2008.02.19(149 - 1/2)

「ペーパーワールド2008 1」

ペーパーワールド

2008 展示会レポート

ペーパーワールド2008 paerworld2008

文具の国際展「ペーパーワールド」。2008年1月23日~27日 ドイツフランクフルトで開催された。

今回も、61か国2,255社という相変わらずの大規模ぶりだった。また、世界各国から10万人に及ぶ来場者も詰めかけ、こんなにも世界の文具関係者がひと所に集まってしまっては各国の文具の供給に支障をきたしやしないかと心配してしまうほどだった。

ただ、お膝元であるドイツのペリカンやラミーが出展していないということもあり、個人的にお気に入りなブランドなだけに、少々残念な面もあった。

ともあれ、これだけのたくさんの文具が一同に会しているので、見所には事欠かない。展示会場は全部で、5会場、しかもその一つひとつが1階、2階という具合に複数フロアにまたがっている。その数なんと15フロア。。

昨年はこの大きな展示会場を前にただただ呆然としてしまったが、今回で2回目の取材ということで、いかにして取材したらよいかという要領もそれなりに心得て、足を棒のようにしながらも、そのほとんどのフロアをまわることができた。そんな取材活動で見てきた新作、そして日本未上陸の文具をたくさんの写真とともにお届けしたいと思う。

■ スタンプペンの専門メーカー Heri (ドイツ)

heri スタンプペン

スタンプペンとは、読んで字のごとくペンとスタンプを一体化したものだ。

ヨーロッパでは、この「スタンプペン」というカテゴリーがあるようで、今回のHeri以外のブースでもいくつか見ることができた。スタンプペンというと、なにやらとても大きなペンをイメージしてしまいがちだが、このHeri社のものは、そんなそぶりを全く感じさせないスマートさ。

heri スタンプペン

そのうちのひとつを見せてもらったが、やや長めの印象はあるものの、中にスタンプが入っているとは到底思えないほどだ。ちょっと見たところでは、デザインのいいペンメーカーといった感じ。

この細さのどこからスタンプが出てくるかというと、ペン先の反対側にあるキャップをはずすと折りたたまれた幅5cmくらいの横長のスタンプが出てくるという仕掛け。

heri スタンプペン

heri スタンプペン

ペンはボールペンだけでなく、万年筆タイプまである。

heri スタンプペン

heri スタンプペン

heri スタンプペン

Heri社のスタンプペンに付いているスタンプには、印面に予めインクが浸透されているタイプと、セルフインキング方式という、インクパッドもペン中に収納されたものもある。いずれも、別途スタンプ台を用意する必要はない。

先ほどご紹介した2本は、いずれもスタンプを出す際にキャップをはずす必要があったが、キャップレスタイプというものもあった。

heri スタンプペン

ボディをペン先側にスライドすると、パカッとフタが開き、スタンプが出てくるというものだ。フタはスタンプ台、つまりインクが付いているので、このままスタンプができるという手軽さがいい。

ペーパーワールド2008 paerworld2008

heri スタンプペン

heri スタンプペン

このheriという会社は1961年に兄弟で創業したメーカーで、元々はボールペンや時計の精密部品などを作っていた。その後、兄弟が別々の会社に分かれることになり、このとき、同じボールペンをそれぞれが作ってもライバルなるだけなので、Heri社は、スタンプペンに特化していくことにしたそうだ。

それ以降、スタンプペンの専門メーカーとして、様々な商品開発をして、今日に至るという。

heri スタンプペン

 

■ 意欲的な新作を発表していたトンボブース

トンボ鉛筆 

ヨーロッパでデザイン性の高いペンブランドとして確固たるポジションを築いているトンボ。今回のトンボでは、2つの新作が発表されていた。

そのひとつが、デザインコレクションにあった。ちょうど昨年20周年を迎え、デザインコレクションの中でもフラッグシップ的な存在と言えるZoom707。スリムなボディなのに握りやすい、しかもデザイン性も優れているペン。私もずっと愛用している。そのZoom707になんとショートサイズが登場していた。その名も「Zoom717」。

トンボ鉛筆 Zoom717

ボディの細さはこれまでと同じで、長さだけがググッと短くなっている。あんなに細いペンが、今度は短くなったのだから、これはものすごいコンパクトさだ。しかし、意外だったのは、コンパクトさよりもバランスの良さがとても印象的だった点だ。

そもそも細いペンというものは、短いというのがペンデザインの基本なのだろう。この細さにあった短さになったという見方もできるような気がする。そういう意味では、前作のZOOM707は、いかに斬新であったかということなのだろう。

さて、今回のZOOM717は、これまでは、ブラックやダークグレーといった落ち着いたカラーだったが、今回のものは、シルバーのつや消しボディに、ラバーグリップもイエロー、ブルー、レッドといったなカラーになり、ポップな印象。

トンボ鉛筆 Zoom717

実際に持ってみると、その小ささのわりにズシリとくる。これは、Zoom707同様ボディには頑丈な真鍮を使っているため。ボディの長さをただ単に縮めただけというわけではない。全体的なバランスを考えて、クリップもそれにあわせてコンパクト化が計られている。ペンの種類はボールペンのみ。

よりコンパクトになったことで手帳との相性がよりよくなっているので、個人的にはシャープペンタイプもラインナップに加えていただきたいと感じた。短くなったとは言え、筆記しやすさも、もちろん確保されている。

トンボ鉛筆 Zoom717

もうひとつの新作は「エアプレス」というボールペン。

トンボ鉛筆 エアプレス

ボールペンの最大の弱点と言えば、上向き筆記だ。ご存じの方も多いと思うが、ボールペンを上向きで書くと、重力でインクがペン先に届かなくなり、さらにはペン先から空気が入ってしまい、筆記ができなくなってしまうことがある。最悪の場合はリフィルの後ろ側からインクが漏れてしまうことも。そうしたことに対応して、各メーカーでは、これまで特殊なリフィルを開発してきた。

それらはリフィルの中を密閉して、重力に頼らなくていいように内部を加圧するという手法だ。今回のエアプレスもリフィルの中を加圧するという点では同じなのだが、ユニークなのは、リフィル自体はこれまでの普通のものを使うという点だ。つまり、ペン本体側にその仕組みをもってきているのだ。

ボディの中には、ピストンそしてその先端には加圧するためのゴムパーツがある。ノックボタンを押すことで、リフィルの中に圧縮空気を送り、加圧するというものだ。

トンボ鉛筆 エアプレス

トンボ鉛筆 エアプレス

加圧をするということで、すごい力でノックしなければというイメージがあるが、普通のノックボールペンとなんら変わらない。たくさんノックすれば、加圧はより強まるかと言えば、そうではなく、ノックを1回押して、ペン先を出すと加圧され、再びノックをしてペン先を収納すれば、加圧されたリフィルの中はいったんクリアされるのだという。

このノックだけで、ごく普通のリフィルの中が加圧されて、上向き筆記や多少濡れた紙の上での筆記もこなしてくれるという優れものだ。

このペンは「現場」をコンセプトに開発されたそうだ。机の上では、PCに向かうことが中心になり、ペンと紙は、机以外、つまり立ったままという状況が多くなっている。そうした時は、結構上向きぎみ筆記になりがち。このエアプレスは、そんな時にでも快適に筆記出来るという訳だ。

普通のリフィルが使えると言うことでランニングコストが下げられるのがいいと思う。リフィルはトンボの「リポーター4コンパクト」に使われているややショートサイズのものが対応。

トンボ鉛筆 エアプレス

■ 原点の鉛筆にさらに磨きをかけたステッドラー

ステッドラー

大手のドイツメーカーの出展が少なかった中、ひときわ大きなブースで存在感を誇示していたステッドラー。今回の新作は大きく3つ。

まずひとつ目は、鉛筆メーカーならではのもので、これは新作というよりも新技術ということになるのだろう。それは「ABS」というものだ。「ABS」と聞くと、我々は車の「アンチ ロック ブレーキシステム」というのが思い浮かぶ。しかし、今回のものは「アンチ ブレーク システム」、つまり鉛筆の芯が折れにくい機構である。

鉛筆の芯が折れる時というのは、芯の先端ではなく、木の軸と芯のちょうど境目であることが多い。その点に着目して、芯のまわりを樹脂ベースで特殊な素材で覆い尽くしている。

ステッドラー

ステッドラー

削った状態を見るとよくわかるのだが、芯と木の間には白い部分がはっきりと見える。この機構により、芯の折れを同社これまでのものと比べ、その強度が30%も増しているのだそうだ。今回、この「ABS」は、芯が比較的柔らかい色鉛筆でまずは採用されるという。

ステッドラーと言えば、もちろん鉛筆メーカーとして有名だ。
だが、以前に万年筆を作っていた時代もあった。今回は、学童用であるが、ノリスシリーズの万年筆が発表されていた。

ステッドラー

レッドの三角軸のキャップにノリス鉛筆カラーというポップなデザイン。書き方ペンらしくグリップには指を正しく添えられる凹みがある。当然、大人が使っても書きやすい。

ステッドラー

ステッドラー

あわせて、昨今ヨーロッパで書き方ペンのもうひとつの主流になっているローラーボールタイプもあった。ペン先とインクタンクが一体化したカートリッジを使う。

ステッドラー

ステッドラー

このノリスシリーズには、さらに太軸のシャープペンもあった。芯の太さは1.3mm。基本はこれも子供用だろうが、大人のブレスト、アイデアスケッチペンとしても使えそうだ。なお、これら新製品の日本での発売は未定だという。

ステッドラー

ステッドラー

■ 海外初進出となる能率手帳

能率手帳

日本でお馴染みの能率手帳がペーパーワールドに初出展していた。今回の出展の目的は、能率手帳を海外に輸出するということではなく、その一歩手前の、今後海外に本格進出していくマーケット調査のためだと言う。

能率手帳

能率手帳と言えば、日本初のビジネス手帳だ。同社はそもそも文具メーカーではなく、経営コンサルタント会社である。人材育成のために作り出された手帳というその生い立ちは、海外のバイヤーに大変新鮮に映っていたそうだ。

その背景もさることながら、海外バイヤーは一様にその作り込みの良さに、おおいに関心を示していたという。しっかりとした製本やコピー用紙よりも薄いのに筆記特性に優れた紙質などなど。ブースには、そうした作り込みのこだわりを解説したコーナーがあった。

その中で、日本人である私も思わずフムフムと感心してしまったのが、中の紙を裁断する工程だった。手帳の中の紙は、手帳の大きさになる前は、もともとその何倍もある大きさになっている。

その紙には、裁断すべきところに、0.2mmというそれはそれは細い線が引かれている。その0.2mmのちょうど真ん中にピタリとくるように裁断する訳だ。0.2mmという細さもさることながら、作業をさらに困難なものにしているのは、能率手帳の紙が、コピー用紙よりも薄いということ。

紙を重ねた状態で裁断しようとすると、紙にしわが寄ってしまうのだそうだ。実際に裁断されたものは、確かに0.2mmの線の真ん中を切ったことを示す線の色がその裁断面にしっかりと残されている。

こうした細かなこだわりがページをめくった時にどのページの線もピタリと合っているというクオリティを生んでいるのだ。

能率手帳

また、定番の能率手帳の他、このペーパーワールドのための特別展示として、日本の伝統的な織物「有職(ゆうそく)織物」で表紙を飾った能率手帳があった。

能率手帳

有職織物とは、平安時代から続く公家の方々のための着物。今も天皇家で使われているという。

今回の手帳の表紙は京都の老舗俵屋十八代の喜多川俵二氏によるもの。「用の美」を追求してつくられた柄は、着物から手帳になってもとても馴染んでいる。

今回のものは、あくまでも参考出品ということで販売の予定はない。気になって、その値段をお聞きしてみると、小さいタイプで20万円から、大きいタイプだと50万円からだという。

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