文具で楽しいひととき
自作
傾斜台
前から気になっていた。それはデスクの盤面を少しだけ斜めにした台のことだ。なんというアイテムなのか、名前すら知らなかった。ネットで調べてみると、どうやら「傾斜台」というらしい。このアイテムを初めてリアルで見たのは、とある取材で伺った漫画家の方の仕事場だった。作画をするデスクが斜めに傾いていた。何か板みたいなものをデスクの上に置いて傾斜を作り出していた。これはどこで売っているのですか?と聞くとご自分で作ったという。デスクが自分の側に起き上がっていて、良さそうだなと思った。また、ついこの間もYouTubeで本の校正を仕事にしている方の動画を見ていたら、やはり同じような傾斜台を机に置いて、書いたり読んだりをしていた。
私も斜めの台で仕事をしてみたくなった。
■ ありモノで作ってみた
さて、どうやって作ってみようか。まずはホームセンターあたりに行って台となる板を探しに行こうかと車の鍵を手にした。いや待てよ。家の中に何か代用できる板があるかもしれない。鍵を置いて物置を覗いてみた。グルリと見回すとちょうどいいものがあるではないか。息子が学生時代に使っていた机の側面の板なのか、引き出しの裏面の板なのかわからないが、とにかくいいサイズの板があった。サイズは70cm×46.5cm。これを自分のデスクに置いてみた。次は傾斜をつける方法だ。角材あたりを挟むことも考えた。でも、角度の調整ができた方がいい。そこで、わんさと持っているワイヤースタンドを2つ奥に挟み込んでみた。
色々と角度を調整して、ひとまず10度ちょっとに設定してみた。うんいい感じだぞ。
■ なんでもっと早く導入しなかったのだろう
実際に仕事をしてみた。キーボードとマウスを置いてメールを打ってみた。とても自然な打ち心地だ。これまでデスクがフラットな状態の時でも別段不満はなかった。でも、こうして少し傾斜をつけてみると、新たな快適さに気づかされた。もともとある程度ブラインドタッチで打てていたけど、それがもっとしやすくなった。モニターを見ていても、キーボードが少し斜めになったことで視界の下の方にキーボードが入ってくるのだ。視線を落ち着かせて打っていける。それに姿勢が必要以上に前かがみにならず良い姿勢をキープできる。
次に、ノートに書いてみた。傾斜台の上にノートを置くと、スルスルと滑り落ちてしまった。何か滑り止めをしなくてはいけない。キーボードは裏面に滑り止め加工があったから大丈夫だったが、ノートにはそうしたものがない。そこで傾斜台の上にMIWAXのデスクマットを敷いてみることにした。ズレないようにマスキングテープを両面仕様にして四隅に貼って固定した。これでまずまずの滑り止めになった。マットな質感は手触りも良い。原稿用紙や一筆箋を一枚だけ置いた時の書き心地もよくなった。直接板の上に置くとカツカツとした書き心地があったが、ソフトになった。
傾斜台がデスクの上でズレないように傾斜台の手前にマスキングテープをデスク側に貼ってみた。こうするだけでわずかな段差ができて傾斜台がデスクの上でずれなくなった。位置決めの目印にもなる。
スタンドと板がずれないように設置部分にマステを貼っている
この斜めの状態でノートを置いて書いてみると、これも実に快適だった。紙面が自分の側に起き上がってくれて、さぁ書いてごらんと誘ってくれている。その誘いに身を委ねて両手を広げて輪の中に入っていく、、そんな感じだ。なんでもっと早く斜めにしなかったのだろうと悔やまれるくらい快適だった。
ただ一つ気になることもある。万年筆で書いている時の紙とペン先の接地角度だ。これが果たしてこれまでのフラットなデスクの時と同じなのかということなのだ。この角度を私はとても気にしている。万年筆は書き続けていくとペン先が自分の書き癖に合わせて馴染んでいく。この調子が変わってしまうとこれまで積み重ねてきた苦労が台無しになってしまうのではないか。斜めになってもいつもと同じように万年筆を握っているし、特にペン先を立てたり、逆に寝かせたりもしていない。だから多分大丈夫なような気もするのだが。。。どうなのだろうか。
*
傾斜台を導入したことで、デスク周りの景色は大きく変わった。もともと私はデスクのコックピット化を意識してきた。手帳スタンドを立てたり、時計を自分の側に向けたりと自分を中心に仕事道具を配置してきた。この傾斜台も自分にノートやキーボードを向けているので、まさにコックピット化である。これはずっと続けていこうと思う。
傾斜台いろいろ
スリーワイヤースタンド
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