文具で楽しいひととき
KUM
鉛筆削り マスターピース
鉛筆削りは、奥が深い。
ここで私が言う鉛筆削りとは手持ち式のもの。穴に鉛筆の芯先を入れてグリグリと回して削っていくものだ。ハンドルをクルクル回していくタイプと区別する意味で、私は勝手に「手持ち式」と言っているが、聞くところによると「ドイツ式」とも呼ばれるそうだ。たしかに、このタイプはドイツのメーカーが多い印象がある。
そのうちの一社、KUMがこのたび「マスターピース」という力のこもったタイプを発売した。「マスターピース」とは、「傑作」という意味。自らこの名前を付けるということからして期待が高まる。そのディテールを見ていくことにしよう。
■ ドイツ職人による手作り
メインボディはつや消しのメタルボディ。手にせず見ただけで金属の塊から削り出されたという「無垢感」がタップリと伝わってくる。手にすると軽い。こうしたつや消しシルバーで軽いとなれば、アルミニウムが思い浮かぶ。しかし、これはアルミではなく、マグネシウム製。
マグネシウムはとても硬い素材だ。その分、加工の際に精度を出しやすいということがあるそうだ。ドイツ職人の手作業によりひとつひとつ加工され、とりわけこだわったというのが穴の角度の精度だという。
■ 2つの穴で削る
改めて説明するまでもないが、本体には2つの穴がある。こうした2つ穴タイプと言えば、KUMには「オートマチック」というプラスチックボディのものがある。①の穴で鉛筆の木軸だけを削り、②の穴で芯だけを削っていく。基本的な構造は同じだ。ただ、細かなところで微妙に違っている。たとえば、穴の大きさが違う。マスターピースは②の方が小さくなっている。それに伴い、刃の取り付け位置もずらされている。そして、ブルーのパーツのストッパーが取り外せるようになっている。これは何を意味するかというと、①の穴で木軸を削る時、いくらでも削り続けられるのだ。つまり、芯だけを伸ばしていける訳だ。いい大人がそんなことはしないと思うが、「やろうと思えばできる」という選択肢が用意されているのは、いい大人の心を躍らせる。
■ 8度というキリリとした芯先
では、実際に削ってみる。まず、①の穴に鉛筆をさしこむ。なるほど、ピタリと鉛筆が穴にフィットする。これが手作りによる精度なのだろう。グリグリと回していくと、リンゴの皮がキレイにむけていくがごとくつながった削りカスがどんどん作り出されていく。あまりのキレイさに、カスと呼ぶのもためらわれるほどだ。同時に円柱状に削り出された芯先が少しずつ見えてくる。ストッパーにぶつかったところで鉛筆を引き抜く。
次に、その芯先を②の穴に入れて、同じようにグリグリと回転させる。先ほどの①では、鉛筆を差し込んだ時にピタリとしたフィット感があった。しかし、②に入れてみるとブカブカしている。削り味も明らかに違う。さっきは木を削っていたので、ザクザクだったが、今度は芯なのでシャリシャリという感触。削り進めていくと穴に鉛筆がピタリとフィットしていく。これが削り仕上げの合図だ。鉛筆を引き出してみる。キリリとした美しい削り仕上げ。KUMのカタログによると、この芯の角度は8度だという。芯先をいきなり角度で言われても少々とまどってしまう。KUMの一般的な鉛筆削りでは12度というから、相当なとんがりである。
ちなみに、同じキリリ派のM+R 0601と比べてみた。キリリ具合はほぼ同じ印象。M+Rはシャープラインというアウトラインが少し弓なり状に反っているが、マスターピースはまっすぐ。加えてマスターピースの方が芯と木を長く削られている。どちらの方がいいという問題ではなく、削りの個性が違うという風に私は捉えている。
左がKUM マスターピース、右がM+R 0601で削った鉛筆
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万年筆には、EF、F、M、Bなど色々なペン先がある。鉛筆の場合は、1本の鉛筆で色々な芯先具合を自分でこしらえることができる。それを担っているのが鉛筆削りだ。いくつかの鉛筆削りを使い分けて、芯先のモードをかえていく。キリリとした集中モード、大胆をアイデア出していくモードなど。こんな感じて鉛筆削りを使い分けていくと鉛筆ライフは、ぐっと彩り豊かなものになる。
〔記事作成後記〕
KUMには「DTA加工(ダイナミック トーション アクション」という独自の機構を備えています。それは、刃単体がわずかにたわんでいるというもの。鉛筆削りにネジで固定する際もそのたわみをわずかに残しておくそうです。こうすることで、鉛筆を削る時に刃が振動して木の繊維にフィットしてスムーズに削れるというものなのです。
中央がわずかにたわんでいるのがわかる
付属されているフカフカとした専用ケース
皆さんのご期待にお応えして、ストッパーを外して芯だけを長く削ってみました。削り過ぎには注意しましょう。。
KUM 鉛筆削り マスターピース 3,000円+Tax
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