文具で楽しいひととき
三菱鉛筆
uni-ballシリーズ
今や、日本の製品は海外のあらゆるところに輸出されている。車をはじめ、家電製品など数え上げれば、きりがないほど。文具もしかりで、海外では品質面で高い評価を得ているようだ。文具に限らず、ひとたび海外に輸出されると、商品名が変わったり、場合によってはデザインも変わることもある。その国にあわせてと言うことだろう。
■ 新鮮な輸出仕様デザイン
私が、ISOT(国際文具・紙製品展)の事務局に在籍していた頃、日本の主要メーカー各社が、自社ブースの片隅に輸出仕様の文具を展示していたのをよく見かけた。それが、なんともデザインやカラーリングの良いものばかりで、私はとても興味を持ったものだった。
メーカーの担当者の方にこれは、日本では売らないんですか?」と聞いてみると、決まって、「輸出用ですから、日本では売らないです。」という返事が返ってきた。「日本でも売ったらきっと売れますよ!」と切りかえしてみても「土橋さんのようなマニアックな方は少ないですから・・・・」本当にそうなのだろうか?
先般、夏休みを利用して、イタリアに出かけた。現地の文具店で、私の目を引いたのは実のところそうした日本メーカーの輸出仕様文具だった。ここぞとばかり、しこたま買ってきた。わざわざ、イタリアまで行って、日本の文具を買ってくるのもおかしな話だが、ここでしか買えないということが私を購入への駆り立てたのであった。
今回は、その中から三菱鉛筆社のuni-ballシリーズのうち、特に私は気に入った2種類のペンをご紹介します。1つ目は「signo」。シグノと言えば、三菱鉛筆さんが出しているゲルインクペンの定番商品。
日本のシグノは残念ながら事務用品然としていて、あまりもデザインが優れているとは、言いがたい。一方、この輸出仕様は、かなりいいデザインをしている。ボディは細身で、スタイリングはとてもシンプルな仕上がり。
半透明のプラスチックボディはくもりガラスの様になっているためか安っぽさは感じられない。キャップを開けてみると、乳白色のこれまた半透明のグリップが現れる。
このグリップには、ひと仕掛けが施されていて、握りやすいように、三角軸状にカットされている。機能面だけでなく、メリハリの効いたデザインとなっている。
書き味については、日本のシグノと同じなので、詳しい説明の必要はないだろう。ただ、ペン先の太さは0.7mmと、日本の我々からするといくぶん太めだが、これがどうやら欧米のスタンダードのようだ。
もう1つは「fusion」というペンだ。
■ インクが透明!
私の知る限りでは、まだ日本に紹介されていないと思う。まず、目に飛び込んでくるのがインクの色である。なんと、インクが無色透明になっている。
黒文字用であろうと、赤文字用であろうとも全てのインクが無色透明なのには、いささか驚いた。この無色透明という特徴を最大限に活かしたデザイン的アプローチがしっかりとなされている。
ボディには、透明度の高いパーツが使われていて、インクの透明度とあいまって、とても清涼感がある。さらにキャップのあたまには、インクの色を示すパーツが埋め込んである。まるで、小さな宝石のような感じがする。
さて、透明のインクで、はたしてちゃんと文字が書けるかと言えば、黒は黒文字が、赤は赤文字がちゃんと書ける。ちょっと不思議な感じがした。ただ、インクの色はこころなしか、薄いような気がする。
海外に行くと、日本の良さを再認識して帰ってくることがあるが、私の場合は文具を通じてそれを感じてしまった。品質の良さとデザインの良さが融合した輸出仕様の文具。皆さんも使ってみたいと思いませんか?こうした、ペンたちが故郷である日本に里帰りしてくれることを願ってやなまい。
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