文具で楽しいひととき
ペーパーワールド2007
展示会レポート
今年の1月にドイツ、フランクフルトで開催された世界最大の文具の展示会「ペーパーワールド」(主催:メッセフランクフルト)に3日間取材で行ってきた。業界の方の事前の情報によると、最近のペーパーワールドは、少し規模が小さくなってきたということだった。
しかし、実際に現地に着いてみると、いったい、これのどこか規模が縮小しているのだろうかと思ってしまう程の大きさだった。なにせ、展示ホールは、全部で7ホールもあり、そのひとつひとつがとても大きく、しかも、各ホールはフロアが何階にも分かれていた。ちょっとでも油断しようものなら、自分が今どこにいるのかわからなくなり、迷子になってしまいそうなくらいだった。
さて、すでにご覧になっている方もいらっしゃるかもしれないが、今回のペーパーワールド取材レーポートは、現在発売中の「趣味の文具箱」でも、ご紹介させていただいている。ここで、同じことを書いても仕方がないので、そこでは、詳しく紹介できなかったことを写真などを交えながらお届けしようと思う。
■ カランダッシュ
カランダッシュの新作の中で、最も印象的だったのが、「クチュール」というモデルだ。まだ、日本のカタログにもその全容が紹介されていないようだ。
エクリドールのミニタイプ、XSをベースに素材をピンクゴールド、そして、スワロフスキーをちりばめるというもの。デザインモチーフは女性のシルエットということで、ボディには、幾重もの流れるようなラインが刻まれいる。とても優しさあふれるデザインをしている。
今回のペーパーワールドでは、もう1社、ヴァルドマンでもピンクゴールドのペンが新作として発表されていた。それぞれによると、ヨーロッパでは、今ピンクゴールドが流行り始めているのだそうだ。このクチュールコレクションには、そのデザインにあわせたレザーグッズもあり、いつもよりも豊富なバリエーションになっていた。
システム手帳、名刺入れ、ペンケースといった定番アイテムはもちろんのこと面白いところでは、化粧ポーチまで用意されていた。いずれもナチュラルカラーのレザーにペンと同じ波模様が施されており、まるで、シフォンケーキのようなやわらかな風合いがあった。
その中で、ペンケースを見せていただいたのだが、この開け閉めが、これまでにないユニークさがあった。上下を指でギュッと抑え込むと、ボタンがプチプチとはじけるように外れて開く仕掛けになっていた。
その音の小気味よさは、今も私の頭の中に残っている。女性用ということではあるが、今後、日本での発売が待たれるところだ。
■ ラミー
ラミーの新作は、前回のコラムでピュアを取り上げたばかりだが、それ以外に、これまでのモデルの素材違いやカラー違いというものもあった。そのひとつがcp1のプラチナコーティングというモデル。
cp1はご存じの方も多いと思うが、ラミー2000のデザインを手がけたゲルト・ハルト・ミュラー氏によるものだ。cp1のスリムボディは、もともと女性の手にも馴染むようにデザインされたのだと言う。
プラチナコーティングされたボディには細かな溝があり、光の加減により、まばゆい輝きを見せてくれる。これまでのマットな質感とは、また違ったペンに生まれ変わっていた。
ちなみに万年筆のペン先は14金になっている。
その他、ステュディオのブルーバージョンもお目見えしていた。このブルーは、スイフトと同じ色になっている。
これまでの高価格帯のラミーのペンは、どちらかと言うと、落ち着いたカラーリングが多かったが、最近は鮮やかさや輝度の高いものがやや増えてきているようだ。
また、ペンのデザインをより引き立るディスプレイにも趣向が凝らされており、それぞれのペンの世界観がしっかりと表現されていた。
それから、これは製品情報ではないのだが、ラミーブース恒例のアイスクリームもしっかりと頂いてきた。
ドイツという国は、レストランで注文する一皿一皿が日本人の我々からすると、とても量が多い。このラミーブースのアイスクリームも例外ではなく、いわゆる特盛りのような感じだった。
聞くところによると、ドクター・ラミーは、大の甘党で、本社のあるハイデルベルクの行きつけのアイスクリームショップにお願いして、毎年フランクフルトまで出向いてもらい、ブースで提供しているのだそうだ。味は、甘さ控えめで、実においしく全て平らげてしまった。
■ ルイジ・コラーニ氏 インタビューのこぼれ話
地元、ドイツベルリンのデザイナーであるルイジ・コラーニ氏の特別展示コーナーが設けられてあった。
コラーニ氏ご本人をそのコーナーで見かけたので、ちょうど持っていたペリカンNo.1を片手に話かけてみた。やはり、自分のデザインしたペンを使っているというのはさぞかし嬉しかったのだろう。
「これは25年前に私がデザインしたライティング・マシーンだ。」と言って、久しぶりに対面したわが子を見るように目を細めてNo.1を見つめていた。「ライティング・インスツルメンツ」ではなく、「ライティング・マシーン」と表現していたことがとても印象的だった。
せっかくなので、ペリカンNo.1について以前から疑問に思っていたことをお聞きしてみることにした。私の本「やっぱり欲しい文房具」でも書かせていただいたことなのだが、その疑問とはこういうことだ。
コラーニ氏がデザインするものがほとんど流面形であるのは、車であれば、空気抵抗が少なくなり、燃料を少なくすることができる。つまり、環境問題ということがあったからだそうだ。
一方、このペリカンNo.1の流面形および三角軸は、環境問題を解決するものではないが、文字を書く時のエネルギーという点で見たときに書く行為にはそれほどエネルギーを使わずに、むしろ、内容を考える方に使うことができる。つまり、人間の持っているエネルギーの有効活用のためなのではないか、というのが、私が勝手に立てた推測だった。
すると、コラーニ氏は、「その通りだ。」と言ってくれた。
長年つかえていたものがスウッと、とれた気がして、スッキリした気分だった。
この特別展示コーナーには、コラーニ氏デザインのよる様々なプロダクトが展示されていた。ふと、自分が座っていた椅子を見ると、これもそうだった。これも確かに座っているということすら忘れてしまうくらいの心地良さがあった。
こうした流面形のイスの他、コラーニブランドのボールペンなどもあったが、一番度肝を抜かれたのが、グランドピアノだった。
流れるようなラインに仕上げられており、先端には跳ね馬のエンブレムまで付いている。今にも走りだしそうなピアノだった。もちろん、ピアノとして弾くことでき、イベント中、女性の方がずっと演奏をしていた。
さすが、世界最大の文具の展示会というだけあって、駆け足の取材ではあったが、色々なあたらしいステーショナリーとの出会いがあった。
*関連リンク
「ペーパーワールド2008 レポート」
「ペーパーワールド2013 レポート」
「ペーパーワールド・チャイナ2012 レポート」
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