開発されたのだという。商品名の「YOROPEN」という名もその娘さんの名前から取ったという。
では、このユニークなペンの使い心地をレポートしてみよう。プラスチックボディなので、普通のボールペンと同じぐらいの軽さだ。ラバーになったグリップはやや膨らみがあり、握りやすいように三角軸にもなっている。ラバーグリップそして三角軸ということ自体、特に珍しくもない。
しかし、これが面白いのは、このラバーグリップが自分の好みに合わせて、ねじることができるようになっている。
これは、メーカーも公式に認めているところで、例えば、雑巾のように絞ってラバーグリップをらせん状にするもよし、全体を右側また左側へとねじって自分の好きなグリップクリックに変えられる。しかも、このグリップは、変形させた形のまま維持することができる。
実は、このことにより、1本で右利き、左利きの双方に対応できるようになっている。自分の握りに合わせてクリップを調整し、紙の上に例の変わったスタイルのペン先をのせてみる。
■ 新鮮なペン先の眺め
これまでない眺めなので正直かなり違和感がある。。しかし、実際に書いてみると、そのユニークな形ほどには、変わった書き味でもなかった。
これはきっとペン先のついている位置がペン軸の延長線上にちゃんと来ているからなのだと思う。幾ら途中が曲がっていようとも、最終的にはいつものところにペン先があるので、それほど違和感がないのだろう。このスタイルならではのメリットとしては、まず、ペン先の周りの見渡しがいいということがあげられる。
細かなところ細かな文字を書くときに、便利かもしれない。また、これがこの「YOROPEN」の最大のメリットだと思うが、手にあまり負担がかからないという面もある。ボールペンに限らずどんなペンでも、長時間書き続けていると、指に疲労感が出てくる。私は特に親指に疲れを感じることが多い。
しかし、このペンは親指より人達指の方に力を入れて書けるようになっている。人差し指でクリップを下にやや押し込んで書くようなイメージだ。
そうそう本題のペンの寝かせ具合は、いつもの「万年筆モード」の時と同じくらいでOKだった。この状態でもペン先のボールは気持ちよく転がる。さすがに万年筆のように軽い筆圧とまではいかないが、少なくとも角度は変えずに済む。
万年筆でさんざん書いた後にボールペンに持ち代えた時にも、おおきく「ボールペンモード」に変える必要はなさそうだ。ペン先がこの様に大胆に曲がりくねっているので、気になるのは、中に入っているリフィルがどうなっているかということがある。
まさか、曲がったペン先の先だけでに短いリフィルが入っているということもなかろう。説明書によると、リフィルの交換はできないとある。
できないと言われると、無性にどうにかしてみたくなるものだ。ボディのあちらこちらを引っ張ったり、ねじったりしていたら、ラバーグリップのあたりがクルクルと回転し始めた。ペンを分解してみると中にはボディと同じくらいはある長いリフィルが入っていた。曲がりくねったペン先の中をしっかりとくぐり抜けていた。
■ ペンシルタイプもある
ペンシルといっても鉛筆でもなければ、シャープペンでもない。「ロケットペンシル」といった方がわかりやすいかもしれない。
芯のついたユニットが中に8個入っていて、 芯を交換したくなったら、そのペン先ユニットを引っ張りだし、それをペンの後ろ側から差し込み押し出してあげれば、新しいものが繰り出すいう仕組み。といっても、この曲がりくねったペン先である。
実際に芯を交換する際は、一旦グリップからボディを分解してボディをまっすぐにしてあげないといけない。このペンシルで私はちょっと気になることがあった。それは、ペンシルならではの芯の偏減りという問題である。鉛筆は書いていくに従い芯は当然削れていく。
同じ角度だけでひたすら書いていると芯先はまるで竹を日本刀でスパッと切ったような形になってしまう。こうならないよう、普通は軸を回転させてながら書いている。しかし、やはりここでもこの曲がったペン先が問題となる。これはどう対処すべきか。その対策として、2つの方法が考えられる。
ひとつは、芯ユニットだけを回転させるというもの。そして、もう一つはかなり大胆なやり方だがペン先の曲がりなど気にせず、思い切って軸ごと回転させてしまうというものだ。こんな特徴的なスタイルのペンだが、軸を回転させても、書けないこともない。ただ、逆立ちをして書いているようでかなり違和感がある。
実用上は前者の芯ユニットだけ回転させるというのが現実的のようだ。
このペンシルのパッケージには子供用とある。そのためだろうが、先ほどのボールペンよりも、グリップはやや細めになっている。ボールペンもペンシルにもキャップがついているが、ボールペンの方だけは、クリップがついていてポケットにさせるようになっている。
形はかなり斬新だが、普通に書くことができる。特にボールペンを寝かせて書きたいという人には、よいと思う。これはこれでなかなか面白い書き心地が味わえる。
■ 記事作成後記
*ボールペンタイプは、黒インクと青インクの2種類。字幅は日本人の我々でもなじみやすい細字系。やはり同じ漢字文化の台湾製だからでしょう。
*ボールペンタイプにはキャップにクリップが付いています。ボディに合わせてなのでしょうか、クリップまで曲がっています。
その付け心地はまずまずですが、ペンが中でちょっと曲がった状態になってしまいます。このペンは、「曲がる」ということに徹底してこだわっているようです。
こちらで各種YOROPENは、販売されています。
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