文具で楽しいひととき
quiver
ペンホルダー
MOLESKINE にペンをセットするには、オーセンティクスのペンクリップで、もう何年もの間すっかりと落ち着いていた。
ペンをサッと取り出せる機動性の良さ、そして、シャープペンの芯を出したままセットしてもペン先を守ってくれるなど全く不満はなかった。しかしながら、文具仲間の zeak さんのブログでこれを見てからというもの、ずっと気になっていた。というのも MOLESKINE にセットした時の姿がとっても美しかったので。そして、これならちょっといいペンをセットできるかもしれないとも感じた。
■ 手帳にセットした姿が美しい
いつもの私なら、こうして気になったものがあれば、ある程度の検討を重ねた上ではあるが、それこそすぐさま購入となるのだが、その時にはあいにくそうはいかなかった。なぜなら、これはアメリカでのオンライン販売のみだったため、気軽に買うという訳にはいかなかった。そして、そのまま月日だけが流れてしまった。
そんな中、今回製造元の quiver 社の方からお声掛けいただき、商品を試させていただく機会を得た。そこで今回は、その使い心地を紹介してみたいと思う。
quiver社はアメリカイリノイ州に本拠を置くメーカー。いろいろなタイプのペンホルダーを手がけている。今回のペンホルダー、レザーはしっかりとした厚みがあるものの指触りとしては、しっとりとした質感。
ブラックのレーザーのエッジに縫い込まれたレッドのステッチがペンホルダー単体の状態でも十分格好よく見せている。では、早速 MOLESKINE に取り付けてみよう。今回試させていただいたのは、 MOLESKINE のポケットサイズ用のもの。(つまり、ラージサイズ用もある)
ペンホルダーを広げると、内側には太い、それこそ MOLESKINE のゴムバンドをふた回りくらい太くしたがっちりとしたバンドが両端に付いている。
このペンホルダーは、上下向きが決まっていて、ペンをさす口が少し下がっている方が上向きとなる。それを意識しつつ、まず、表紙にゴムバンドを通していく。
裏表紙側の時はゴムバンドをグイと伸ばさなくてはならない。
この MOLESKINE の表紙にゴムバンドを通すという作業は、まるで子供に洋服を着させてあげているみたいだ。この表紙に通しただけだとMOLESKINE の背の部分に隙間ができてしまう。
そこをしっかりとフィットするように、ペンホルダーをバランスよくスライドさせながら微調整してセット完了。
この装着した姿、実に格好いい。
後付けのペンホルダーというと、どうしても「とって付けました」という感じになりがちだ。しかし、これは MOLESKINE のために特別に誂えられたジャケットを羽織っているようになる。この一体感がたまらなくいい。こうした手帳の背にペンを付けるものには、トンボ鉛筆の「おんブック」というペンがある。
これはペンホルダーなど不要でペン自体を手帳の背にセットできるというものだ。ペンが手帳にまさにおんぶされたような格好になる。今回の quiver 社のものも同じようなおんぶ状態とはなるが、これは「おんぶ紐」でペンをおんぶしている感じに見えなくもない。
さて、この MOLESKINE を手に取ると、その見た目のフィット感とは裏腹に、ちょっとした違和感があった。それは MOLESKINE の表紙がピタリと閉じずに隙間が出てきてしまうということ。
表紙に通したゴムバンド、というかそれをとめているレザーの厚みのせいでこうした隙間ができてしまっているようだ。まあ、これは MOLESKINE のゴムバンドでパチんと留めてしまえば、そんなに気になるものでもない。
さて次に、ペンをセットしてみよう。まず、ラミー2000の4色ボールペンで試してみた。
やや窮屈な印象はあるが、どうにか収めることができる。
このペンホルダーのいいところは、ペンホルダーの部分が大きく、ペンのほぼ全体を覆い隠してくれる点。一般のペンホルダーは腰巻くらいしかないので、ペンのボディはあらわになったままとなる。そういう意味で言えば、今回の深々としたセット具合はペンホルダーというよりも「ペンポケット」とも言えそうだ。そのため、ペンのボディに傷がつくのをあまり心配しなくてすむ。つまり、ちょっといいペンをセットするということが出来てしまうわけだ。
それこそ万年筆あたりもいけてしまう。とは言え、あまりの太軸はさすがに入らない。私の持っているものの中ではペリカンのM400が軸の細さ、そして短さという点でしっくりときた。
■ パイロットキャップレスデシモ万年筆も OK
■ ラミー サファリの万年筆はキャップのところが太くてセット出来なかった
しかし、ちょっと工夫をするとセットできなくもない。ペンホルダーをスライドさせてMOLESKINE の背から少し離して、ホルダーの空間に余裕を持たせてあげる。そうすると、ホルダーの部分がいくぶんゆったりするので、ちょっとキツキツではあるがどうにかセットすることが出来る。
きつくセットしたペンを取り出すのは大変なので、下側からペンを引っ張りだしてそのまま書くというのもいいかもしれない。
サッと書きたいという機動性を求める人にはいいかも。それ以外のペンの装着具合をいろいろとチェックしてみた。
■ 装着姿ということで言えば、このラミー スイフトが一番格好いい。マットなペンホルダーとオールブラックなスイフトが実に様になる。
■ 同じマットでもシルバーのラミー イコンもいい感じだ
■ 細身のラミー CP1(ペンシル)は楽々収納できる
■ ぺんてる ケリーはクリップの緩やかなカーブが妙にマッチしていた
■ ラミー サファリのボールペンはすき間なくピタリと入り、軸の太さ的に最も理想的
緩すぎず、きつ過ぎずスムーズにセット、そして取り出すことができる。ペンの長さもピッタリだ。
さて、ペンをセットできたのはいいが、手帳としての書き心地はどうなのか。そもそもペンをセットするのはとりもなおさず手帳に書き込むためである。ただペンがセットできたというだけでわーいわーいと手放しで喜ぶ訳にもいかない。背にペンホルダーがついたことではたして書き心地に影響はないのだろうか。まず、机の上に広げてみた。
こうすると草原の丘のような緩やかな山になってしまう。ボールペンやシャーペンでは気にならないが、万年筆で書く時には、ペン先が山を登ったり下ったりするので気になるかもしれない。次に MOLESKINE を手に持って書く時はどうだろうか。これが思いのほかよかった。具体的には、ペンホルダーの出っ張りの部分が手帳をホールドするのに役に立つ。
MOLESKINE 単体の時は、手の平に載せているだけだったが、これだと MOLESKINE を裏側からしっかりと握ることができる。ペンホルダーは「ハンドホルダー」にもなっているという訳だ。気になると言えば、MOLESKINEには裏表紙を開けたところにポケットがある。今回のペンホルダーだと、そこをゴムバンドで上から抑えこんだ状態になってしまう。これではせっかくのポケットが台無しになると思いきや、そうでもなかった。
ポケットの口にはゴムバンドで抑えられているものの、広げることはちゃんとできる。
むしろ中に入れているものがずれ落ちないようにするストッパーとして、ゴムバンドがうまい具合に機能してくれる。このペンホルダーではペンは1本しかセット出来ない。中には、ペンを2本いつも持ち歩くという人だっていると思う。そうした人のために、これとは別に2本用のペンホルダーもラインナップされている。
先程は手帳がペンホルダーを背負うタイプだったが、これは片腕だけで巻くような感じになる。MOLESKINE のペンホルダーとしてはよく見かけるタイプだ。実際に取付てみてわかったのだが、このコムバンドがかなりきつ目。ポケットサイズよりも小さいサイズ用かと思ってしまう程だった。
しかし、これで正しいようだ。あえて、これでもかときつくしてるのは、表紙の片側だけで固定してるので、ずれ落ちたりしないようにという配慮からなのだろう。収納スペースは結構ゆったりしている。太軸のラミーサファリ万年筆と一般的な太さのカランダッシュ ボールペンをセットしてみたが楽々受け入れてくれる懐の深さがある。
閉じた時の厚みもこちらは片側だけにセットするのでスリムさが保たれる。ペンホルダーの口が広い分、ペンのセットそして取り出しやすさも先程のタイプより上だ。個人的には MOLESKINE にペンは1本しかセットしないので、初めに紹介したタイプの方が私好み。
なにより MOLESKINE らしさを損なうことなく、それでいてペンを大切にホールドしてくれるというのがいい。
quiver ペンホルダー
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