文具で楽しいひととき
デザインフィル
携帯マルチハサミ
これは「携帯マルチハサミ」という。ハサミって携帯するものなのだろうか??私の日常を振り返ってみると、心当たりがない。ふだんツールスタンドに入れていて、使い終わったら戻している。外に持ち出すというシーンは私の場合に限って言えばほとんどない。だから、この「携帯性」という点には正直ピンとこなかった。むしろもうひとつ特長であるマルチ性というところに魅力を感じた。
■ 小さいのに握りやすい
全長は10cmほど。刃は全体の半分くらいもあるがせいぜい5cmといったところ。その小ささの中でひときわ目立っているのが取っ手の部分だ。小さいわりに一人前の大きさをしている。ふつうのハサミとそれほど変わらないのではというくらい。一般に「小さい」というと、かわいらしくなりがちだが、これにはかわいらしさは微塵もない。どちらかというと男前。たぶんそれは、取っ手の内側にある凹凸加工のせいだと思う。キャップにも、同じ凹凸があり刃先を収納した姿はさながらアウトドアツールといった感じだ。
わっかに指を入れてみる。タップリとした大きさがあるので、やはり握りやすい。刃は上側だけカーブを描いている。少し厚めの段ボードを切ってみると、小さいわりに切れ味はなかなかのもの。ただいかんせん刃先が短いので長く切っていくにはチョキチョキの回数が多くなる。あくまで短距離タイプと割り切った方がよさそうだ。ちなみにプラスチックカードも切ることができる力持ちな一面もある。使い切ったカードの処分に便利だ。
■ 段ボールが開けやすい
マルチハサミというようにハサミ以外にも機能がある。そのひとつに私は魅せられてしまった。この機能があるから私はこのハサミを買ったと言ってもいい。刃の下側に目を向けると、そこだけにギザギザ加工がある。これは段ボールを閉じているテープを切るためのツールである。これまで私はそうした段ボールに貼られたテープを切るのにハサミを使っていた。刃先を開いてその片側でテープを切っていた。やりやすいからやっていたのではなく、他によい方法がなかったので仕方なくそうしていた。刃がむき出して危なっかしいやり方だった。
この「携帯マルチハサミ」はハサミの刃を開かなくてもよい。ハサミの取っ手を握りつつ安全に段ボールのテープを切っていける。考えてみると、最近の私の「切る」という作業は紙を切るよりも、もっぱらネットで注文した商品の段ボールを開けるためにテープを切るというのが多いように思う。その用途にこれはピッタリである。段ボールを開けたら中にヒモで縛られた梱包が入っているということもある。その時はメインの機能であるハサミでチョキンと切ればいい。
■ ワイヤーも切れる
3つ目の機能として。刃先が交差しているすぐ後ろ側でワイヤーも切れてしまう(1.2mmの鉄製針金、1.6mmの銅製針金)。私は日常生活でワイヤーを切るというのはほとんどない。いや全くないかもしれない。前回、ワイヤーを切ったのを思い出そうにも記憶にないくらいだ。でも、そうしたシチュエーションは不意にやってくるのが常だ。わざわざ工具箱からペンチを取り出さずにその時はやってみようと思う。
と思っていたところに、その場面が早くもやってきた。私は書き終わったスケッチブックはリングを外して、スキャナーでデジタル化をしている。最近、月光荘のスケッチブックのクルクルピッチが細かくなっている。リングを外す時にクルクルする回数が増えたのだ。これまではリングの端っこを指で折り曲げてなんとかやっていたが、クルクルが増えたのでリングの端っこをカットしてみた。それにこの「携帯マルチハサミ」が役立った。道具がシーン(用途)を引き寄せたということだろうか。
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私は段ボールを開けるのをメインに、たまになにかを切るという使い方で、この「携帯マルチハサミ」とつきあっていこうと思う。段ボール開けについては結構頻繁に使うことになりそうなので、書斎の壁に掛けてすぐ取り出せるようにしてみた。ネット宅配向きなツールである。
*デザインフィル 携帯マルチハサミ 1,000円+Tax
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