文具で楽しいひととき
モンブラン
マイスターシュテュック 146
「男の三種の神器」というものがある。腕時計、万年筆、ライターの3つ、昔は腕時計はオメガ、万年筆はパーカー、ライターはロンソンだったが、今はロレックス、モンブラン、ダンヒルらしい。私はタバコはやらないので、ライターには縁がないが、腕時計と万年筆は大好きだ。腕時計はオメガ派で、万年筆はここぞという時にはモンブランを取り出す。
ここぞというのは、ワープロでタイプアップしたレターの締めくくりに直筆の署名をする。といった場面や、ちょっとあらたまった時の手紙。重要な会議や商談の時などである。今回ご紹介するのは、そんなここぞという時に私が使っているモンブランの万年筆マイスターシュテュック146。モンブランと言えば、トレードマークの「ホワイトスター」がある。これは山の頂上に雪が積もったイメージのデザインである。
ペン先にある「4810」の数字はヨーロッパ最高峰のモンブランの標高を表わしている。ちなみに、日本のプラチナ萬年筆のペン先には「3776」とある。以前、同社の方にお聞きしたところ、日本一の万年筆という想いをこめて、富士山の標高を入れているという。(あっぱれだ)
■ 20代で購入した146
話はモンブランに戻って、私はこのマイスターシュテュックを入社して数年で購入した。まだ20代だったが、一生ものとして永く使えるものをと思いそれなら、早くから良いものを購入して自分で使い倒してミドルエイジになった時に、自分も万年筆もいい味が出ていればいいなぁと思ったからだ。ペン先はMを選んだ。146は程よい太さの軸が特徴だが、その太さにはやはりペン先もある程度太くないとなんとなくバランスが悪いような気がした。146の上には149というさらに太軸があるが、シャツのポケットに入れたりする携帯性を考えると私の場合146がちょうどよかった。
私の146は、はじめから書きやすかったわけではなく、購入したての頃は、なんて書きづらいんだと思ったことも実はある。その後も要所要所で使い続けて、しばらくすると、万年筆が私の書き癖を把握してくれたようで滑るようにヌメヌメと書けるようになってきた。車で言うところ慣らし運転が終わったというところだろう。何でもそうだが、おろしたての道具を使い続けて、自分の体の一部にするという行為は道具好きの私にとって至福の作業となる。
【ちょっと長い追記】
このコラムを書いてから11年の月日が経過した。
改めて今、感じる146のインプレッションを少々。ここ最近146の出番は実のところ減ってきていた。別に146が気に入らないという訳ではない。ただこの時期私の手にパイロットやペリカンなどがしっくりときていた。他の万年筆を使い続けてふと、146を久しぶりに手にして書いてみた。
すると以前よりも書きやすく感じられるようになった。引き出しで休んでいた146が熟成した訳ではない。むしろ熟成したのは私の方かもしれない。「やっぱり146っていいな~」としみじみと感じた。
具体的に言葉にはしづらいが。。。ペン先のスムースさであったり密度の詰まった樹脂製ボディ、キャップを尻軸にセットして握った時のホッとするバランスの良さなどなど。。安心の書き味がある。それからこれもあるかもしれない。以前はモンブランに対して私の方が少し遠慮していたところがあったかもしれない。
■ 道具と割り切ったら距離が縮まった
それが今はしょせんは「道具」と割り切ってつきあえるようになった。それが146と私の距離を数センチだけ縮めてくれたのかもしれない。私の146は手に入れてからかれこれ現在20年くらいが経っている。現在私は48歳。中身は別として年齢だけ見ればミドルエイジだ。当初、自分も146もミドルエイジになっていい感じになっているのだろうと期待したが、確かにそれはあったのかもしれない。
30年後はまた違った印象になるのだろう。インクだけを入れ続けてペン先もボディもずっと同じという万年筆は他の筆記具と違って時の流れをタップリと味わえるというのを再認識した。
2015年9月25日追記作成
□ モンブラン 146 万年筆
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