文具で楽しいひととき
ペーパーワールド チャイナ
2013 展示会レポート
■ 初出展していたLIHIT LAB.
「COLIPU」コーナーで、リヒトラブの社名を見つけた。「LIHIT.LAB」という見慣れたロゴの隣に「喜利」とあった。
どうやら、これは中国語のリヒトラブの社名らしい。ブースには海外営業部の廣原さんがいらしたのでお話を伺った。現在、リヒトラブでは中国の代理店、祥豊社を通じて中国市場でのビジネスを展開しているという。たしかに私も福州路の高級文具店でリヒトラブの商品を目にしたことが何度もある。
今回のペーパーワールド・チャイナではその祥豊社のブースの中で、他のメーカーと共同で出展をしていた展示されていたのは日本でも販売されているツイストリング・ノート、アクアドロップスのカードケースやペンケース、クリヤーブック、そして、SMART FITのキャリングポーチなどだ。
廣原さんに今回の出展の反応をお聞きしてみた。中国国内の様々なバイヤーはもちろんたくさん来ていたが、意外だったのはそれ以外の海外バイヤーも多かったことだという。廣原さんが実際に商談した国だけでも、ロシア、オーストラリア、オランダ、フィリピン、南アフリカ、ブラジルなど世界各国に及んでいた。こうした国々はISOTではなかなか出会えないという。
リヒトラブはベトナムに工場があるので、ベトナムを生産だけでなく物流の拠点にもして、そうした海外顧客に直接デリバリーをしていくことも今後計画しているという。海外のビジネスの大きな手応えを感じているようだった。ちなみに海外バイヤーから一番人気があったアイテムは、アクアドロップスのカードケースやペンケースといったやや小さめのもの。
ギフトステーショナリーにも使えるという点が評価されていたようだった。
■ パイロットが大きく出展
展示会場の入口近くに「COLIPU」コーナーとは別に大きなブースを構えていたパイロット。
今回はかなり力が入っているようだ。出展していたのはパイロットの中国現地法人。こちらも運良く総経理(社長)の横井氏から直接お話をお伺いできた。
パイロットは2004年から中国現地法人を設立し、着々と中国市場でその存在感を示している。たとえば「フリクション」もすでに中国では販売されている。中国では一本20元ほどもする。20元というのは現地の人にとっては、昼食代くらいである。つまり、日本人にとっては600円~1000円くらいという感じだろうか。
中国の人にとっては相当に高いが、人気は上々で小学校、中学校、高校といった子供たちも買っているそうだ。高いけどいいものが欲しい、と同時にそれを買う経済力もしっかりと持っているというのが今の中国なのだ。
さて、今回のパイロットが大きくブースを構えていたのには理由がある。このペーパーワールド・チャイナで3つの新製品をお披露目していた。今回の新製品のコンセプトは「楽しむ」。まず1本目は「フリクション スリム」。
日本ではすでにお馴染みだ。これまでの「フリクション」よりも軸がスリムになっているのが特徴。このスリムさを活かして「ペンを持つことを楽しむ」という提案をしていた。メインターゲットは女性。スリムボディは女性のハンドバックでも携帯しやすくなる。
消せるボールペンということから、「フリクション」を軽快に持ち運ぶという段階に、すでに中国ユーザーもきているようだ。
2本目は、ゲルインクボールペンの「ジュース」。
日本では30色で展開しているが、中国では20色からスタートする。この「ジュース」では「色を楽しむ」ということをアピールしていた。ボディからカラフルなインクのリフィルが楽しめるようになっている。
そして、3本目は「ハイテク C maica 」。
このペンでは「デザインを楽しむ」という提案をしていた。
従来の「ハイテック C 」も中国の市場でこれまで人気を集めてきている。ハイテック C の魅力は細く書けるところ。中国も漢字が中心なので、この細く書けるという点がやはり評価されている。今回の新作「ハイテック C maica」は、女性らしいデザインであるのが特徴。
これまでキャラクターを使った女性向けのペンというのは中国にもいくつもあった。しかし、今回のものはキャラクターを使わず純粋に女性らしさを表現している。こうしたタイプのペンは中国のペン市場の中でも初めてではないかと、横井氏は話していた。中国バイヤーからの反応も上々だという。
■ ガラスのホワイトボード+スクリーン
今年で7年目となるペーパーワールド・チャイナの取材。これほど何度も取材に来ていると前に取材した出展社と再会する機会も結構ある。このブースの前を通った時、ここは前に見たことあるかもと、思った。
するとブースの人もそんな感じで私を見ている。私のバッジの名前を確認して記憶がよみがえったようで笑顔で話し掛けてくれた。話している言葉を全て中国なのだがなんとなくニュアンスでわかるから不思議だ。
このブースはガラスを使ったホワイトボードを専門に作っている。便宜上を「ホワイト」といったが、ここにあるものは白いものばかりではない。黒や赤、緑などを実にカラフル。
これは彼らの特許で、ガラスとマグネットも付くようにする鉄の板を貼り合わせている。その間に写真やカラーの素材をはさみこむことで、様々なカラーのガラスボードに仕上げている。今回初めて見たのは、このガラスボードがプロジェクターなどのスクリーンとしても使えるタイプ。
ブースでは、実際にパソコンとプロジェクターをつないで投映をしていた。
ガラスなのに光の反射がそれほどなくちゃんと画像を映し出していた。
これも彼らの特許だそうで、ガラスと鉄の間に細かな金属の粉末をはさみこんでいるのだという。これがスクリーンの機能を果たしている。粉末にすることで不必要な反射を押さえているのだという。ホワイトボード(実際はグレーだが)として、マグネットボードとして、そしてスクリーンにも使える、一石三鳥なボード。
現在、ヨーロッパを中心に採用され始めている。
■ 若手デザイナーの注目アイテム
先程も触れたが今回のペーパーワールド・チャイナの隣のホールでは、メッセフランクフルト主催による「インテリアライフスタイルショー」も同時開催されていた。
せっかくなので、こちらも見学してみることにした。展示内容は食器やキッチン用品、家具、カーペット、カーテンなどありとあらゆるインテリア用品が一同に集まっている。大きなライフスタイルショップに迷い込んだような気分になる。
きっと何か掘り出し物があるだろうと考え、念のため一本一本の通路くまなく歩いてみることにした。一つ目のホールの最後の通路に差しかかったところで「Talents」という気になるコーナーがあった。
ここは若手デザイナーの作品を集めているところだ。その中で面白いもの見つけた。「Boomark'」と書いてあり、その前には落ち着いた色合いの短冊状のしおりが並べられていた。
【『¥15』とあるが、これは『15元』という意味。(念のため)】
色のキレイなしおりかなと、やり過ごそうとした時私の目が止まった。これは二つの機能を持つものだった。
一つ目の機能は、普通の短冊状のしおりのように読みかけのページにそのままはさみこむというものだ。
もう一つの機能が実によくできている。本を本棚にしまう時にも効果的に使えるようになっているのだ。しおりの裏側には折目が付いている。
この折り目に特徴があって、しおりの上から下まで全部には付いていない。上の部分だけは折り目がないのだ。その折り目にしたがって、下側の方だけ折ってそのまま本のページに挟み込む。
そして、本を閉じる。すると本の上から折り目の付いていないしおりがチョコンと顔を出す。
これが本を本棚から取り出す時のフックになるのだ。
しおり、そして本を引き出すフックにも使えるという多機能なしおり。折り目を付けるだけという発想が面白い。素材はPP素材にフカフカとした触り心地のベルベット調の布を貼り合わせている。PPは固い素材であるので、フックとして指をかけても丈夫なようにしている。
一方、表面をベルベット調にしているのは、本の中に閉じ込んだ時の摩擦を高めるためだ。シンプルながら隅々まで実によく考えられている。もう一つユニークなものが展示されていた。それは本棚。
棚板がまるで橋のように湾曲している。これは本を倒さずによりかかりやすくするためだという。
この2つのプロダクトデザインしているのは、Ivan Zhangさん。
現在、ドイツのデザイン大学院に在籍している。彼のデザインブランド名は、「A'(A'postorophe)」。英語の右上にチョコンと点を打つ記号である。プロダクトにチョコンと何かひとつを加えることで、全く新しいデザインのプロダクトに生まれ変わるというのが彼のコンセプト。
しおりでは「折り目」を、本棚では棚板を「湾曲させる」ということを加えることで、たしかに新しいデザイン、そして機能を生み出していた。
* 次のページでは、上海散策などの取材後記です。
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