文具で楽しいひととき
ISOT2008
国際 文具・紙製品展レポート
■ 本当の多機能ペン、登場(METAPHYS)
デザインステーショナリーワールドの中でひときわ人だかりができているブースがあった。METAPHYS(メタフィス)というブースだ。このブランドはこれまで、デザイン性の高い掃除機など数々のライフスタイル商品を送り出している。この度、不易糊工業とのコラボレーションにより、ステーショナリー分野にも本格的に進出することになった。
そのステーショナリーの数々が展示されていた。その中で、と言うよりかむしろ私が今回のISOTの中で、最も衝撃を受けたのがこのペンだった。「ローカス・3ウェイペン」。
3ウェイとあるが、多機能とは思えない程のスリム軸になっている。ボディをツイストすると0.5mmのシャープペン、黒のボールペンさらに回していくと、なんと消しゴムが出てくるのだ。
その消しゴムの細さ2mm。この2mmというスリムな消しゴムは、業界でもこれまでなかなか実現できなかったものだという。もちろん、シャープペンのようにノックすれば消しゴムはカチカチと繰り出される。
今まで多機能ペンの消しゴムは、ペンの反対側からキャップを外して出すというものだった。しかし、今回のものでは、いちいちペンをひっくり返す必要もなく、まさにペン感覚で使うことができる。今回のペンをデザインした村田氏はかねがねこうしたペンを欲しいと思っていたという。
同じデザインで、この他2mm芯を使った芯ホルダータイプもあった。これはいわゆる芯ホルダーとは違い、カチカチとノックすると芯が繰り出されるタイプ。
また、同社では今回、ステーショナリーオブザイヤーを受賞していた。それが「ヴィス」という消しゴム。
その通りネジスタイルをしている。ネジ山ひとつひとつが細かなカドになっているというものだ。
このほかにもこんなものもあった。茎の溝に名刺を差し込むと、たくさんの葉を生い茂らす植物のようになるカードスタンド「トロン」。
いつも名刺が机の上でバラバラになってしまいがちな方には、救世主になってくれるかもしれない。バラバラを美しく見せてくれるアイデアがすばらしい。
■ 石で作られた紙 (ViaStone)
紙はこれまで木材で作られるものだった。台湾に本拠をおくViaStoneでは、木材ではなく石を原料とした紙が展示されていた。「石で作られた紙」と言うと、なんとなく、色は灰色で、ちょっとザラザラしてという感じがする。そう、「ロゼッタストーン」のようなイメージが頭に浮かぶ。
しかし、そうしたイメージを見事にくつがえすものだった。実際にその紙を触ってみたが、石っぽさは微塵もなく、全くもって紙そのものであった。
感触は、防水メモなどによく使われるユポ紙というものがあるが、紙質としてはとても近い。一体どのようにして石からこうした紙が作られるのか、スタッフの方にお尋ねしてみた。今回の紙は石灰をベースに作ったものだそうだ。
しかし、基本的にどんな石でも紙をつくれるという。石灰を選んだのは、世界中どこにでも手に入り、畑に米たり、白線を引く時など、我々の日常でとても馴染みのある石であるということと、石灰を使うことで、完成品の紙を真っ白にできるという点があるからだ。
作り方をわかりやすく言ってしまうと、石灰の炭酸カルシウムと繊維状の高密度ポリエチレンを合成するのだという。当然、木材を使わず、しかも生産工程でも一切水を使わずに済むという大変に環境にやさしい紙なのだ。
用途としては、紙皿、紙コップ、パッケージ用の紙をはじめ、防水性に優れているため、登山用の地図など幅広い活用が期待されている。
もちろん、筆記もしっかりとできる。水性インク系はインクをはじいてしまって向かないが、鉛筆や油性ボールペンでの書き味は滑らかでなかなかのもの。この書き味も、先ほどご紹介した防水メモのユポ紙にとても似ている。
一方、石ということで一般の紙に比べてやや重みがある。そして、熱に弱く100度~110度で変成してしまうという特性も持っている。そのためトナーやレーザーなど高熱を使うものには適さない。用途は限られるが、環境にやさしいということで、今後色々な分野での活用が見込まれる紙だ。
■ シャープ芯の交換に革命を起こす新商品(ぺんてる)
ぺんてるブースで発表されていた新商品の一つに「クイックドック」というものがあった。
一見したところでは、ごく普通のシャープペンのようだが、これまでにない特殊な機構が備わっている。シャープ芯が12本入ったケースごとシャープペンに入れられるという画期的なものなのだ。
芯の入ったケースは、単体の状態では密閉されていて芯は出て来ないのだが、ペンにセットした途端、ノックをすると芯がカチカチと出てくる誠に不思議な仕組みになっている。これまで煩わしかった芯の交換を手を汚すことなく簡単にできてしまう。
まるでボールペンの芯交換のように。また、ペンのボディはスケルトン状になっており、ケースを中に入れると、それぞれの色がまじり合い独特なグラデーションボディを作り出す。
ぺんてるは世界で初めて、0.5mmのシャープ芯を開発したという実績を持っている。そのシャープ芯へのこだわりが今回のような斬新な新商品開発に繋がったのではないかと思う。
■ クーラーの冷気を混ぜ合わせてくれるアイデア商品(潮)
キンキンに冷えた夏のオフィスは、暑い中営業をしてきたものとっては、オアシスのような存在である一方、日中ずっとオフィスにいる人にとっては寒くてたまらない。特にクーラーの冷気が直接あたる席の人は、夏とは言え重ね着が必要になるほどだ。
こうしたクーラーの冷気がオフィスの一カ所に滞ってしまう問題を解消してくれるのが、潮社の「ファイブリッド・ファン」だ。これは空調をの通風口に直接取り付けるだけ。
このファン自体には電源は一切なく、空調の風力だけで回転する。これにより、オフィスの空気をかき混ぜ一カ所だけ冷えすぎるということを防いでくれるのだ。
ほとんどの空調にも取り付けが可能で、オフィスだけでなく一般家庭用のクーラーにも取り付けられるタイプも別途用意されている。このファンを取り付けることで、室内温度はそれまでよりも高めにしても冷気がまんべんなく届くので、快適に過ごせると言う。もちろん、クーラーだけでなく冬は暖房でも使える。
文具流通では、キングジムから販売される。
■ 2穴パンチがさらに進化(カール事務器)
2穴パンチをはじめ業務用の裁断機など、「切る」ことを専門にしているカール事務器。その代表的商品である2穴パンチの進化形が参考出展されていた。
これまでのパンチは、ハンドルと穴を開ける刃が直結されていた。したがって、紙の枚数が増えるほどハンドルが重くなってしまう。そこで、考えられたのが「リンク機構」というもの。バンドルと刃の間にこの「リンク機構」でつなぎ合わされている。
「リンク機構」と言われてもちょっとわかりづらいかも知れないが、イメージとしては、テコの原理の支点が2カ所あるようなものだと言う。これがあることで、押し込む力がこれまでの約半分で済む。
また、今回のパンチでは、「アンビエンス」というカラーコンセプトが与えられている。これは、「雰囲気」、「環境」という意味で、デザイン性の高い昨今のオフィス空間の中にあってもしっかりと馴染み存在感を放つという狙いがあるのだという。こうしたカールの切るこだわりは、事務用品だけにとどまらない。今、女性の間で人気のスクラップブッキング分野にも及んでいる。
今回新たに発表されていたものは、クラフト用のパンチ「フローランス ミュレ」。紙に細かな飾りのカットができる専用のパンチだ。
これまでもこうしたクラフト用パンチはあった。今回新しいのは、紙のどの角からからでもカットできるようになっていること。特に、これまでパンチを差し込むことができなかった紙の折り目からでもカットできるようになっている。
今回のパンチには、様々なマークが用意されている。基本は女性らしいデザインだが、中には、ライオンの家紋スタイルや王冠など男性っぽいマークもある。
レターヘッドの上に押せば、平面的なレターがグッと格好良くなる。男性にも使いでがありそうだ。
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