文具で楽しいひととき
ペーパーワールド チャイナ
2007 展示会レポート
■ ファーバーカステル
今回の展示会では、ヨーロッパ特にドイツメーカーの出展社が多かった。その中でひときわ目立っていたのが、ファーバーカステル社。2階建てのブースを立ち上げ、さながらフランクフルトのペーパーワールド並の豪華さを誇っていた。
今回のブースは中国現地法人としての出展だった。広州に工場を持っており、そこでは、ボールペンやシャープペンなどを生産しているという。中国市場に向けて作られた何か特別なものがないかと期待してブースを見て回ったが、並んでいたのは、日本でもお馴染みのデザイン アンビションやエモーション、色鉛筆、一般筆記具をはじめ、伯爵コレクションなどだった。
そんな中で、ひとつのショーケースに目が止まった。これまで見たことのないファーバーカステルの商品だった。ファーバーカステルの中ではレッドラインと呼ばれる主に子供用の商品群の中に、見慣れないパーフェクトペンシルがあった。
キャップの部分がすべてプラスチックで作られたカジュアルスタイル。プラスチックタイプのものはカステル9000タイプがあるが、これは明らかに別ものだ。
担当に方に尋ねてみると、新製品ということだった。これは、思わぬ掘り出し物に巡り会えた。キャップトップを引っ張れば、しっかり鉛筆削りも備わっている。まさしくパーフェクトペンシルである。このパーフェクトペンシルシリーズには、折りたたみ式の鉛筆削り、同じく折りたたみ式の消しゴムもラインナップされていた。
気軽に鉛筆を楽しみたいという方にはもってこいな商品だと思う。特に中国市場だけに作られたものではなく、今後世界各国でも発売されると言っていた。日本でも販売したら、きっと買いたいという方は多いのではないかと思う。ぜひ日本でも発売して欲しいものだ。
■ 力を入れなくても綴じられるステープラー
アメリカのAccentra社 というブースで、「PaperPro」というユニークなステープラーがあった。
一見したところ、デザインのよい、ステープラーといった感じなのだが、これがすごい離れ業を持っている。なんと、25枚や50枚くらいの厚い書類も指一本で綴じることができてしまうのだ。使い方は、ステープラーを机の上に置き、書類をステープラーの口に挟み込む。
ここまでは、これまでのステープラーと同じだ。次に、ステープラーの上を人差し指でおしていく。あくまでも、軽くでOK。
もうこれ以上下に行かないというところに来ると、ステープラーの方が意志を持った生き物のようにガシャン!と勝手に綴じ込んでくれる。
これまでのように、ギュッと押し込んだりしなくていいのだ。綴じた紙を見てみれば、確かにしっかりと綴じられている。もちろん手に持った状態で使ってもギュッと握りしめる必要はない。
実は、この原理、よく家の内装屋さんが壁紙を貼る際に、ステープラーのお化けみたいな大きなものを使っていることがあるが、あれをステープラーに応用したものだそうだ。綴じられる枚数に応じて15枚まで用、25枚、~100枚まで、バリエーションが揃っている。担当の方によると、どこの店かはわからないが、日本でもすでに発売されていると言っていた。
■ 日本の出展社もがんばっていた
我らが日本企業は、今回20社ほど出展していた。その顔ぶれは、大きく2種類に分けることができた。一つに、文具を製造するために必要なパーツ専門メーカー。例えば、テイボー、オーベクスといったマーカーのペン先メーカーや大平などのペンの精密部品メーカー。
割合としては、こうしたパーツメーカーの方がやや多い印象だった。日本にとって中国市場はまだ完成品というよりも、むしろ中国メーカーへのパーツの売り込み市場といった色合いが強いようだ。完成品メーカーとしてはプラチナ萬年筆がブースを構えていた。
同社は、13年前に現地法人を設立して、早い段階で中国市場に進出していた。
ちなみに、プラチナ萬年筆は中国では「白金牌」という社名になっていた。確かにプラチナは、白金だ。
上海に工場を持っており、そこでは、日本でも人気のある低価格万年筆プレピーなど様々な筆記具を製造しているという。
プラチナ萬年筆の商品の中で、特に中国でよく売れているのは、ホワイトボードマーカーと筆ペンなのだという。日本でのプラチナ社の売れ筋とは明らかに違う。
一般筆記具のボールペンは、中国にはそれこそ星の数ほどの大小のメーカーが存在し、そうしたメーカーとの価格競争にはあえて踏み込まずに、技術力を必要とするペンに特化したと言うことなのかも知れない。
また、カール事務器も出展していた。こちらもプラチナ社同様上海に12年前に進出して、現地に自社工場を持っている。
出展されていた製品はおおかた日本でも見かけるものが多かった。なにか中国ならでは商品はありませんか?とおたずねしたところ、見せていただいたのが、鉛筆削りだった。
これは、日本でも過去永らく生産販売していたのだが、すでに廃盤になってしまったものだという。
現在では、中国をはじめアジア市場で大変よく売れているそうだ。特別アジア仕様というわけではないのだが、鉛筆をくわえる部分にガードがなく、鉛筆に跡が残ってしまう。日本市場ではそうしたことを気にするということで販売しなくなったのだそうだ。
昔ながらの鉛筆削りといった無骨なスタイルだが、メタルのボディで、なかなか勇ましいスタイルだった。改めて日本でも販売したら、そのクラシカルさが返って新鮮に映って結構人気が出るかも知れない。
発展著しい中国を舞台に開催された今回のペーパーワールドチャイナ。今回私は文具全般というよりも、デザインステーショナリーに的を絞って取材をした。その際自分で決めたのは、自分がお金を払っても良いと思えるデザインであるか、という基準だった。
残念ながら、その多くはどこか何かに似ているというものばかりだった。しかし一方で、これは!と思えるデザインや今はそうでなくとも、その可能性を秘めていると感じさせるものも数こそ多くはなかったがいくつか見ることができた。
展示会取材の合間を縫って、上海の町にも出向いてみた。その中で、一番興味深かったのは「泰康路芸術街」という町だ。そこはニューヨークのSOHOのようなクリエイターによる作品を展示していたり、雑貨など様々な商品が販売されている一角である。
今の中国の経済発展とはまた違った活気に満ちていた。それは、若い世代が中心になって、中国ならではのオリジナルデザインを作ろうという息吹のようなものだったと思う。
来年の北京オリンピック、そしてその翌年の上海万博もあるそうした経済発展を背景に、中国の若い世代のデザイン感覚がさらに加わっていけば、中国ならではのデザインステーショナリーというものがたくさん見られる日もそれほど遠い先ではないかもしれない。数年後には、またさ違ったステーショナリーが見られそうなそんな余力みたいなものを強く感じる中国取材だった。
本展に関するお問い合わせは
メサゴメッセ・フランクフルト(株)info@japan.messefrankfurt.com
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