2020.03.03(451)

「仕事の合間に気持ちをほぐすアイテム」

BRAUN

電卓など

気持ちをほぐすアイテム 本棚

私の仕事場である事務所にはモノがとても少ない。

仕事場は文字通り「仕事」に集中して取り組む空間だと考えている。仕事をしていく上で本当に必要なものだけでかためている。モノは最小限にとどめ、むしろ「ない」という空間の方を大切にしている。余計なものが目に入ると集中している時のノイズになってしまう。そうした空間に身を置き、時計式ToDo管理ふせんでキチッキチッと時間を定めてひとつひとつの仕事を進めていく。ストイックなまでに仕事をしていくのだ。

仕事場

でも、それだけだと息が詰まってしまう。

仕事場のほんの少しだけ、ほんの一角だけ気持ちをほぐすアイテムを並べている。ただ、それらはデスクまわりではなく、デスクから少し離れた本棚にまとめている。あくまでもデスクは集中空間と捉え、余計なものは目に入れないという基本は貫いている。

■ 使うモノをキレイにディスプレイ

気持ちをほぐすアイテム 本棚

日々の仕事で必ず手にする道具は、限られている。私の場合で言えば、0.7mmのシャープペン、一軍万年筆数本、鉛筆、グレーの色鉛筆、消しゴム、そしてノートくらいのものだ。それらはデスクの上に常時置いている。その一方で必ずとは言わないが、たまに手にするものもある。たとえば電卓やハサミなどだ。そうしたものはデスクではなく、ちょっと離れた本棚に置いていて、使うたび本棚に取りに来る。これらを本棚にポンとそのまま置くのではなく、少しディスプレイっぽく並べている。アドラーのハサミは漆の器に載せて、刃先は万年筆枕という言ってみれば箸置きのようなものの上にそっと置いている。ちなみにこれも漆塗り。BRAUNの電卓は白い料理用バットに入れて、その隣には味のある釘を添えている。あと、本棚の本を読んでいて、線を引いたり書き込みをする時のために鉛筆も1本だけ置いている。これは箸置きを使ってディスプレイをしていたりもしている。

気持ちをほぐすアイテム ユンハンス タイマー アドラー ハサミ

BLACKWING 602 鉛筆

こうした使う道具をディスプレイっぽく並べるだけで、目にするたび手にするたび心が和らいでくる。

■ 気持ちをほぐすアイテム

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

先ほどは、使うための道具をディスプレイするというものだった。今度は道具とかではなく、ただただ眺めて楽しむだけのものだ。計算したり、切ったり、書いたりといった具体的な役割をこなすことはできないが、私の気持ちをほぐすという役回りだけはしっかりと果たしてくれている。

たとえば、ガラスビンの中に使い切った短い鉛筆を入れている。日頃から鉛筆を愛用している私としては使い切ってもはや書くことできなくなった鉛筆も大切な存在。とは言えこれまでは引き出しの奥に入れて、すっかりその存在を忘れ去ってしまうことが多かった。しっかり働いてくれた鉛筆の労をねぎらおうと無印で買った密閉できるビンに入れてみた。まだ数本しか入っていないが、このビンをそうした鉛筆で一杯にするのを夢見ている。骨休めしている鉛筆を眺めると、気持ちがほぐれてくる。

気持ちをほぐすアイテム 使い終わった鉛筆を入れるボトル

気持ちをほぐすアイテム 使い終わった鉛筆を入れるボトル

そして、これはポストカードをディスプレイしているものだ。デザインが気に入ったポストカードは誰しも一枚や二枚くらいは持っていると思う。それをこの窓付き封筒のリングノートに入れている。これはトラベラーズファクトリーで買ったものだ。それを自立させてフォトフレームのようにしている。ページをめくれば違うカードに気軽に変えることもできる。

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

気持ちをほぐすアイテム カードスタンドノート

ペンの中でも、今はあまり仕事で使っていないものは試験菅に入れてディスプレイしている。先ほどの短い鉛筆の時もそうだったが、そのままポンと置いているだけでは心は動かされない。ただ置いているペンとしか感じられない。それが手に触れられない密閉された容器に入ったとたんに輝きを増す。なんだかワクワクしてくるから不思議だ。ペン売り場のガラスケースに入れられたペンと同じ効果なのだろう。

気持ちをほぐすアイテム 試験管にペンを入れる

■ 栄養剤としての本

気持ちをほぐすアイテム 本棚 ドライフラワー

ここで言う本は文字が書かれているものではなく写真集だ。仕事が立て込んできた時、頭の中には色んな情報が入り込んで自分自身が一杯一杯になってしまう。そうした時に写真集をパラパラとめくって眺める。ジャンルとしては、個人的に気に入っているデザイン系のものが中心。たとえば、BRAUNのデザイナーだったディター・ラムス氏の作品が収められた写真集をはじめ、BRAUN展の図録、北欧デザインのプロダクトが美しい写真で掲載されたもの、タイポグラフのヘルベチカといった顔ぶれ。ちょっとユニークなところではドイツのショップ「manufactum」のカタログもある。ここには文具だけでなくキッチン用品、ガーデニングツール、家具など様々なプロダクトが美しい写真で掲載されている。スパルタンな品揃えが特長。こうした写真集をパラパラとめくって混乱した頭を落ちつかせていく。私自身が憧れているデザインを見ることで自分自身を整えていくのだ。

Manufactum30

Manufactum20



いつもこのコラムでは、仕事に使うと便利な文具を中心に紹介している。しかし、今回は仕事の手を休めた時に眺める文具をはじめとしたアイテム。言わば、非仕事道具。

会社勤めをしはじめた時に先輩の方からこんなことを言われたことがある。仕事だけでなく、「遊ぶ」ことも大切だと。その頃は、全くその意味が理解できなかった。先輩は一体何を言っているのだろうと不思議に感じていた。でも今は、すこしだけ分かってきたように思う。仕事が大切な一方で、仕事をしていない時をどう過ごすかもとても大切なんだと。私の場合で言えば、日頃文具の仕事ばかりをしている。以前はずっと文具のことばかりを考え続けていた。それではバランスが崩れてしまうとフト気がついた。文具をよりしっかり考え、味わっていくならば、文具を手にしていない時間をどう過ごすかがとても大切なんだとだんだんと分かってきた。逆説的だけど、その時間をどう過ごすかが、仕事に大きく影響していくのだ。あのとき先輩の方が「遊び」と言ったけど、仕事をしていない時間をしっかり過ごせということを意味していたのかもしれない。

集中して仕事をした後に、ふと気が休めるものを用意して張りつめた気持ちの糸をすこしだけゆるめている。

*2/26〜3/24までデルフォニックス渋谷(渋谷パルコ4F)の「ロルバーンギャラリー」にて、私の「土橋正の心地よく仕事するための文具・道具」というスモールエキシビションが開催されています。今回ご紹介した気持ちをほぐすアイテムも展示されています。

ミドリ スパイラルリングノート 窓付封筒
ディーター・ラムス「As Little Design as Possible」

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