文具で楽しいひととき
デルフォニックス
ロルバーン ランドスケープ
考える時、私は紙を頼りにしている。
紙の上にペンをサラサラと、またある時はグリグリと書いていく。それまで頭の中にあったことを紙の上に乗っけていく。頭の中ではなく紙の上で「考えたこと」を見ることで、新たな刺激を受けてさらに頭に新しい考えが浮かび、またそれも紙の上に書いていく。私にとって考えるとは、紙の上でのこうした作業を繰り返していくことである。
このたび、デルフォニックスさんとコラボをして、その「考える」がスムーズにできる「ロルバーン ランドスケープ」を作らせていただいた。
■ コラボのきっかけ
2016年にロルバーンが15周年を迎えた。そのキャンペーンの一つとして、インタビューをさせて欲しいと依頼を受けた。好きなロルバーンを一冊差し上げるので、それを実際に使ってもらい、その使い方・使い心地を聞かせてほしいというものだった。私はずっとスケッチブックをノート代わりにしていたので、迷わず一番大きいXLサイズにした。XLサイズとはB5サイズ相当のものだ。実際に以前「ロルバーン」のXLサイズは使っていたこともあり、私にとって一番馴染みやすいサイズだった。お送りいただいたXLサイズを私はいつもどおり横にして使っていった。その使い方が、デルフォニックスさんの社内でちょっとした話題になったという。もともとXLサイズは縦型で当然に縦で使うものとデルフォニックスさんの方でも想定していたので、私の横使いはかなり新鮮に受けとめられたようだ。
取材後、デルフォニックスさんからいつかその横スタイルのロルバーンを作って販売してみたいですね、と言われた。私は社交辞令でそう言ってくださったとばかり思っていたのだが、数ヶ月後に「では、作りましょう」とプロジェクトが本格的にスタートしていった。
■ ディテールにこだわった作り込み
左が「Desk(デスク)」横247×縦200mm、右が「Field(フィールド)」横207×縦170mm、いずれも120ページ
2サイズでの展開。大きい方を「Desk(デスク)」、小さい方を「Field(フィールド)」と名付けた。机の上でしっかりと腰を据えて考えられるサイズと机以外の様々な現場へ持ち出して使えるコンパクトサイズだ。ちなみに大きいサイズは、私がこれまで使っていたスケッチブックよりもわずかに小さめ。デスクに置いた時に、ノート紙面全体が視界に入りやすく、視線をあちこちと必要以上に動かさなくてよいようにするためだ。ちなみに商品名の「Landscape」は風景・景色という意味の他、印刷用語で「横長」という意味もあり、名付けた。そもそも「Rollbahn」はドイツ語で「滑走路」の意味。「Landscape」とも意味の上でもしっくりとくる。
表紙はクラフト調のマットな感触。ホワイト・ダークブルー・オリーブという落ちついた色展開。ホワイトは、うっすらと雪が積もったようなわずかに表情のある色合いになっている。「Rollbahn」のロゴはシルバー。ダークブルーとオリーブはマットなシルバーを使い、ホワイトだけは少しキラキラとしたシルバーにしている。個人的にはホワイトにこのシルバーがとても馴染んでいて気に入っている。
このシルバーロゴにあわせて、リングもシルバーで統一した。「ロルバーン」は、これまでずっとブラックリングだったので、見た目の印象は結構違うものに仕上がった。このリングというものは書く時に常に目に入ってくる。ニュートラルなシルバーにすることで書くことに集中できるようにした。黒は自分が書いた文字だけになる。細かなこだわりとしては、表紙を開くとその裏側も表紙と同じ色にしている。従来のものはホワイトで統一されている。さぁ書きはじめようという時の印象を少しだけ意識してみた。
そして、最大の特長と言ってもいいが、ノートの紙面には「分割ガイド」がある。紙面のセンターにドット、そして十字方向のそれぞれエッジの所にガイドポイントがある。これら十字のガイドに加えて、右上にあるのが私が日頃から書き込んでいるタイトル欄のためのガイドである。紙面の右上に、しかも縦にタイトル欄があるというのは、ノートの中ではちょっとというか、かなり珍しい。あえてこうしているのには意味がある。すっかりと書き進んだノートをパラパラとめくってページを探す時、この右上のしかも縦だと圧倒的に探しやすいのだ。
紙面フォーマットは、ロルバーンお馴染みの5mm方眼。先ほどのタイトルガイドは右ページだけで、その裏面である左ページにはなく、センタードットと十字ガイドのみ。私は片面筆記なので入れなかったという理由と、人によっては左ページを使う時にタイトルを右上、左上と使う場所が違うだろうと思ったからだ。
■ 色々な思考法ができる
先ほどのガイドを使ったり、あるいは使わなかったりすることで色々な思考法ができる「ロルバーン ランドスケープ」。ふだん私がノートで考える時によく行っていることをできるようにしてみた。
□ 分割モード
何かを考える時、なんらかの枠組みがあるとグッと分かりやすくなる。枠組みというとなにやら小難しいが、イメージとしては情報の入れものとしての「カゴ」みたいなものを用意して栗拾いのように入れていく感じだ。この「分割ガイド」を使うことで2分割、3分割、4分割、5、6、7・・・と色々な入れものが作れる。
たとえば、私はこんな風に使っている。なにか新たなプロジェクトを始めようとした時、それを実行すべきどうかを考えるのに2分割モードを使う。左にメリット、右にデメリットを書き出していく。頭の中で考えていると堂々めぐりで時間ばかりを浪費してしまう。こうして整理して書き出すとスッキリとする。とは言え、ズバリと正解が出る訳ではない。あくまでも自分はこうしようという判断をする材料が整理されるだけである。ただ、気持ちよく納得のもと判断していける。
また、仕事でよく文具の商品セレクトを頼まれる。ペン、ノート、デスクツールそれぞれ5アイテムを選んで欲しいと言われたら、3分割モードを使う。この分割モードを使う時に心がけているのが、それぞれのカテゴリー、先ほどの使い方で言えば「ペン」「ノート」「デスクツール」を中心に書いていくことだ。こうすると視線があちこちといかずに、視線も考えもスムーズに運べる。
さらにこんな場合もある。いくつ分割するかが分からないまま考えなくてはいけないという状態だ。たとえば、講演内容を考えるというシーンだ。持ち時間として90分が与えられ、それをどのように組み立てていくかを考えていく時である。まず、12時の方向に1本線を入れる。ここが講演スタート地点だ。1周して90分と考える。はじめに自己紹介をして、最後に質疑応答を入れる。残った時間で何を話していくかをケーキを切り分けていくみたいに考えていく。これは講演内容のプランだけでなく、企画書の構成を考えていくのにも使えると思う。
また、これは「考える」ではないが、クライアントとのMTGに臨む時に、これは必ず確認しようという入れものも「分割モード」で予め用意しておくこともある。こうしておくと忘れずに済み、記入もそれぞれのエリアに書けばいいので分かりやすい。
□ 拡張モード
考えるためのメインテーマがあり、そこから自由に発想を広げていく場合に使っている思考モード。私はこの「拡張モード」でpen-info のコラムを書く前のポイントまとめに使っている。いきなり原稿を書かずに、まずはその文具の特長や使い心地を書き出してみる。中央にその文具のイラストを描いて、ここの材質はアルミで、ここはザラザラとしてグリップが心地よい・・・などと書いていく。箇条書きなどするよりも、あとで見返した時にとてもわかりやすい。
□ フリーモード
実は、一番最初の段階ではこのフリーモードを使うことが多い。とにかく思いつくまま書き出していく。言葉でも形でもイメージでもなんでも。あまり手がかりがなく、とにかく考え始めねばならない時にいい。はじめから分割モードにすると「頭にあることを出す」「カテゴリーに分ける」という二つのことをやらなくてはならず、頭が混乱してしまう。頭から出す時は出すことに徹する。その時にこの「フリーモード」はいい。出した後にカテゴリー分けをするなど、ステップを踏んで使い分けていくのもひとつの手だ。
□ 記録モード
これは、いわゆる従来型のノートの使い方である。会議の時にポイントをまとめる、商談の記録をとるといったシーンで今も使うことが多い。この時は、12時と6時を線で結ぶ。こうするとちょうど縦型ノートの見開きような格好になる。左上から順番に書いていく。
キレイにまとめるのは、今やPCがその役割を担っている。しかし、まだまだノートに記録するということも残っている。こうした使い方も「ロルバーン ランドスケープ」ではちゃんとできるようになっている。
■ 書き終わった後の私のやり方
私は書き終わったノートは保存せずに、翌日にはスキャンしてデジタル化してしまう。そしてスキャンしたノートは潔く処分していく。具体的にはこんなやり方だ。書き終わったノートをパラパラとめくって次のノートに進んでも参照するページ、たとえばまだ進行中のプロジェクトのMTGメモや商品アイデアスケッチなど。そのページの日付けとタイトルを一覧リストにする。これまでは書き終わった表紙にそれらのリストを書いていたが、「ロルバーン ランドスケープ」では、せっかくの表紙を汚したくないので、巻末のポケットを保護する黄色い厚紙を使う。こうしておくと、デジタル化したものでも、見たいページにすぐにアクセスできる。ちなみにダブルリングノートからノート紙面を取り外すのによいアイテムがある。LIHIT LAB.のリングノートリムーバー。裏表紙を開いたところにリングの境目がある。そにリムーバーのフック先端をひっかけて手前にスライドすれば、リングの境目にタップリとすき間ができてページを簡単にばらせる。これでスキャンしていく。
スキャンしたノートデータはiPhoneでも見られるようにしている。jpegデータにしてMacとiPhoneを同期するというシンプルな方法だ。
「ロルバーン」の特長のひとつでもある巻末の透明ポケットは、「ランドスケープ」にも付いている(5ポケット)。資料やひとつ前のノートで参照したいページを切り取って入れておくのにもいい。
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学生時代を振り返ると、当時と今とではノートとの付き合い方がガラリと変わった。学生の頃は先生が黒板に書いたことをノートにまとめる、参考書や教科書の要点をノートにまとめる。こうした「まとめる」がノート使いの中心だった。それが、今は冒頭でも触れたように「考える」になった。「まとめる」はだんだんと減り「考える」が多くなっている。そして一番違うと思うのは、結構きたない文字で殴り書きするようになったこと。キレイに書くことより、スバヤク頭の中のものを出していくことが優先される。
大事なことはキレイであることより、いい考え・アイデアを生み出すことだと、今はそう思う。
ノートを必要以上に大切に使うのではなく、考えるための道具としてじゃんじゃんと大胆に使っていくようになり、それに伴い仕事もうまく進んでいくようになったような気がする。ノートに遠慮してはいけないのだと思う。
デルフォニックス ロルバーン ランドスケープ 1/18発売
フィールド 1,200円+Tax、デスク 1,400円+Tax
デルフォニックス サイト
* ロルバーン ランドスケープ 特設サイト
*「考える」ための文具ストアでは、「ロルバーン ランドスケープ」と一緒に私が愛用している文具が販売されています。
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